「大人の名品図鑑」英国靴 #4
靴はファッションの“要”とよく言われるが、ここ十数年続いたスニーカーブームも落ち着きを見せ、次に履く靴を探している人も多いはず。時代のムード考えると、何年も流行に関係なく履ける本格的な革靴を手に入れたいと考えている人もいるだろう。そんな革靴の代表として、英国で生まれ、今も英国で製作され続ける名靴を取り上げる。
第一次世界大戦のイギリス兵のために考案されたトレンチコート、あるいはクリミア戦争で怪我をした兵士が着やすいようにと前開きにしたカーディガンなど、メンズファッションのアイテムには戦争や国際的な武力紛争を契機に生まれ、発展していったものが多い。「大人の名品図鑑 英国靴編」の第1回でも書いたが、ノーサンプトンが靴の産地となったのも17世紀の清教徒革命でアイルランドと戦う兵士のための軍靴を製造したのがきっかけだ。戦争のために製作されるアイテムは機能性が重視される。しかもクオリティが一定で、大量に製造できなければ用を足さない。戦争が起こることはとても残念なことではあるが、戦争が産業を産み、発展させていくことにもつながる。これも紛れもない事実である。
ウィリアムとトーマスのサンダース兄弟によって、靴の聖地、ノーサンプトンのラシュデンにサンダースが設立されたのは1873年。今からちょうど150年前のことだ。当初は5人の靴職人から始まった工房のような靴メーカーだったが、1910年の英国軍への軍靴供給契約を獲得したことをきっかけに、サンダースは大きく発展する。現在でも英国の国防総省向けに供給される革靴のほとんどを担っているだけでなく、世界各国の軍隊や警察などへ革靴を提供している。
こうした要望に応えるためにサンダースは効率的に革靴を量産できる生産システムを確立し、ほかのノーサンプトン生まれの英国靴と同様の製法、良質な素材を用いているにも関わらず、コストパフォーマンスに優れた革靴を生産することを可能にしている。これもサンダースの大きな強みだろう。
実はサンダースの靴は製法にも秘密がある。一般的なグッドイヤーウェルト製法が靴のソール前半分のみを縫製するのに対して、サンダースの靴のほとんどはつま先から踵までステッチが靴の外回りを一周する「オールアラウンドグッドイヤーウェルテッド製法」で製造されている。ステッチが踵まで回ることで、踵に固定のための釘を用いる必要がないので軽量化につながり、機能性も向上する。また使われているパーツのほとんどに吟味された天然素材を採用するなど、クオリティの追求には余念がない。
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創業150周年を記念した特別な2足
発展の礎を築いたミリタリーシューズのアーカイブを元にしたコレクションを中心に、サンダースは多彩な革靴を展開しているが、今回紹介するのは創業150周年を記念したスペシャルなコレクションだ。
1足目に紹介するのは、同ブランドの「ミリタリーコレクション」の定番である「1128 MILITARY DERBY SHOE」のアッパーに特別な素材を採用した「2681BRG 150TH アニバーサリー ミリタリー ダービーシューズ」というオックスフォード靴。英国屈指の老舗タンナー(革なめし業)のJ&F. J. BAKER社の「ロシアンカーフ」と、フランスを代表するタンナー、TANNERIE D’ANNONAY社製の「ボックスカーフ」を贅沢に使い、それらをコンビネーションで仕上げた特別な一足だ。150周年という記念に相応しいモデルである。
もう1足が「2665B 150TH アニバーサリー ブリットチャッカ」をモデル名としたブーツ。「マッドガード」と呼ばれるアッパーとソールの接合部分にぐるりと回るようにゴムが付けられた特徴的なデザインのブーツで、アッパーの素材にはTANNERIE D’ANNONAY社製の「ボックスカーフ」が使用されている。どちらのモデルも英国を代表する老舗ニットメーカーである、コーギーで特別に製作した150周年を記念したソックスがノベルティとして付いてくる。生産されるのはそれぞれが150足限り。英国靴好きならずとも手に入れたい逸品ではないか。
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グラストンベリー ショールーム TEL:03-6231-0213
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