世界的なジュエラーであるティファニーが、2022年より支援する日本の伝統技術「金沢縁付金箔製造」。俳優の磯村勇斗が、金沢の地を訪れその制作現場を見学した。
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薄さ1万分の1㎜の金箔を竹箸ですくいあげる磯村勇斗の目は真剣そのものだった。わずかな息遣いでも吹き飛んでしまうほどの薄さに仕上げる「縁付金箔」の技法を受け継ぐ職人は、金箔の街・金沢でもわずかしかいない。
2020年、この技術がユネスコ無形文化遺産に登録された。それを受けてティファニーは、世界の伝統文化を継承・支援するワールド・モニュメント財団とともに金沢市と連携し「金沢縁付金箔製造職人育成プログラム」を発足。22年から3年間にわたって職人育成を支援する。今回、磯村が最初に訪れたのは、金沢金箔伝統技術保存会会長の松村謙一の工房だ。
「金箔製造は金沢が99 %を占めています。先日、日光東照宮修復のための金箔を納めましたが、その際使われた金箔はおよそ20万枚。量産用に開発された断切(たちきり)金箔ではなく、昔ながらの縁付金箔を使います」と松村。ティファニーが縁付金箔製造に注目したことで、金箔が再び脚光を浴びている。
縁付金箔は、専用の和紙と金片を交互に重ねて1万分の1㎜の薄さに打ち延ばし、竹枠で1枚ずつ正方形に切り揃えて完成させる。仕上がった金箔を載せた和紙が、額縁のように見えることからその名が付いた。現在はカーボン紙に挟んでまとめて薄刃で断ち切る断切金箔という手法が主流だが、しなやかで独特の艶がある縁付金箔は、伝統工芸品や文化財の保存修理に欠かせない。
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存続が危ぶまれる、貴重な技術を守るために
松村の工房ではティファニーの支援を受けた研修生が縁付金箔の技法を学んでいた。磯村も、その箔づくりの最終工程に挑戦した。右手に竹製の枠を、左手に金箔を載せた革盤(かわばん)を持ち、正方形に切り揃えていく。それを息を詰めるようにして和紙の上へと移す。
「力の入れ具合が難しいですね。とても繊細な作業で慣れるまで時間がかかりそう」と言いながら根気強く1枚の金箔を完成させた。
「昔から“箔づくりは紙づくり”と言われるほど、箔打紙(はくうちし)は職人にとっての生命線なんです」
箔打紙とは、稲藁のアク、柿渋、鶏卵を混ぜたアク汁に特殊な手漉き和紙を漬け込み、乾かして叩くという作業を繰り返して仕上げるが、これも箔職人の仕事だ。「和紙とは思えないくらいツルツルなんですね」と磯村は興味深そうに耳を傾ける。この箔打紙に厚さ千分の一㎜の金片を挟み、1800枚をひと束にして機械で延ばすのが次の工程だ。「何回も打つことで金が熱を帯び、薄く延びていきます」と松村。打ち上がった箔の束を再び解いて仕上げ用の箔打ちに移し替え、1万分の1㎜になるまで打ち広げ、広物帳(ひろものちょう)へ移し替える。そして広物帳から一枚ずつ革盤に移し、竹枠で10・9㎝四方に切り揃え、箔合紙に重ねて完成となる。「信じられないほど手間がかかっているんですね」と磯村はため息をつく。
次に訪ねたのは東山地区の安江(やすえ)金箔工芸館と、笠市町の本願寺金沢別院だ。工芸館では金箔製作の展示から屏風、仏壇、現代アートまで、金沢で金箔が育まれてきた歴史に触れた。一方、本願寺の本堂では5万枚の金箔が張られた内陣の存在感に圧倒された。「松村さんのところで見た金箔がこのような形で使われているのを目の当たりにすると、見方が変わりますね。あんなに薄い金箔がこれほどまでに光り輝いているとは……」
圧倒されているところに、寺院の担当者が語りかける。
「仏教では金色(こんじき)という言葉には“価値あるもの”“不変であること”というふたつの意味があります。すべての命を変わらず価値あるものとして光輝かせようという、仏の願いを表しているのです」
この旅で、磯村は伝統を現代に繋げる重要性を深く感じたという。
「金箔の製造工程をはじめ、さまざまな使い方を知りました。今後は若いアーティストたちにアピールして、同世代に響く使い方をしてほしいですね。古き良きものを未来へ残すティファニーに共感します。金箔のことをもっと知りたくなりました」
銀座 蔦屋書店で特別展示が開催
10月27日(金)から11月9日(木)までの期間、銀座 蔦屋書店(東京都中央区銀座6-10-1 GINZA SIX6階)にティファニーの軌跡や金沢の文化、伝統工芸、職人の技にフォーカスした書籍が集まる特別展示ブースが登場。
衣装協力:バングル¥1,056,000/テイファニー(ティファニー・アンド・カンバニー・ジャパン・インクTEL:0120-488-712) ジャケット¥46,200、シャツ¥28,600、パンツ¥26,400/以上グラフペーパー 東京(グラフペーパー 東京) 靴¥62,700/エンダースキーマ(スキマ 恵比寿☎︎03-6447-7448) 他は私物