2017年にスタートし、その1年に活躍をしたクリエイターをたたえる「Pen クリエイター・アワード」。今年から新たに、若手クリエイターやクリエイターを志す人を対象とした作品公募制のワークショップ「NEXT by Pen クリエイター・アワード」(以下、NEXT)が始動した。
10月7日(土)には「NEXT」ポッドキャスト部門の第1回ワークショップが開催された。多数の応募者から選ばれた5組が参加し、音声プロデューサー・野村高文さんがメンターとなり、各番組についての講評やディスカッションを行った。
選び抜かれたポッドキャスター5組が参加
参加したのは以下の5組(番組名/個人名)。
「終末サンデーナイトの秘密基地」/上野窓さん
「シンの木工家ラジオ」/花太郎さんとこーぐちさん
「楽しく広告人学を学ぶ【アドバタラヂオ】」/トミナガマコトさんとスナケンさん
「日々、駐妻。」/かやこさん
「道草を食む 〜雑草を暮らしに活かすRadio〜」/Michikusaさん
このうちかやこさんとMichikusaさんは、それぞれアメリカと岡山からリモートで参加した。
ワークショップは参加者の自己紹介からスタート。「すでに数年ポッドキャストを続けているが、改めて客観的な意見を聞いて制作に活かしたい」という人もいれば、「このワークショップのために初めて番組制作をした」という人まで、ポッドキャスト歴も番組テーマもバラバラな5組が集まった。
メンターの野村さんは、「応募者の番組のクオリティの高さに驚いた。選ぶのは難しかったですが、番組としての面白さや切り口の新しさ、雰囲気や声質の良さなど、いくつかの観点からこの5組に絞りました。ポッドキャストはいろいろな人が聴くもの。皆でディスカッションしながら、多様な意見を取り入れあって、いいものをつくりましょう」とワークショップの方向性を示した。
自己紹介の後、それぞれが応募時に提出した作品について、1番組ずつディスカッションと行った上で、野村さんから講評を行った。喋ることをコンテンツとするポッドキャスターが集まっただけあって、終始アクティブに意見交換が行われた。
最初にディスカッションを行ったのはトミナガマコトさんとスナケンさんの「楽しく広告人学を学ぶ【アドバタラヂオ】」。もっと多くの人に広告への興味をもってもらうために、広告業界で働く二人が、広告を中心とする世の中のさまざまなコンテンツについて語り合う。今回の公募で提出した、某鉄道会社のWEBムービーを"辛口で"語った回について、意見を交わし合った。
「正直出すかどうか迷いもあったが、紹介するコンテンツを必ずしも称賛するだけではないという、エポックメイキングな回になったと思います」というスナケンさんに対し、「日々、駐妻。」のかやこさんは「率直な意見が面白かった。こうした回をまとめた『忖度なしプレイリスト』があったら聴いちゃうと思う」とコメント。一方、「とても面白かったが、僕らが同業の家具メーカーについてここまで忖度なしで話せるかなと思い、聞いていて少しヒヤヒヤした」という「シンの木工家ラジオ」の花太郎さんのような意見も。
参加者の中で唯一の学生である「終末サンデーナイトの秘密基地」の上野窓さんは、「産業としてのクリエイティブ界について、リアルな部分が垣間見えて興味深かった」という新鮮な感想。「聴く前にトークのテーマになっているWEBムービーを見ておくと、より楽しめた気がする」というMichikusaさんのコメントをきっかけに、「確かにこのポッドキャストを聞いてからムービーを見た場合、バイアスがかかってしまう。『先にムービーを観てみてください』と案内を入れるといいかも」と、トミナガさんは改善点を見出したようだ。
野村さんからは、「非常に完成度が高いなと思いました。テクニック的なところについては、あまり言うことはありません。今後さらにリスナーを増やすためには、広告業界の人に対してマニアックな話をするのか、一般の人に広告の面白さを伝えるのか、完全に分ける必要はないが、より意識して作るといいと思います」
