1.TUDOR(チューダー)
ブラックベイ
バーガンディカラーのアルマイト加工ディスクをはめた細身の回転ベゼル、ドーム型のダイヤルとサファイアクリスタル風防がレトロな雰囲気を醸す。リューズにはオールドファンにお馴染みのチューダーローズをレリーフした。一方で、搭載される自社製造のキャリバー「MT5602-U」はCOSC認定クロノメーターであり、かつケーシング後にMETAS認証を受けたマスター クロノメーターだ。
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2.ORIS(オリス)
ダイバーズ65 12H キャリバー400
1965年に発表されたオリス初のダイバーズウォッチのスタイルを継承するモデル。やや細めのベゼル、小さめのドット型インデックス、ドーム型サファイアクリスタル風防、ロリポップ型の秒針と、レトロテイストのディテールが魅力的だ。その半面で、オリスが誇る超ロングパワーリザーブの「キャリバー400」を搭載。さらに高耐磁性を備え、保証期間を10年まで無料延長できるのもうれしい。
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3.TISSOT(ティソ)
ティソ シースター 2000 プロフェッショナル
1950年代に発表された「TISSOT SEASTAR」の名を受け継ぐダイバーズ。ドーム型風防の下で、波の模様が刻まれたマリンブルーのグラデーションダイヤルが時代を超えた魅力を描く。9時位置にはヘリウムエスケープバルブを装備し、飽和潜水に対応する600mの高い防水性能を誇る。さらには、ニヴァクロン製ヒゲゼンマイを採用し、優れた耐磁性能も実現。コストパフォーマンスもきわめて高い。
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レトロなデザインやディテールを取り入れたダイバーズウォッチが人気を集めている。1960年代~70年代を懐かしむ世代もいるだろうが、半世紀以上前のテイストは、もはや新しいと感じられる時代なのだろう。今回取り上げたモデルでもドーム型の風防はもちろん、回転ベゼルの細さ、三角マーカーの形状、アルマイト的な光沢と質感、ドット型アワーマーカーの小ささ、アラビア数字のフォント、時分針のスタイルなど、レトロな味付けの見どころが多い。
それでなくてもレトロデザインのダイバーズには、れっきとした存在理由がある。中古市場に出回るヴィンテージのダイバーズでは充足できない需要が確実にあることだ。構造の進化やマテリアルの革新により、水密のレベルが過去と現在では格段に異なっている。オリジナルの50~60年代のモデルは、ヴィンテージ市場に出回ったとしても、新品当時に完璧だった性能はなかなか望むことはできないだろう。それに対して最新のレトロダイバーズは、高い防水性能や耐磁性能、ロングパワーリザーブで武装し、安心して水中のアクティビティにも帯同できる。
さらにはマリンスポーツのギアとしてだけではなく、タウンユースでもタフなスポーツウォッチとして、有効に機能する。カジュアルな装いだけでなくスーツの袖口からのぞかせても、レトロなスタイルは映えるのだ。オリジナリティは尊重しつつ、最新性能で武装したレトロデザインのダイバーズは、満足できる選択の最適解に結びつくのである。
並木浩一
1961年、神奈川県生まれ。時計ジャーナリスト。雑誌編集長など歴任し、2012年より桐蔭横浜大学の教授に。新著に『ロレックスが買えない。』。
※この記事はPen 2023年10月号より再編集した記事です。