ラグジュアリーブランドが国際貢献をはじめ、さまざまに社会との接点を図る中で、スイスが誇るウォッチメゾンであるオーデマ ピゲは、ユニークピースのオークションを通じて、教育プログラムへの支援を発表。去る5月25日、オーデマ ピゲは、VIP顧客をドバイに招いてマーベルとのコラボモデル第2弾を初披露した。さらに2021年の「ブラックパンサー」に続くユニークピースを製作し、そのオークションを同地で開催。白熱した入札が相次ぎ、前回を大きく上回る高額で落札された。時計ジャーナリストの髙木教雄が現地の様子をリポートする。
社会貢献を目的に開催された、白熱するオークション会場
オーデマ ピゲがオークション会場に選んだのは、ドバイ中心地にそびえるセントラル・パーク・タワーの最上階であった。招待されたVIP顧客たちは、個別の番号が描かれたパドルを手に、ユニークピースの発表をいまかいまかと待つ。そして特設ステージにフランソワ-アンリ・ベナミアスCEOと複雑時計部門トップのアンヌ-ガエル・キネが登壇し、スクリーンにユニークピースが映し出されると、会場からは大歓声が沸き起こった。
今回ダイヤルに掲げるモニュメントのキャラクターに選ばれたのは、マーベル作品の中でも1、2を争う人気のスパイダーマン。ユニークピースに先駆けて会場で発表された市販限定モデルに用いられたスパイダーマンは、レッド×ブルーのスーツを着たお馴染みの姿であったのに対し、ユニークピースのモニュメントはブラックスパイダーマンとなり、ケースには繊細な蜘蛛の糸がレザーエングレービングで施されている。市販限定モデルとは明らかに仕様が異なる姿に、招待客たちの目はくぎ付けだ。
ベナミアスCEOの一声で、オークションは20万ドルからスタート。会場では次々とパドルが上がり、またオンラインと電話による参加者からの入札も相次ぎ、ものの十数分で入札額は前回のブラックパンサーの落札価格である530万ドル(約7億5000万円)を超える550万ドルに達した。ここで一旦、入札の声は止まったが、ベナミアスCEOは会場をあおり、入札を促す。
すると580万ドル、さらに600万ドルの入札が続けて入った。それでもなお、ベナミアスCEOは会場やオンライン参加者をあおる。そして620万ドル(約8億8000万円)との声が会場から上がった。ここからオークショニアはたっぷりと時間をかけて次なる入札を促したが、声は上がらず、ハンマープライスとあいなった。
ブラックパンサーを90万ドルも上回る落札に、ベナミアスCEOは感謝の言葉を述べた。そして「私は今年いっぱいで勇退しますが、マーベルとの関係性は継続され、2025年には新たなキャラクターとのコラボモデルの登場を約束します」と、力強く宣言し、オークションを締めくくった。
今回のオークションには、ユニークピースに加えて2点が出品され、落札総額は850万ドルに達した。この金額はすべて前回同様、オーデマ ピゲが信頼する非営利団体、ファーストブックとアショカに寄付され、ブラジル、英国、ナイジェリア、カナダ、インドネシアなど世界各地の恵まれない家庭の若者たちに均等な教育の機会を与えることに使われる。マーベルとのコラボモデルのユニークピースの製作は、オーデマ ピゲの社会貢献であるのだ。
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マーベルとのコラボ第2弾は、スパイダーマン!
今回登場したマーベルとコラボした市販限定モデル第2弾「オーデマ ピゲ ロイヤル オーク コンセプト トゥールビヨン “スパイダーマン”」は、スケルトンムーブメントを露わにしたダイヤルに立体的に浮かび上がるスパイダーマンの姿が、実に印象的だ。このモニュメントは、ホワイトゴールド製。塊から職人の手でひとつずつ彫り出され、スーツの模様まで繊細にエングレービングされている。彫刻と塗装には、50時間以上を要するという。
搭載するムーブメント「Cal.2974」は、既存の「Cal.2964」のスケルトン仕様。12時位置の香箱から6時位置のトゥールビヨンまで、ほぼ一直線状にパーツが連なるコンパクトな設計で、スパイダーマンのモニュメントを最大限、巨大化できた。
四隅を大胆にファセットカットしたケースはチタン製で、ブラックセラミック製の八角形ベゼルが額縁の役割を果たし、色鮮やかなスパイダーマンのモニュメントをより際立たせている。
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ユニークピースも基本設計は同じだ。スパイダーマンのモニュメントは熱処理でホワイトゴールドに含まれる銀を黒化させ、1984年のコミック「The Amazing Spider-Man」#252に出てくるブラックスーツに身を包んだスパイダーマンを表現した。
ケースもモニュメントと同じくホワイトゴールド製。通常ホワイトゴールドケースは、ロジウムメッキ処理されるが、このユニークピースでは蜘蛛の巣をレザーエングレービングした際の熱で、モニュメントと同じく銀が黒化した様子をそのまま残している。さらにケース上下には、セラミック製の畜光材を象嵌。スパイダーマンの目にも同じ素材がはめ込まれ、暗闇でケースとともにグリーンの光を放つ様子は極めて神秘的だ。セラミック系畜光材は、他社でもインデックスや針に用いているが、それとは異なるオーデマ ピゲ独自の新素材とのことで、ケースに使える十分な強度を持つ。
モノトーンの外観は、いかにもシック。スーツにも合わせられるキャラクターウォッチと言えよう。
オーデマ ピゲ ジャパン
TEL:03-6830-0000
www.audemarspiguet.com