「継続しない=死!?」 野村高文×樋口聖典が語る、ポッドキャスターの心得とは

  • 文:上村真徹

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左:野村高文●音声プロデューサー・編集者。愛知県知立市出身。東京大学文学部卒。PHP研究所、ボストン・コンサルティング・グループ(BCG)を経て2015年にNewsPicksに入社。編集部デスク、NewsPicksアカデミア マネージャー、音声事業プロデューサーなどを歴任。2022年に独立し、Podcastレーベル「Chronicle(クロニクル)」を立ち上げる。出演・企画を行ったPodcast「a scope ~リベラルアーツで世界を視る目が変わる」で、JAPAN PODCAST AWARD ベストナレッジ賞を受賞。著書に『視点という教養』(イースト・プレス、深井龍之介氏との共著)。TBSラジオ「テンカイズ」レギュラー出演中。

右:樋口聖典●株式会社BOOK代表取締役。福岡県田川市で活動中。いいかねPalette/株式会社BOOK@田川市。どぶろっかーず(Band)、いいかねPalette通信(YouTube)、歴史を面白く学ぶコテンラジオ(Podcast)、新型オトナウィルス(Podcast)、愛の楽曲工房(Podcast)、ギチの完全人間ランド(Podcast)。

2017年に創設され、その1年に活躍をしたクリエイターをたたえる「Pen クリエイター・アワード」。今年から新たに、若手クリエイターやクリエイターを志す人を対象とした作品公募制のワークショップ「NEXT by Pen クリエイター・アワード」が始動した。

8月18日に開催されたのが「ポッドキャスト部門」のオリエンテーション。メンターを務める音声プロデューサーの野村高文さんと、ゲスト出演をしたコテンラジオのパーソナリティ・樋口聖典さんによるスペシャルトークセッションから、一部抜粋して紹介する。

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ポッドキャスト制作に興味のある方、ポッドキャスターの方を対象に、音声プロデューサー・編集者の野村高文さんをメンターに迎えて行う、作品公募制のワークショップです。自身で制作をしたポッドキャストをご応募いただき、選考を通過した5名の方にワークショップにご参加いただきます。ポッドキャストに関する知見を高めたい方や制作のノウハウを極めたい方、ポッドキャスター仲間をつくりたいと思っている方はぜひご応募ください。【応募締切:2023年9月18日(月)】

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ポッドキャストとYouTubeの違い

野村:いきなりですが、樋口さんにとって面白いポッドキャストとはなんでしょう?

樋口:人と人が話している内容に対して「自分ならこう思う」「この人の考えは自分と違うな」など考えさせてくれるものが好きですね。いわば雑談系です。

野村:雑談系を面白くつくるコツはありますか?

樋口:自分が聴く場合は「しゃべりたいことをどれだけ熱量を込めてしゃべっているか」を気にしています。つくり手として考えているのは、「誰が話し、なにを目的に番組をつくるか」というフォーマットの部分が大切だということ。これがうまくいけば、目的の8~9割は達成したと言えます。再生回数やリスナーについて考えがちですが、それはYouTuber的な発想かもしれません。ポッドキャストは再生回数やフォロワー数とは違った部分に価値があります。

野村:たしかに、YouTubeのように再生回数でマネタイズできませんからね。

樋口:最初のうちは自分が楽しく話したくて番組を始めたのに、ランキングが上がってきて上を目指そうと考えだすと、そのせいで楽しくなくなってしまう。そしてランキングが上がったのはいいものの、ふと「そもそもの目的はなんだっけ?」と思いはじめ、やる気がなくなってやめてしまう。そんなケースもあるでしょう。

野村:まるで人生みたいですね。自分にとっての人生の物差しが「仲間となにかをつくり上げ、その時間を楽しみたい」だったのに、「出世する」「お金を稼ぐ」といった世間の物差しを追って疲弊するという。つまり、ポッドキャストは「どうなれば自分が嬉しいか」を明確にしてから始めた方がいいということですね。

樋口:そう思います。

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継続のカギは「自分が頑張れるテーマ」を掘り下げること

野村:ポッドキャストをつくる上で大事なことはなんだと思いますか?

