米ロチェスター大学の科学者たちが、不思議な透明化装置を開発した。装置の内外で、自在に人やモノが消えたり現れたり。まるで2つの異なる時間や空間が混じり合っているかのような、非現実的な光景を生み出している。
興味深い科学現象を紹介しているYouTubeチャンネルのThe Action Lab(登録者450万人)が、この装置を再現。独自の実験を交えて、動画で紹介している。直感に反する現象が続くこの動画は、公開から2カ月弱で52万再生を記録した。
この装置は背後に人が立つと、何らかの原理で透明になり、姿が消えて背景がだけが見える。しかし、同時に同じようにして別の人物が装置の背後に立っても、不可解なことにそちらの人物は消えない。時間軸がずれた映像が装置の中に混在しているかのような、奇妙な感覚を呼び起こす。
不思議な感覚に魅了された視聴者たちは、「とてもクールだ」「ほとんどマジシャンの域の芸術」「こんな驚きを生み出せる力が人間にあるなんて」など、コメント欄に感嘆の声を寄せている。
女の子が透明に
動画では室内の一角に、子供の肩の高さほどの縦長の板が設けられている。これが不思議な現象を引き起こす「装置」だ。装置には、背後の壁や壁面に設置されたパネルがそのまま透けて見えている。材質は鏡かガラス板のように見える。もしくはフチだけが用意された金属フレームの可能性もありそうだ。
そこへ小さな女の子がやってきて、装置の後ろ側に回る。装置外にはみ出した顔は見えているが、装置の背後に隠れた身体の部分は丸ごと消えてしまった。装置には引き続き背景だけが見えており、いわば肩から下が透明な状態だ。
もちろん女の子の身体が途切れてしまったわけではなく、女の子は肩から上だけの状態で笑顔で手を振っている。
ここまでであれば、単純なトリックで再現できそうだ。たとえば、背景と同じ模様の写真を装置に貼り付けておけば、装置に隠された部分が消えたかのように見えるかもしれない。あるいは角度を調節した鏡を置いて、別方向にある、よく似た背景を映しても良いだろう。しかし、驚きはさらに続く。
なぜ…?女の子は消えたのに、男性は全身が見える
男性がこの装置の背後に回ると、女の子は依然肩から上だけになったままだが、男性は全身が見えている。装置の外にはみ出した男性の上半身と女の子の顔は通常通り見え、装置に覆われた下半分は男性のズボンと足だけが見えている状態だ。女の子の肩から下だけが透き通ってしまった。
続いて男性がしゃがむと、さらに強い違和感を覚える状態になる。顔だけ浮かんだ笑顔の女の子の下、本来女の子の身体があるはずの場所で、しゃがんだ男性が手を振っている。
女の子が装置の外に出ると、装置外では何事もなかったかのように身体が復活した。
その後も動画では、おかしな現象が立て続けに起こる。男性が左手を装置の背後に回すと消えるが、右手は消えない。また、装置を通じて見る男性の足元には何もないようだが、男性が装置の上から手を入れて引き上げると、そこになかったはずのバックパックが現れる。
シンプルなトリックに納得
凝った技術か特殊な素材を使用しているようにも思えるが、タネは意外に原始的のようだ。動画の後半では、詳細なしくみを紹介している。4枚の鏡を通じて光を迂回させ、カメラから見えない死角を作り出していた。
4枚の鏡は、簡易的な図で示すと、上から見て「<<」の形状に設置されている。図の上端が背景側、下端がカメラ側だ。動画ではこのうち、左側の「<」は画角の外に隠れている。右下の「\」の1枚のみが、装置として見えていた。
さて、上端の背景側から入ってきた光は、右上の「/」で表す鏡から順に、右上、左上、左下、右下と反射し、下端のカメラ側へと抜ける。実際には鏡で4回反射している状態だ。しかし、きれいに45度の角度で反射を繰り返したあと元の角度に戻って装置を出るため、カメラからみるとまるで直接背景を見ているかのように錯覚する。
このとき、光はクランク状に迂回する形となり、右側の「<」の内側を通ることがない。したがってこの死角に女の子が入ったりバックパックを置いたりすることで、それらは消える。一方で死角外、つまり装置と背景のあいだに立った男性は、光のルート上に位置するためそのまま見えることになる。
動画ではユニークな光景が繰り広げられているほか、仕掛けについても図を用いて説明している。3分ほどの短い時間に驚きが詰まっているので、ぜひ確認してほしい。タネを見破ることができるか、知人に知恵比べを挑むのもきっと面白そうだ。
---fadeinPager---