1.OMEGA(オメガ)
シーマスター プラネットオーシャン
深海へと進む=防水性能が高くなるほどに濃くなるブルーのダイヤルを装備した、「シーマスター」コレクションを横断する“サマーブルー”新作群の一本。縦方向にブラッシュを施したセラミックダイヤルを、PVD加工で光沢あるグラデーションに仕上げた。ライトブルーのダイビングスケールが付いたブルーセラミック製ベゼルや、スーパールミノバを塗布したブルーの針とインデックスなど青一色に染めた。
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2.BLANCPAIN(ブランパン)
フィフティ ファゾムス オートマティック
ダイヤルは、深いブルーのサンレイ仕上げがアワーマーカーに届いたところで同心円のアズラージュに切り替えられ、入射光が描くフレアに立体感のあるエフェクトをもたらす、凝ったつくり込みが魅力。濃藍のストラップによる、統一感のあるブルーコーディネートに品格が感じられる。本格派ながらタウンユースにも最適で、ロングパワーリザーブも自慢。
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3.CARL F. BUCHERER(カール F. ブヘラ)
パトラビ スキューバテック モルディブ
ウェーブパターンにサンレイ加工を重ねた、鮮やかなブルーダイヤルとセラミック製ベゼルが目を惹く。マンタの保護活動NPO団体・マンタトラストを支援する一環として、ケースバックに2匹のマンタを描き、収益の一部を洋上調査基地プロジェクトに寄付するモデル。ストラップ素材の一部にはリサイクルペットボトルからつくられたファブリックをインサートしている。
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腕時計の分野においても「ラグスポ」が隆盛を誇る中で、王道のスポーツウォッチといえば、やはりダイバーズだろう。とりわけ、ラグスポ人気を後押しするとともに、海を愛する男にとって親近感が沸くのは、海そのものの色を美しく表現した“ブルーダイヤルのダイバーズ”ではないだろうか。
そもそもダイバーズウォッチは、機構的には完成された技術の産物なので、スペック面での差別化はしにくい。超えるべき基本的な基準は日本ならJIS、国際的にはISOで定められており、基準をクリアした製品であれば一定の性能が担保されているからだ。その上でさまざまなブランドが優位性を示すために、より高性能に磨き上げ、オーバースペックともいえる防水性能を競ってきた。
一方でダイヤルカラーに関しては、ほぼ無限の可能性があり、注目したいのはブルーカラーのニュアンスである。ブルーとひと口にいってもなにしろ数が多い。日本の伝統色だけでも60数種類の“青系統の色”があり、西洋のカラーチャートでは90数色もの命名されたブルー系統の色があるほどだ。
さらにそこに文字盤の仕上げのバリエーションが加わる。放射線状のサンバースト、直線的なヘアライン、ギョーシェ彫りなどの技巧が、色に絶妙なエフェクトを追加する。たとえば白藍から紺青へと濃淡が移り変わる表情、コバルトブルーからインディゴへのグラデーションなど、同じものが存在しない青色のバリエーションが、ソリッドなダイバーズを魅力的に彩るのである。
並木浩一
1961年、神奈川県生まれ。時計ジャーナリスト。雑誌編集長など歴任し、2012年より桐蔭横浜大学の教授に。新著に『ロレックスが買えない。』。
※この記事はPen 2023年11月号より再編集した記事です。