樋口:番組の面白さだけでなく、まずは継続することが大事です。面白くても10回で終わった番組は、そこそこの内容で100回続いている番組よりも埋没するし、誰も聴かなくなりますよね。「継続しないことは死」とも言えます。

野村:「継続しないことは死」。すごいヘビーワードですが、確かにそうかもしれません。

樋口:継続するために一番大事なのは、「めちゃくちゃ頑張らなくても頑張れる」こと。コテンラジオもスタッフ全員がリサーチから編集、収録までめちゃくちゃ頑張ってやっていますが、頑張ることが苦ではありません。こうした状態を継続できることが大事だし、それができている番組は、内からエネルギーが湧き出ているので面白い確率が高いんです。

野村:周りから「頑張ってますね」「よくそんなことができますね」と言われるけど、自分自身は精神的につらくない。むしろ、けっこうノッて集中している。そういう状態ほどうまくいきますよね。面白い企画を立てるために必要なのも、自分が熱意を持って伝えられるものを掘り下げることじゃないでしょうか。

樋口:はい。結局、行き着くところは自分との対話なんです。ポッドキャストで結果がずっと出なかったとしても、自分の内部に評価軸があれば続けられます。逆に評価軸が自分の外部にあると、落ち込んでやめたくなるでしょう。

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話し手と聞き手、それぞれの立場で意識すべきこと

野村:番組によって、樋口さんがメインスピーカーとして話す場合と聞き手を務める場合、両方あると思います。メインスピーカーとして話すときに、意識をしていることはありますか?

樋口:伝えたいことを本気で伝えることですね。あとは、どんな人が聴いてどんな反応をしてくれるかをイメージするくらいでしょうか。もうひとつ大事なのは、自分がしゃべった内容を後で聴くこと。さらに可能であれば、その音声を自分で編集することをおすすめします。

野村:なぜ自分で編集をした方がいいんですか?

樋口:自分の癖が分かるからです。「テンポが速いな」とか、構成も含めて聴き直すことで「結論を言う前に、ここでもう一度振りを入れておかないと言葉の意味が伝わらないな」とか、自分がリスナーにならないと気づけないことがあります。

野村:ではコテンラジオなど、聞き手の場合はなにを意識していますか?

樋口:世界で一番、話し手のしゃべることに興味がある人になることです。細かいテクニックもいろいろありますが、なによりそれが一番大事です。僕も番組ではコテンラジオのメンバーというより、リスナー0号と思って参加しています。全リスナーの代表として、みんなが聞きたいと思うようなことを聞くし、笑いたいと思うようなところで笑いたいし、びっくりするところでびっくりしたいんです。

野村:なるほど。

樋口:あとは話し手の意図がリスナーに正確に伝わるよう、感情の誘導も意識しています。たとえば1万人の人が亡くなったという歴史上の事件があったとして、それがどの程度多いのか少ないのかを示唆するコメントをすることで、数字だけ聞いてもわからないリスナーに意図を伝えることができます。

野村:たしかに、聞き手の反応が話の内容の価値を決めることはありますね。サラッと流してしまうとその程度のエピソードだと思われるし、逆に「それはなんですか」と反応することで、その情報が“太字”の意味合いになります。

樋口:僕もよく「太字にする」「マーカーを引く」という表現をしていますが、まさにそれですね。話し手が言った単語をオウム返しで言うのも、太字にするテクニックのひとつです。

野村:私もまさに、樋口さんとのトークでオウム返しを何度も行っていました(笑)

樋口:さすがですね(笑)

イベントでは視聴者からの質問にも回答し、盛り上がった。続きは以下のアーカイブ動画からご覧いただきたい。

<アーカイブ動画>

【Podcast Studio Chronicle 野村高文×コテンラジオ 樋口聖典】NEXT by Pen Creator Awards ポッドキャスト部門オリエンテーション【アーカイブ動画】

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ポッドキャスト制作に興味のある方、ポッドキャスターの方を対象に、音声プロデューサー・編集者の野村高文さんをメンターに迎えて行う、作品公募制のワークショップです。自身で制作をしたポッドキャストをご応募いただき、選考を通過した5名の方にワークショップにご参加いただきます。ポッドキャストに関する知見を高めたい方や制作のノウハウを極めたい方、ポッドキャスター仲間をつくりたいと思っている方はぜひご応募ください。【応募締切:2023年9月18日(月)】