世界中のアーティストや俳優、コンテンツクリエイターの音声を自分の母国語で聞いてみたいと思ったことはないだろうか?AIスタートアップ企業のElevenlabから、話し手の“そのままの音声”のまま翻訳することができる、AI Dubbingが発表された。
AI Dubbingとは?
元グーグル従業員らが設立した新興企業、Elevenlabより開発された、次世代の“吹き替えサービス”。この機能を使えば、話者の声や口調、感情、イントネーションを維持したまま、約28言語に変換することができるという。つまり、英語で話されている動画も、完璧な日本語に翻訳され、あたかもその人が日本語を話しているような動画を視聴できる。声優の起用に頼った従来の吹き替えは、オリジナルの俳優の声のトーンや言葉の選択が分かりずらいことも多いが、このAIツールでよりクオリティの高い吹き替えが期待できそうだ。
同社の共同設立者兼CEOであるマティ・スタニシェフスキ氏は、自身の幼少期に経験した話を交え、この新技術は言語の壁をなくすための大きな進歩であると語っている。
「ポーランドで育った私は、一人のナレーターによって吹き替えられた英語の映画を見ていました。つまり、どのキャラクターも全て同じ声だったのです。AI Dubbingのリリースは、このようなコンテンツの言語的障壁をなくすための大きな一歩です」
「AI Dubbingを使えば、視聴者が話す言語に関係なく、彼らが望むあらゆるコンテンツを楽しむことができるようになります。そして、クリエイター側も、世界中のより多くの視聴者にアプローチすることが可能に。言語の壁を実際に経験してきたため、共同設立者のピョートルと私は、ついにAIによる吹き替えを実現できることを大変うれしく思っています」と続けた。
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次世代AIツールに潜む懸念点
この言語の壁を無くすAI新技術は、私たちにさまざまな可能性をもたらすだろう。その一方で、懸念の声も広がっている。それは、ディープフェイクによる危険性。簡単に誰もが他人の音声を使用し、自由自在に操ることを悪用した事例が今までにも世界各地で問題になっている。
たとえば、今年2月、女優のエマ・ワトソンのフェイクがヒトラーの著書『わが闘争』を読み上げる動画がSNSで拡散された事件。2018年初めには「トランプ大統領は救いようのないマヌケだ」と発言するバラク・オバマ前大統領のフェイク動画がYouTube上アップされたことも話題となった。ほかにも、2014年に亡くなった俳優ロビン・ウィリアムズのディープフェイクボイスなど…。挙げ出したらキリがないが、このようなヘイトスピーチからプロパガンダ、偽情報に至るまで、著名人の声を活用したデープフェイクボイスが横行しているのは紛れもない事実。ElevenLabはこの問題に対して、サービスへのアクセスを有料ユーザーに制限し、ディープフェイク検出システムに投資をするなどの解決策を探っていくと述べている。
この音声翻訳AIは、SNSなどのデジタル媒体、映画やテレビまでさまざまなプラットフォームで活用されるだろう。便利になる一方で、ネットやSNS上にあふれる無数の情報から、正しい情報を見分ける力が試される。これからもさらに進化していくであろうAI翻訳・吹き替えの分野に注目していきたい。
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