ウイスキーづくりの背景にある“物語”を特別なシングルモルトで表現する、グレンモーレンジィの“物語シリーズ”。その第四弾としてリリースされた「グレンモーレンジィ トーキョー」。製品を手がけたグレンモーレンジィ最高蒸留・製造責任者のビル・ラムズデン博士とパッケージデザインを担当した画家の山口晃さんに、グレンモーレンジィとアートの“おいしいコラボレーション”について聞いた。
東京の街のコントラストを表現したシングルモルト
−−今回の「グレンモーレンジ トーキョー」は、その名の通りビル博士が東京の街から得たインスピレーションを表現したウイスキーです。ひとつの都市をテーマにしたウイスキーをリリースするのは、グレンモーレンジィでは初めてですか?
ビル・ラムズデン博士(以下、ビル) グレンモーレンジィではもちろん初めてですし、スコッチ業界でも初めての試みかもしれません。
−−日本のウイスキーファンとして光栄に思います。とはいえ、なぜビル博士は東京の街を表現するようなウイスキーをつくろうと考えたのですか?
ビル 1999年に初めて訪れた瞬間から私は東京が大好きです。東京の街を散歩すると、曲がり角ごとに新しいサプライズが待ち構えています。新しい建物と歴史のある古い建物が入り混じり、美しい花々や整備されたガーデンがあり、人々のファッションや通りを走る車など、すべてのものに刺激があふれています。東京から得たそんなインスピレーションをいつかウイスキーのかたちで表現したいと、以前から考えていたのです。
−−「グレンモーレンジィ トーキョー」では、日本原産のオークであるミズナラの樽を熟成に使用されています。ミズナラ樽を使うことも当初から考えていたのですか?
ビル 今回のウイスキーの構想自体は2002年頃からありました。でも、ウイスキーで“東京の物語”を表現するにあたり、最後のピースとして不可欠なものがミズナラ樽だったんです。スコッチウイスキーの観点からいうと、ミズナラ樽で熟成させたウイスキーは少し不思議な味わいになります。しかも樽にしたときに漏れやすく、決して使いやすい樽材とは言えません。また、材自体がとても貴重なため、なかなか入手することもできません。さらに言えば、使い古したミズナラ樽ではなく新樽にこだわっていたので、まとまった数の樽を入手するのにとても長い時間がかかってしまいました。
−−ミズナラ樽はフィニッシュ(後熟)に使われているのですか?
ビル 長めに熟成させたグレンモーレンジィの原酒をミズナラの新樽に詰め替えて、4年間のフィニッシュを行っています。しかしそれだけでは私の思う「グレンモーレンジィ トーキョー」にはなりません。ミズナラ樽がもたらす少しワイルドで複雑なフレーバーと調和させるように、バーボン樽やシェリー樽で熟成させた原酒をブレンドしてマリッジを行うことで、グレンモーレンジィらしさの香る特別なシングルモルトとして、東京の街のコントラストを表現したのです。
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ウイスキーとアートが起こす“おいしい”化学反応
−−そんな特別なグレンモーレンジィのアートワークを担当されたのが山口さんです。今回のプロジェクトはどのようなかたちで進められたのですか?
山口晃(以下、山口) お話をいただいた当初はまだ製品ができていませんでしたから、ビルさんのご経歴やビルさんが東京の街から受けたインスピレーションなど、言葉からアイデアやイメージを紡いでいきました。私がアートワークの制作を進めている最中にビルさんも製品の開発を進め、最後に答え合わせをするように完成した「グレンモーレンジィ トーキョー」を飲ませてもらいました。
−−ウイスキーのラベルやパッケージとしてはとてもユニークで、素晴らしいアートワークだと思います。
ビル 私も完成したアートワークを見てまさに「グレンモーレンジィ トーキョー」だと思いました。モダンな街でありながら古い歴史も感じさせてくれたり、大都会の喧騒と静寂が共存していたり、私がイメージした東京の街のコントラストを、山口さんが完璧に表現してくださったと思います。グレンモーレンジィを象徴するディテールが散りばめられているのも楽しくて、「グレンモーレンジィ トーキョー」を飲みながらずっと眺めていたくなります。今回の素晴らしいコラボレーションは、私自身のキャリアの中でもベスト3に入るプロジェクトです。
山口 ありがとうございます。香りなどの感覚を絵にするという作業は初めての経験で、抽象画のようになるのも何か違うし、むしろ東京の街やグレンモーレンジィを象徴する意味のあるものをしっかりと鮮やかに描くことで、ウイスキーの味わいの印象や記憶と複雑に絡み合うようなアートワークになれば面白いなと考えました。また、グレンモーレンジィを味わっているといろいろな要素が現れてきます。それと同じように絵を見るたびにいろいろな発見をしてもらいたくて、「グレンモーレンジィ トーキョー」を表すヒントのようなディテールを、隠し絵のように紛れ込ませるという遊び心も加えました。
−−最近はウイスキーとアートのコラボレーションが増えています。山口さんはアーティストの立場として、そうしたコラボレーションにどのような可能性を感じられますか?
山口 たとえば今回の場合、言われたものをそのまま表現するのではなく、ウイスキーに対する自分の解釈などをきちんと出したうえで、それがビルさんの解釈とズレるところに面白さが出るのではないかと考えました。私たちの左右の目が、少しづつ異なる像を見ることで奥行きを感じ取れように、そうしたズレからウイスキーに対しての新しいアプローチが生まれるといいなと。その試みが成功しているかどうかは商品を手に取られるみなさんに判断してもらえればと思いますが、ビルさんがおっしゃるようにぜひ「グレンモーレンジィ トーキョー」を飲みながらアートワークも楽しんでほしいですね。
−−最後に、ビル博士から「グレンモーレンジィ トーキョー」のおすすめの楽しみ方をお聞かせください。
ビル 「グレンモーレンジィ トーキョー」では、オレンジなどの柑橘や蜂蜜を思わせるグレンモーレンジィらしいフレーバーと調和するように、ハーブやスギ、刺激的なスパイス、家具を磨くポリッシングなど、ミズナラ樽に由来する複雑なフレーバーを感じることができます。その味わいと同様にブレンドなどの製法もとても複雑で、このウイスキーは二度とつくることができません。本来であれば「お好きに飲んでください」と言いたいところですが、「グレンモーレンジィ トーキョー」に関してはやはりストレートで飲むのがおすすめです。少し加水をすると違った香味も開いてくるので、そうした複雑な香りや味わいのコントラストを、ぜひ山口さんのアートワークと合わせて楽しんでいただきたいですね。
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