欧米では、クルマの電動化が加速中だ。単にエンジンの代わりにモーターを載せればいいってわけではない。電動化は企業の将来のありかたと密接に関連している一大事である。
英国のジャガー・カーズが描くグランドデザインは、意外であり、かつ興味深い。
同社では、ジャガーをピュアEVのブランドに変える計画をすでに発表。そして、2025年に新世代のピュアEVを送り出すとしているのだ。
しかも、ジャガーの場合、計画が大胆だ。
「超がつくような高級電気自動車(EV)を計画していて、25年に第1弾、そのあと、ちがう車型のモデルが続きます」
ロンドンの会場で話を聞いた、ジャガー担当のマネージングディレクター、ロードン・グローバー氏はそう教えてくれた。
すでに、18年に「I-PACE(アイペース)」というクロスオーバー型の魅力的なスタイルのピュアEVを、日本を含めた世界各地で販売しているジャガー。
同時に、技術的な蓄積が必要と、ジャガーでは16年10月から「フォーミュラE」というピュアEVに参戦している。
ジャガーTCSレーシングは、現在「ABB FIAフォーミュラE世界選手権」と呼ばれるピュアEVでは世界最高峰のレースで、1位、2位を争う戦闘力を発揮。
私が出かけた22−23年シーズンの第15戦(23年7月29日)では、舞台になったロンドンで、ジャガーを駆るドライバーのミッチ・エバンスが1位を獲得。
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翌日の7月30日の第16戦/最終戦では、結果的に僅差で、ジャガーTCSレーシングは、年間2位。
でも、優勝したチームのマシンのドライブトレインもジャガーが提供しているので、ジャガーのマシンどうしが優勝を争ったともいえる。
イーストロンドンのドックランズ地区に作られた巨大な見本市会場「エクセル・ロンドン」が、第15戦と続く第16戦の舞台。
一部は屋内、一部は市街地を道路を使った特設コースで、英国車であるジャガーの勇姿を見ようという観客で、ピット前のメインスタンドは満員だったようだ。
「フォーミュラEは、I-PACEのような市販車へ技術的なフィードバックを得られるし、いっぽう、ブランドイメージを高めることにも寄与してくれます」
ジャガー担当のマネージングディレクター、ロードン・グローバー氏は、フォーミュラEに参戦し続けている意義を語った。
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東京でも23−24年シーズンのレース開催が来24年3月30日に開催されているフォーミュラEの利点として、レースを統括する国際自動車連盟(FIA)は、市街地のレースであることをあげている。
「レース場へのアクセスが容易で、レースが終わったら、ショッピングとかディナーとかにすぐ行けるんです」
ジャガーの広報担当者がそう言うように、気軽さも、このレースの人気を後押ししているようだ。
といっても、レースはかなりの迫力もの。電気自動車の加速のよさは、乗ったことのあるかたは先刻ご存知だろう。エンジン車よりはるかに出足がよい。
レースでも同様で、各チームのマシンは(ほぼ)音もなく、シュルシュルシュルという感じで、地を這うロケットのように猛烈な速度でスタート。
特設コースなので、一般的なサーキットのようにコースアウトを考えたエスケープゾーンはない。
競いあうライバルにカーブで外側に押しだされたマシンが、スポンジバリアに激突する。クラッシュも多く、注意を喚起するイエローフラッグがしょっちゅう振られるしまつだ。
ジャガーTCSレーシングのエースドライバー、ミッチ・エバンスはトラブルに巻き込まれることもなく、最初のほうのラップでリードを獲得。そのまままっさきにフィニッシュしたのだった。
23−24年シーズンに向けて、ジャガーTCSレーシングでは、今期、最終戦で1位を獲得したニック・キャシディと契約。エバンスとともに強力は布陣をしくという。東京でのレースも楽しみだ。