「大人の名品図鑑」ダウン編 #2
軽くて暖かく、アウトドアスポーツはだけでなくデイリーユースにも使えるダウンジャケットは、いわば冬の最強アウター。機能性はもちろんのこと、最近ではファッション性を備えたダウンジャケットも数多く登場している。今回の「大人の名品図鑑」は、そんなダウンジャケットの名品を集めてみた。
日本でアウトドアスタイルが大きなトレンドになったのは1970年代からと言われている。ムック本の『Made in U.S.A. catalog』(読売新聞社)や雑誌『ポパイ』(マガジンハウス)が発行がされ、アメリカの西海岸を中心にしたファッションやカルチャーが注目され、トレンドに敏感な若者たちは洋服でも道具=ギアでもアメリカの本物を求めたのが70年代だ。ザ・ノース・フェイスが日本に上陸してきたのは、そんなブーム真っ只中の78年のことだ。以来、45年に渡ってアウトドアブームを牽引し、現在ではアウトドアブランドというジャンルを超えてラグジュアリーブランドともコラボするブランドへと成長した。日本ではいちばん知名度が高いアウトドアブランドと言っても過言ではないだろう。
そんなザ・ノース・フェイスがアメリカ・カリフォルニア州バークレーで産声をあげたのは、1966年のことだ。ロッククライミングやスキーなどアウトドアスポーツと自然をこよなく愛した創業者ダグラス・トンプキンスはヨーロッパや南米などを旅した後、妻スージーとともに本格的なアウトドア用品を取り揃えた店を開く。店のオープニングパーティではグレイトフル・デッドやジョーン・バエズが生演奏を披露、店内にはボブ・ディランのポスターが貼られていたという逸話が残されている。
2年後には大学でマーケティングを学んだケネス・ハップ・クロップがトンプキンス夫妻の事業を引き継ぎ、まもなく発売したのが、科学的な裏付けと膨大な研究データから製作された羽毛を使ったスリーピングバッグだ。「最低何度の気温まで快適に使えるか」という「最低使用温度」を明記したことで、そのスリーピングバッグは瞬く間にアウトドアーズマンから信頼を勝ち取る。
70年にはこのスリーピングバッグのノウハウを活かし、同ブランドで初めてとなるダウンジャケットを発売する。「シエラパーカ」だ。カリフォルニア州東部を縦貫するシエラ・ネバダ山脈の美しい自然を忘れてはならないということで、「シエラ」を名前に冠したという。襟やジッパーフラップ、あるいは脇ポケットのフラップまでたっぷりダウンを封入したそのデザインは、多くのアウトドアブランドから模倣されるほど高い完成度を誇っていた。
「Never Stop Exploring(冒険をやめるな)」ーーこれはザ・ノース・フェイスが創業以来掲げるスローガンだが、その後も同ブランドのダウンジャケットは進化を続け、92年に発表された「ヌプシ」に代表される名品を次々と生み出し、多くの人たちから支持されてきた。
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ブランドの代表格「バルトロライトジャケット」
今回紹介するのは、「バルトロライトジャケット」と呼ばれるモデルだ。モデル名の由来は7000m級の山々がそびえるカラコルム山脈に横たわるバルトロ山脈。そもそもこのジャケットは90年代の極地探検用に開発されたモデルで、その後もアップデートしながら現在に至っている。
今シーズン発表されたモデルは中ワタにザ・ノース・フェイスが独自に開発した「光電子リサイクルダウン」を採用している。これは特殊セラミックスの遠赤外線効果に秀でる光電子繊維を、羽毛にブレンドするというハイテク素材。高度な洗浄技術で汚れを徹底して除去したクリーンなダウンは高い保温性を確保し、なおかつリサイクルしたダウンを使っているので、地球環境にも優しい。表地には30デニール(繊維や糸の太さを表す単位)で2層構造のGORE-TEX WINDSTOPER PRODUCTSを採用し、防風性とともに耐水性も兼ね備えているので、雪や小雨程度の濡れを抑えてくれる。ザ・ノース・フェイスのダウンジャケットに対するこだわりと進化が見事に表現された逸品だろう。
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