毎日の食事は美味しさ以上に栄養が大切なもの。同じように毎日着る服にも機能を求めたい。寒さ暑さから身体を守り、動きやすいストレスフリーであってほしい。家庭で水洗いできるイージーケアも必要だ。さらにコスパにも優れていると家計が助かる。そのうえで高いファッション性も望みたいところ。心まで快適になれるのが理想的な生活服だ。
こうした機能も美しさも両立させる難しい服づくりに、ひとつの道筋を示したブランドがある。大手アパレルのオンワード樫山が2021年にスタートさせたアンフィーロ(UNFILO)である。アウトドアやスポーツで用いられる一級品のハイテク生地をふんだんに使う。それでいて価格は一般的なセレクトショップオリジナルを下回るほどのリーズナブルさ。実店舗を持たずEC販売に絞りコストを抑えている。さらに魅力的なのが、アイテム1点1点がとても洗練されていること。「ニッポン大人スタイル」と呼べるモダンな感性に満ちている。世界の様々な人種をターゲットにするグローバルブランドとは目線が異なるローカリズムが心地いい。自転車に乗り買い物に行ったり、子供たちと軽いキャンプをするようなシチュエーションで、しっかりとハイセンスな装いができるのだ。もちろん日常生活でずっと着ていられるから、「アンフィーロだけあればいい」と思う人も多いはず。
実はアンフィーロのメンズ部門を担っているのはファッションデザイナーの小山雅人である。大手セレクトショップから独立して2019年にユーゲンを立ち上げるや、瞬く間に大人メンズシーンに名が響き渡った実力者。小山さんの仕事にはドレス、カジュアル、モード、古着とあらゆるジャンルを知る人ならではの装いの美学が息づいている。親しみやすくも奥行きのある服づくりがアンフィーロの真髄だ。
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ウォッシャブルで汚れを気にせず暖かく
上写真右のキルティングコートの生地は、保温性の高いダウン入りナイロンの「TAION×LIMONTA EAST」。超軽量で家庭での手洗いも可能である。腰を覆う膝上丈で、大きめサイズを選べばスーツの上に着て真冬のビジネス着にもなる。高級ナイロンで世界に名高いイタリアのリモンタ社のエッセンスが色濃い高品位な一着だ。
新作トレンチコートは、「迫力がある本格的なトレンチはデイリーに着にくい」、そう思う人に最適な服である。現代の男性が着るとクラシックコスプレになりがちなトレンチが、小山さんの手によりモダンにアレンジされた。最小限のトレンチらしさを残しつつ、袖のベルトやショルダーエポーレットなどを削除。裏地に次世代のフリースを配して保温性も高められている。洗濯機で洗えて乾きも早く、旅行や出張にも便利なコートだ。
コートの裏地は、表地がメッシュで裏面が起毛された特殊な構造の「オクタ」フリース。大手生地メーカーの帝人が開発した保温性と通気性が両立する生地である。近年では夏用のアウトドアウエアによく用いられる。メッシュだから滑りがよく、コートのインナーにウールセーターを着ても身体を動かしやすく快適。オクタは今季のアンフィーロが様々なアイテムに採用するアイコニックな生地だ。
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デイリーなニッポン的着こなし
カジュアルとフォーマルの境界線があいまいなのが、モダンなニッポン的スタイルの特徴のひとつ。どこにでも着ていける中間的な服である。古着とリンクするワークやミリタリー要素もポイントだ。都会的でソリッドな生地使いもニッポン的だろう。現在のシルエットの主流はゆったりとしたモード感覚。アンフィーロにもこうしたエッセンスがさりげなくちりばめられている。
デザイン担当の小山さんいわく、「僕自身もアクティブに活動するときアンフィーロを着て生活してます。ユーゲンをマニアックな洋服好きの一張羅とするなら、アンフィーロはより多くの人が好む一般的な服。『動くすべての人に機能美を』という題目の元でデザインしています。モノづくりに思想があるんですね。単に低価格の服をたくさん売る考え方ではありません」
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人が身体を動かして活動する場のすべてに関わり、着る人をサポートしていくのがアンフィーロの究極の目標のようだ。
「将来的にもしかすると、医療従事者や運送会社の人などに向けた服をつくることもあるかもしれません。人が動くシーンは限りなくたくさんありますから」と小山さん。生きることを根本から支える新発想のファッションブランドへと歩みを進める日も、遠い未来ではないのかもしれない。
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スポーツ気分でスタイリッシュに
2000年代のY2Kや、90年代ストリートスタイルがチラ見えするのが今季アンフィーロのエッジーな感性。サイズ選びや組み合わせで好きなように着回せる。小山さんがデザインのプロセスを以下のように語った。
「デザインを練るときは古着を見に行くようにしています。『ファッション文化がまったく新しく出現したのは80年代まで。90年代移行はすべてミックス文化。だから80年代までの服を見ることが大切』、セレクトショップの企画時代に尊敬する先輩からそのように教わりました。この言葉をいまも胸にして、古い時代の服と向き合うようにしています」。
アンフィーロのアイテムの1点1点に温もりや本物感がある背景には、こうしたルーツがある。ハイテク生地を使っても服づくりは昔ながらのローテクなのが頼もしい。
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今回のファッション連載「着る/知る」で紹介したアンフィーロのメンズには、どのアイテムにも統一されたセンスがある。世界観にバラつきがないから、どれか一着気に入ったら別の服を入手しても満足できるはず。私的にコーディネートするなら、イギリスのハリスツイードらの粗野な天然素材の服と、アンフィーロの光沢服をミックスして着たい。組み合わせに動きのあるコントラストコーデを狙って。シンプルな服こそ大胆な着方がよく似合うのだから。
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【画像】大人センスでコスパのいい日常着を着たいなら?アンフィーロを選ぶのが正解!【着る/知る Vol.162】
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ウォッシャブルで汚れを気にせず暖かく
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デイリーなニッポン的着こなし
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スポーツ気分でスタイリッシュに
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ファッションレポーター/フォトグラファー
明治大学&文化服装学院卒業。文化出版局に新卒入社し、「MRハイファッション」「装苑」の編集者に。退社後はフリーランス。文章書き、写真撮影、スタイリングを行い、ファッション的なモノコトを発信中。
ご相談はkazushi.kazushi.info@gmail.comへ。
明治大学&文化服装学院卒業。文化出版局に新卒入社し、「MRハイファッション」「装苑」の編集者に。退社後はフリーランス。文章書き、写真撮影、スタイリングを行い、ファッション的なモノコトを発信中。
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