必ず手に入れるべき、グランドセイコーの"最先端"を体現する3モデル

  • 写真:宇田川淳
  • 文:篠田哲生
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2023年6月に満を持してデビューした、グランドセイコー初の機械式クロノグラフ「エボリューション9 コレクション SLGC001」

よいブランドには、顔がある。誰もがその顔、すなわちデザインを思い浮かべることができるブランドは、多くの人から認められた確固たるポジションを築いているということになる。グランドセイコーは、1967年に誕生した通称「44GS」によって確立された「セイコースタイル」というデザインコードによって、日本の美意識を取り入れた美しい腕時計の姿を定義した。

「エボリューション9スタイル」はグランドセイコーの誕生60周年となる2020年に新たに生まれたデザインコードで、「セイコースタイル」をベースに「審美性」「視認性」「装着性」を進化させたもの。

そして、そのスタイルを体現し、ブランドの最先端をゆくのが「エボリューション9 コレクション」だ。今回は代表的な3モデルをピックアップし、その魅力や新しさを読み解いていく。この3モデルから、きっと理想の1本が見つかるはずだ。

1. 世界を魅了した、機械式モデル「SLGH005」

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エボリューション9 コレクション SLGH005/自動巻き、SSケース&ブレスレット、ケース径40㎜、パワーリザーブ約80時間、シースルーバック、10気圧防水。¥1,155,000

グランドセイコーはいまや世界的な腕時計ブランドとなっているが、確固たる地位を築いたきっかけは、この「エボリューション9 コレクション SLGH005」の誕生だろう。新しい視点から開発された機械式ムーブメント「キャリバー9SA5」は、毎時36,000振動のハイビート仕様ながら、約80時間のパワーリザーブを確保する性能面と、製造拠点の岩手県にある、平庭高原に広がる白樺林を型打ちダイヤルで表現するというデザインが評価され、2021年に時計界の最高権威である「ジュネーブウオッチグランプリ」のメンズウオッチ部門を受賞。さらにはドイツの権威あるデザイン賞「レッド・ドット・デザインアワード」にて、2022年に最高賞のBest of Bestも受賞している。

時計界とデザイン界の両方で世界的な評価を受けた「SLGH005」は、まさに世界へと羽ばたくグランドセイコーのいまを映す腕時計だ。

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薄型設計のムーブメントを搭載することで「低重心のケース」となった。ブレスレットはサイズをケース径の1/2以上の幅をもたせ、しっかりとした厚みもあり、より装着感が増している。

なぜ、これほどまでに高い評価を受けたのか? そこには「キャリバー9SA5」の開発と、それを最大限に活かす「エボリューション9スタイル」が深く関係している。

そもそも腕時計のデザインは、外装だけを考えていても成立しない。ムーブメントと外装は常に同軸で考えるべきである。このモデルに搭載される「キャリバー9SA5」は、ハイビート&ロングパワーリザーブというスペックを実現しつつ、薄型にまとめるために独自の「水平輪列構造」という新たな構造を採用したことで、ムーブメント厚を5.18㎜に抑えている。その結果、時計の重心が下がって、ケースのシルエットにボリューム感を与えることができるようになった。

また、ブレスレットの幅をケース径の1/2以上と広くし、厚さをもたせたことで装着感をより高めた。これこそが「エボリューション9スタイル」における「装着性」の向上である。

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2020年に開発された機械式ムーブメント「キャリバー9SA5」。動力の伝達効率を飛躍的に高めた「デュアルインパルス脱進機」を搭載し、それが「ツインバレル」と呼ばれるふたつの香箱に分けた動力ぜんまいと連動することで、毎秒10振動による計時精度と約80時間のパワーリザーブを実現した。

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2. 諏訪湖の美しい情景を取り入れた、傑作「SLGA021」

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エボリューション9 コレクション SLGA021/自動巻きスプリングドライブ、SSケース&ブレスレット、ケース径40㎜、パワーリザーブ約120時間、シースルーバック、10気圧防水。¥1,155,000

高級時計の本場はスイスであり、その神話にも似た世界観に対抗するのは容易ではない。一方グランドセイコーは、独自の技術や"日本らしさ"を腕時計に取り入れている。「エボリューション9 コレクション SLGA021」には、セイコー独自のスプリングドライブ式のムーブメントを搭載する。スプリングドライブは、巻き上げたぜんまいがほどける力を動力源としながら、その力を利用してわずかな電気を発電。その電気エネルギーを使ってIC回路と水晶振動子を動かし、適切なスピードで針が回るようにコントロールするもの。

機械式時計より高精度になるのもメリットだが、スィープ運針と呼ばれる、流れるように進む秒針の動きも美しい。そもそも時間は止まることなく流れていくものであり、スプリングドライブ式ムーブメントの針の動きは、時の本質をより的確に描き出しているともいえるだろう。

