イギリスの都市マンチェスターにあるデザイン事務所Lazerianが、電子廃棄物のみを使って、実寸大のレーシングカー「Recover-E」を開発した。電子機器廃棄物問題に焦点を当てたこの車は、iPhone、任天堂Wiiのコントローラー、ソニーのVRヘッドセットなど、日常生活で目にする電子機器の廃棄物があちこちに散りばめられている。サンドバギーから取り出した改造ドライブトレインを使用しているため、低速での走行が可能だ。
Lazerianは、電気自動車のF1と呼ばれるフォーミュラEの英レーシングチームEnvision Racingから依頼を受け、Recover-Eを製作した。2014年から開催されているフォーミュラE世界選手権は、排気ガスゼロのレースとして知られる。また、サステイナブル化をリードする企業コンサルタント会社の評価に基づき、世界初のネット・ゼロ・グローバル・スポーツにも選定されている。フォーミュラEのレースは、世界各都市で開催されており、来年2024年3月には東京でも初開催の予定だ。
Lazerianの創設者でありオーナーであるリアム・ホプキンス氏は、Dezeenの取材に対し「デザインとクリエイティビティを通じて、電子機器廃棄物問題を楽しく理解してもらえる素晴らしい機会でした」と語った。Recover-Eで使用された材料は、小学生からの寄付と、地元を拠点とする電子機器の下取り会社Music Magpieが修理不可能と判断した素材のみとのことだ。ホプキンス氏は電子機器廃棄物を回収後、素材を質感や色で分別し、車のパーツとしての使用方法を決めた。廃棄された物がどのようにつくられているのか、そこからなにか別の物を作りだすことができるのか、修理は可能なのかなど、「物を分解して観察すると、多くの学びがあります」と語る。
「循環型経済」で電気廃棄物を減らす
車のデザインは、前方から後方に向かって徐々に電子機器が分解されていくイメージだ。「廃棄物の内部を暴くような物語性をもたせたかったのです」とホプキンス氏は言う。たとえば、車のフロント部分には比較的状態のよい携帯電話を使用。車の真ん中には、回路基板。奥に行くにつれて、携帯電話の誘導充電、ワイヤー、スクリーンなどの部品になっていく。「廃棄物が分解されるというメッセージを伝えたかったのです」
電子機器廃棄物の年間排出量は、2030年までに世界で7500万トンに達する勢いで、2022年にはイギリスが国として2番目に多い排出量となっている。New Scientistは、「この作品を通して循環型経済の可能性を示したい」というホプキンス 氏の言葉を伝えた。
Recover-Eは、7月下旬にロンドンで開催されたフォーミュラE電気自動車レース「e-Prix」の前夜に公開された。その後は、世界的な気候サミットCOP28を含む一連のイベントで展示された後、分解されてリサイクルされる予定だ。SNS上では、「ゴミがレーシングカーになるだなんて、リサイクルって楽しいのね」「知っているものが部品として埋め込まれているので、見つけるのが楽しい」「キャッチーで素晴らしいコンセプトアート!」という声がある。
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Discarded iPhones, vapes, a fly swatter and a 1950s radio form Recover-E, a replica racing car built entirely out of electronic waste by Manchester design studio Lazerian.https://t.co/Ry2T0uEF5y
— Dezeen (@dezeen) September 1, 2023
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