60年代からアウトドアブランドの頂点に存在する老舗、ザ・ノース・フェイスが誇る最高峰ダウンジャケット

  • 文:小暮昌弘(LOST & FOUND)
  • 写真:宇田川 淳
  • スタイリング:井藤成一
Share:
モデル名は「バルトロライトジャケット」。真冬の天体観測や雪上バイクにもタイプできる、高い保温性を備えたモデル。表地は30デニールで2層構造のGORE-TEX WINDSTOPER PRODUCTSを採用。中ワタには光電子のGreenRecycled CLEANDOWNを採用。¥64,900/ザ・ノース・フェイス

「大人の名品図鑑」ダウン編 #2

軽くて暖かく、アウトドアスポーツはだけでなくデイリーユースにも使えるダウンジャケットは、いわば冬の最強アウター。機能性はもちろんのこと、最近ではファッション性を備えたダウンジャケットも数多く登場している。今回の「大人の名品図鑑」は、そんなダウンジャケットの名品を集めてみた。

ポッドキャスト版を聴く(Spotify/Apple

日本でアウトドアスタイルが大きなトレンドになったのは1970年代からと言われている。ムック本の『Made in U.S.A. catalog』(読売新聞社)や雑誌『ポパイ』(マガジンハウス)が発行がされ、アメリカの西海岸を中心にしたファッションやカルチャーが注目され、トレンドに敏感な若者たちは洋服でも道具=ギアでもアメリカの本物を求めたのが70年代だ。ザ・ノース・フェイスが日本に上陸してきたのは、そんなブーム真っ只中の78年のことだ。以来、45年に渡ってアウトドアブームを牽引し、現在ではアウトドアブランドというジャンルを超えてラグジュアリーブランドともコラボするブランドへと成長した。日本ではいちばん知名度が高いアウトドアブランドと言っても過言ではないだろう。

そんなザ・ノース・フェイスがアメリカ・カリフォルニア州バークレーで産声をあげたのは、1966年のことだ。ロッククライミングやスキーなどアウトドアスポーツと自然をこよなく愛した創業者ダグラス・トンプキンスはヨーロッパや南米などを旅した後、妻スージーとともに本格的なアウトドア用品を取り揃えた店を開く。店のオープニングパーティではグレイトフル・デッドやジョーン・バエズが生演奏を披露、店内にはボブ・ディランのポスターが貼られていたという逸話が残されている。

2年後には大学でマーケティングを学んだケネス・ハップ・クロップがトンプキンス夫妻の事業を引き継ぎ、まもなく発売したのが、科学的な裏付けと膨大な研究データから製作された羽毛を使ったスリーピングバッグだ。「最低何度の気温まで快適に使えるか」という「最低使用温度」を明記したことで、そのスリーピングバッグは瞬く間にアウトドアーズマンから信頼を勝ち取る。

70年にはこのスリーピングバッグのノウハウを活かし、同ブランドで初めてとなるダウンジャケットを発売する。「シエラパーカ」だ。カリフォルニア州東部を縦貫するシエラ・ネバダ山脈の美しい自然を忘れてはならないということで、「シエラ」を名前に冠したという。襟やジッパーフラップ、あるいは脇ポケットのフラップまでたっぷりダウンを封入したそのデザインは、多くのアウトドアブランドから模倣されるほど高い完成度を誇っていた。

「Never Stop Exploring(冒険をやめるな)」ーーこれはザ・ノース・フェイスが創業以来掲げるスローガンだが、その後も同ブランドのダウンジャケットは進化を続け、92年に発表された「ヌプシ」に代表される名品を次々と生み出し、多くの人たちから支持されてきた。

1/7