「大人の名品図鑑」英国靴 #5
靴はファッションの“要”とよく言われるが、ここ十数年続いたスニーカーブームも落ち着きを見せ、次に履く靴を探している人も多いはず。時代のムード考えると、何年も流行に関係なく履ける本格的な革靴を手に入れたいと考えている人もいるだろう。そんな革靴の代表として、英国で生まれ、今も英国で製作され続ける名靴を取り上げる。
ドクターマーチンはワークブーツでありながら、英国の音楽やユースカルチャーとともに歩んできたという、数多ある靴の中でも稀有な存在だ。実はこのドクターマーチンも今シリーズで取り上げる革靴同様に、英国の靴の産地であるノーサンプトンが深く関係している。が、その前にドクターマーチン誕生の話をしよう。
ドクターマーチンのソールには空気を含む素材が使われているのがいちばんの特徴だが、このソールが生まれたのは、英国ではなくドイツのミュンヘンだ。第二次世界大戦で兵役に就いていたクラウス・マルテンス博士という人物はスキー事故で足を痛めてしまい、歩行の際に衝撃をやわらげ、足に優しい靴をつくろうと思い立ち、機械工学に詳しい友人のヘルベルト・フンク博士に相談する。1945年のことだ。
2人は軍事用の資材から高いクッション性を備えた「エアクッションソール」を開発、2年後の47年に本格的な靴の生産に着手すると、労働者や主婦たちがこの靴に注目し、ドイツで広く人気を集めるようになった。2人はビジネスを拡大するために海外進出を考え、英国の靴業界専門誌に広告を掲載する。この広告にすぐに反応したのが、ノーサンプトン州ウォラストンで1901年に創業し、ワークブーツを製造していたグリッグスという靴製造会社。3代目当主ビルは2人が開発した革新的なソールの製造特許を獲得、ソールの名前もマルテンス博士を英語読みにした「ドクターマーチン」と改めた。そしてソールに独特の黄色のステッチを施し、溝付きのソールエッジ、黒と黄色のヒールループを備えたブーツの開発に成功する。その靴を製造する工場の生産ラインが1960年4月1日に開始されたことから「1460」と名付けられた。ドクターマーチンの「8ホールブーツ」が英国で誕生した瞬間だ。
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英国のカルチャーと結びついて発展
このブーツが誕生した60年代の英国は新たなカルチャーが次々と起こり、社会が大きく変化していった時代だ。当初は労働者たちが愛用していたが、やがてその機能や独創的なデザインが注目され、多くの人に履かれるようになる。そのいちばんの立役者になったのがミュージシャンたちだ。英国の人気ロックバンドであるザ・フーのピート・タウンゼントがステージに「8ホールブーツ」を履いて登場、「このタフなブーツが自分のパフォーマンスをより高みに導いた」と絶賛。その後もモッズ、パンクなどのミュージシャンがこぞって履きだし、ファンたちも彼らのファッションを真似た。こうしてドクターマーチンは英国のユースカルチャーを支える重要な名靴をなったのである。
過去に「大人の名品図鑑」でも取り上げたが、ドクターマーチンの靴は『レオン』(95年)、『時計じかけのオレンジ』(72年)、『トレインスポッティング』(96年)などの数々の映画に登場し、ヴィヴィアン・ウエストウッド、コム デ ギャルソンやヨウジヤマモトなどの有名ファッションブランドともコラボレーションし、さらにその名を広め、現在に至っている。
今回紹介するのは、「1461」のモデル名で知られる3アイレットのオックスフォードタイプ。「8ホールブーツ」の生産開始から1年後の1961年4月1日に製造が開始したので、「1461」というモデル名が付けられた。「8ホールブーツ」と同じ素材が使われ、そのシンプルなデザインから合わせるものを選ばない。しかしながらソールに入った黄色のステッチでドクターマーチンの靴と一眼で判別できる。しかもここで紹介するモデルは「1461」が生まれたノーサンプトンの工場で製造されたもので、オリジナルのデザインが忠実に再現されている。ドクターマーチンの歴史を知る靴と言っても過言ではない。
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ドクターマーチン・エアウェア ジャパン TEL:0120-66-1460
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