「専門性の高いテーマの番組の場合では、お題はわかりやすいほうがいい。例えばですが、多岐にわたる広告業界の"職種"を整理して解説するとか。また、以前やられていた「CMの予算に関するエピソード」のような、広告業界の裏側を紹介しながら、普遍的な仕事論として楽しめるようなものもいいと思います。まとめて聴くと『広告業界が網羅的にわかる』という番組を目指すと、より連続的に聞いてもらえるのでは。また長期継続している番組の場合、どれを聞けばいいかわからないということになりがちなので、いくつかの切り口に分けたプレイリストをつくるといいかもしれません」と講評があった。
続いてディスカッションを行ったのは、上野窓さんの「終末サンデーナイトの秘密基地」。地球爆発までの1週間をどのように過ごすのかをテーマに、リスナーでお便りを募集し、それを紹介する番組だ。
「あと1週間で地球が爆発するというどうしようもない状況になったら、どんな立場の人も、平等に"時間"について考えることになる。その時になにをするかを聞くことで、その人の本質が見えてくるのではないか、それを共有したら楽しいのではないか、という着想からつくりました。『地球が爆発する』というのも、SFっぽくて面白いかなと」と番組コンセプトを説明した。
トミナガさんは「自分ならどうするか? と考えたくなる、共感性のあるいい企画だと思いました」、Michikusaさんは「テーマが面白いし、リスナーのお便りや交流がベースになっているのは、聴く側もワクワクできていい」と、番組テーマに対して好意的な意見が多く出た。
BGMについても議論になった。花太郎さんの「声とバックミュージックが合っていて、聴きやすいと思った」という意見もあれば、トミナガさんからは、「ビート感のあるBGMに対して声が優しいので、少し合ってないかも? とも思いました。SFっぽくするなら、もっとそれに寄った音楽にしてもいいのでは」とブラッシュアップのアイデアが出た。
かやこさんからは、「リスナーのお便りを読むのがベースになっていますが、いろんな人にインタビューをする形でも面白いかも。たとえば、『34歳、新宿ゴールデン街、バーマスターの場合』、『19歳、フリーターの場合』などをタイトルにして、さまざまな種類の人が登場してくると、とても面白そうです」という提案が。それに対し、上野窓さんは「いまははチェーンメールのごとく、いろいろな人にアンケートを送ってお便りを集めているのですが、インタビューもぜひやりたいと思っています。タイトルに入れるのはいいアイデアだと思いました!」と早速参考したいと話した。
野村さんの講評では「BGMとインタビューは、私もブラッシュアップのポイントになると思いました。インタビューする人の属性が変わっていればいるほど面白くなる可能性がある。BGMは、オープニングは注意を惹きつけるような派手な音でもいい。それが続くとうるさくなるので、途中からは落ち着いた邪魔にならないもの変えるのもいいし、コーナー毎にBGMを変えてもいいと思います。そうすると、飽きずに聴けるのではないでしょうか」というアドバイスがあった。
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SHUREの高品質マイクで、実際にポッドキャストを収録
ディスカッションは他の3組でも行われ、同様に盛り上がりを見せた。
ワークショップ後半では、野村さんが自身の番組を事例に「番組の企画の仕方」や「台本のつくり方」を指南した。
今回のワークショップ後に各自提出してもらう「ブラッシュアップ版」の制作に際しては、NEXTのオフィシャルパートナーであるSHUREの「MV7 ポッドキャストマイクロホン」を参加者に貸与する。野村さんから、マイクの使用方法を収録のコツとともにレクチャーした。
次回のワークショップは、都内にあるポッドキャスト専用のスタジオで開催される。プロ仕様の機材を使って、実際に各番組を収録をするという内容だ。その模様は、またレポート記事にて紹介する予定なので、ぜひご覧いただきたい。