葛飾北斎や歌川広重の浮世絵、伊藤若冲の鶏、円山応挙や長沢芦雪の仔犬など、江戸時代に活躍した画家たちのおなじみの絵画がこの秋、京都の福田美術館と嵯峨嵐山文華館にお目見えする。
いまさら聞けない基礎知識の解説つき
福田美術館と嵯峨嵐山文華館が合同で開催中の「ゼロからわかる江戸絵画」(2024年1月8日(月・祝)まで)。「琳派って?」「若冲はなぜ人気が出た?」「屏風絵とは?」など、いまさら聞けない日本絵画の基礎知識や鑑賞ポイントを紹介しながら計118点の名画を展示している。日本画に精通している人はもちろん、初心者でも楽しめる見どころ満載の展覧会となっている。
第一会場となる福田美術館では、17世紀から18世紀にかけて京都で活躍した画家たちの作品を展示。現在に至る日本画の基礎を築いた円山応挙、近年爆発的な人気を得た伊藤若冲、ユーモラスな作風が人気の長沢芦雪‥‥生き生きとした筆致で描かれる動物たちのリアルな動き、大胆な画面構成は、現代の絵画やデザインに比べても少しも色褪せることなく魅力的だ。
今回目玉とされるのは、半世紀ぶりに公開される長沢芦雪の『大黒天図』。1970年代以降、行方不明になっていた大作が昨年発見されたのだ。畳一畳ほどの大きな紙にたっぷりと墨をつけた筆で勢いよく描かれた幻の傑作である。芦雪の人物画は貴重で、今後も新しい解釈や評価につながるとされている。
江戸時代は狩野派と呼ばれる集団が幕府御用達の画家として活躍し、京都の二条城や江戸城をはじめとする大型建築の障壁画を手がけた。若冲や応挙も初期の頃は狩野派に師事していた。しかしどの流派にも弟子入りすることなく尊敬する画家の作品を手本とし、その表現方法を継承しようとする作家たちが現れる。彼らは「琳派」と呼ばれ、俵屋宗達に学んだ尾形光琳、光琳に学んだ中村芳中などがよく知られている。2階の展示室では狩野派や琳派による美しい屏風絵が圧巻だ。山本素軒の『源氏物語図屏風』や中村芳中の『花鳥人物扇面貼交屏風』など、雅な世界に浸れるだろう。
さらに2階奥にあるパノラマギャラリーでは、伝統的な日本絵画にインスパイアされながら現代絵画の可能性に挑戦する現代作家、品川 亮による個展「Re:Action」も開催されている。椿や牡丹、桜や秋草図など、個展的なモチーフを描きながらも大胆でモダンな作品は、現代の視点から日本の美を体現した意欲作だ。
第二会場の嵯峨嵐山文華館では、庶民の生活を題材にした浮世絵をバラエティ豊かに展示。自らを「画狂」と称した葛飾北斎による『大天狗』や『墨堤三美人図』などの貴重な肉筆画を筆頭に、東海道五十三次を描いた歌川広重の版画55点が前後期に分けて一挙公開される。美人画や人気役者、観光名所、怪談まで、当時の庶民の生活が身近に感じられるだろう。
2019年にオープンした福田美術館は、京都を代表する名所、嵯峨嵐山の桂川を望む風光明媚な場所にある。古来多くの貴族や文化人に愛され、芸術家たちが優れた作品を生み出す源流となってきたこの地で、選りすぐりの日本美術を堪能してみてはいかがだろう。
『ゼロからわかる江戸絵画―あ!若冲 お!北斎 わぁ!芦雪―』
開催期間:前期/2023年12月4日(月)まで
後期/2023年12月6日(水)〜2024年1月8日(月・祝)
開催場所:第1会場/福田美術館、第2会場/嵯峨嵐山文華館
福田美術館
京都府京都市右京区嵯峨天龍寺芒ノ馬場町3-16
嵯峨嵐山文華館
京都市右京区嵯峨天龍寺芒ノ馬場町11
https://fukuda-art-museum.jp/exhibition/202306012868