アメリカのエレクトロ・ベンチャー企業が開発する“空飛ぶ救急車”が実用化に向けて前進している。垂直離着陸するこの航空機の利用で、遠隔地やアクセスの悪い場所にも救急隊員の派遣が可能となり、到着までの時間も劇的に短縮されるという。救命医療に革命をもたらすと期待されており、今後つくられる試作品には、既に買い手もついている。
映画で見たイメージ?緊急時に、遠隔地にひとっ飛び!
テクノロジーと科学のサイト、ニュー・アトラスによれば、 空飛ぶ救急車を開発するのは、カリフォルニアを拠点とするジャンプ・エアロ社。3年前にeVTOL(電動垂直離着陸)機で救急隊員を緊急現場に運ぶ計画を発表しており、今回航空機のデザインと仕様を発表した。
「JA1パルス」と呼ばれるこの航空機は、地上にいるときは機首と8つの電動プロペラが上向きになり、ヘリコプターのように垂直に離陸するが、巡航高度に達すると横向きになる。つまり乗員は地上では立った姿勢に、空中では伏せた姿勢になる。どちらの姿勢でも、常に窓から前方と下方を確認できるということだ。
飛行制御が単純化されており、操縦に大掛かりな訓練は必要ない。60秒以内に展開が可能で、最高速度は時速463km。半径50km以内の場所に8分以内に到達することが想定されており、最大10度の傾斜地にも着陸できるという。
救急車と役割分担 救命のタイミングを逃さない!
もっとも、JA1パルスは従来の救急車と同じ役割を意図して設計されていない。デイリー・メール紙によれば、救急機器と訓練を受けた医療専門家1名だけを、遠隔地やアクセス困難な地域に運ぶことが目的だ。
よって、JA1パルスが患者を搬送することはない。ニュー・アトラスによれば、想定では救急隊員が高度な救命措置が必要な通報を受けた場合、JA1パルスと救急車の両方が出動。空から患者のいる現場にいち早く到着した救急隊員が、機内に搭載された救命機器で処置を行い、その後到着した救急車のクルーに引き継ぐことになるという。
既に商用の受注も 国土の広い豪でも期待大
デイリー・メール紙によれば、ジャンプ・エアロ社はJA1パルスの最初の注文を既に受けており、試作機の製造をまもなく始めたいとしている。製造コストは、まだ明らかにされていない。発注したのは、デンマークの救急サービスを提供する民間企業だという。
さらに最近になって、オーストラリアのエレクトロ・ベンチャーズという企業が、JA1パルス10機を発注したと、ジャンプ・エアロ社が広報通信社を通じて発表した。既に手付金が支払われているということだ。ジャンプ・エアロ社は、遠隔地の農村に住む豪市民に救急医療を提供するうえで大きな影響を与えることができると確信していると述べ、実用化に自信を見せている。
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Our latest webmeeting recording: “An Overview of the Jump Aero JA1 Pulse,” Dr. Carl Dietrich, CEO of @jump_aero: https://t.co/rFXaY7KPUk#JumpAero is developing an #eVTOL aircraft for first response missions.#TVF #electricVTOL #verticalflight #VTOL #VTOLsociety #aviation #avgeek pic.twitter.com/1M5k7ruNy1
— eVTOL News by The Vertical Flight Society (@ElectricVTOL) September 24, 2023
空飛ぶ救急車。SF映画ばりの外観だ。
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Falck to buy Jump Aero JA1 Pulse first responder single-seat eVTOL https://t.co/IHcalABNmE pic.twitter.com/bcXSWXdWYN
— urbanairmobilitynews.com (@urbanairmobili1) September 8, 2023
垂直に離着陸する。
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