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ケースサイドは大きくカーブを描く「接線サイドライン」となり、「筋目を主体に鏡面と連ねた多面ケース」によって、光と陰、そしてその中間にあるグラデーションをきれいに表現する。下地処理としてザラツ研磨を施しているので、歪みのない美しい平面に仕上がる。

このなめらかで繊細かつ美しい秒針の動きをさらにドラマティックに演出するのが、日本の情景を映しこんだダイヤルだ。「エボリューション9 コレクション SLGA021」のダイヤルは、この腕時計を製造する「信州 時の匠工房」から東南に位置する、長野県・諏訪湖の夜明け前の情景をイメージ。深いネイビーダイヤルに凹凸を入れることで、風によって湖面にさざ波が立っている、水面の様子を表現した。この静かな時間に、スーッと秒針が流れる。

こうした時間の表現は、優れた技術力に加えて、自然の中にさまざまな美しさを見出す日本人としての感性が込められている。さらにケースには筋目仕上げを取り入れることで、光と陰の中間にあるほのかなグラデーションを表現。ゆがみのない面で構成されたケースサイドは、丁寧な職人技から生まれるもの。「SLGA021」は、ドラマティックな時を映し出すものなのだ。

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自動巻きスプリングドライブムーブメント「キャリバー9RA2」。月差±10秒という高精度、さらに「オフセットマジックレバー」を採用することで従来と比べ0.8mmの薄型化を実現した。

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3. 大絶賛とともにデビューした、機械式クロノグラフ「SLGC001」

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エボリューション9 コレクション SLGC001/自動巻き、ブライトチタンケース&ブレスレット、ケース径43.2㎜、パワーリザーブ約72時間、シースルーバック、10気圧防水。¥1,815,000

独自性の高い機構を開発し、日本的な美しい表現でも高く評価されるグランドセイコーだが、時計愛好家はずっとあるものを待ち望んでいた。それが機械式のクロノグラフだ。多くのパーツを誤差なく動かすクロノグラフは、高い技術が求められる一流時計ブランドの証明とされる。しかも時を自由に操る機構というロマンティックな魅力も深い。機械式クロノグラフの実現には、1/10秒の計測が可能で駆動時間も長く、腕時計としてのプロポーションも美しい、特別なムーブメントが必要だった。

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「フラットダイヤル」には、細かい放射目の型打ち模様が入っており、これは機械式モデルを製造する「グランドセイコースタジオ 雫石」の窓から見える岩手山の岩肌をイメージしたもの。「深い溝を入れた多面的なダイヤカットインデックス」と「他の2倍以上の幅を持つ12時インデックス」、そして「多面カットを施した長い分針と明確に違う幅広の時針」が正確に時刻を示し、腕時計として完璧な視認性を実現している。

ブレイクスルーになったのは、前述の2020年に発表された「キャリバー9SA5」だった。この高性能で薄型の10振動機械式ムーブメントにクロノグラフモジュールを加えれば、グランドセイコーの理想が叶う。一体型ムーブメントよりメンテナンス性に優れるのも大きなメリットだ。そしてついに2023年、グランドセイコー初の自動巻き式クロノグラフムーブメント、「テンタグラフ」と名付けられた「キャリバー9SC5」が完成し、「エボリューション9 コレクション SLGC001」がデビューを果たす。ジュネーブで開催された時計見本市「ウオッチズ アンド ワンダーズ 2023」でお披露目され、世界中の時計愛好家がその完成度の高さに驚愕したのは記憶に新しい。

クロノグラフはダイヤルが混み合うため、どうしても視認性が弱点となるが、このモデルは深い溝が入ったダイヤカットインデックスや多面カットを施した堂々たる針を備えているので、時刻をしっかり読み取ることができる。優れたクロノグラフ機構は、「エボリューション9 スタイル」のデザインによってさらに完成度を上げたのだ。

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グランドセイコー初の自動巻き式クロノグラフムーブメント「キャリバー9SC5」。「テンタグラフ」と名付けられたこのムーブメントは、正確な計測と操作性、耐久性を実現した。垂直クラッチは計測精度を高め、コラムホイールはクロノグラフの作動を正確に制御。独自の三叉ハンマーは、クロノグラフ針のリセットを心地よいクリック感とともに瞬時に行う。

「SLGC001」の登場で、グランドセイコーにはもはや死角はなくなったと言っていいだろう。個性豊かでありながら、揺るぎないデザインコードによって完璧な逸品に仕上げられた「エボリューション9 コレクション」から、理想の1本を手に入れてほしい。 

セイコーウオッチ株式会社

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