多くの科学者や愛好家が地球外生命体、つまりエイリアン(宇宙人)の存在を信じ、存在の証拠を長年に渡り探し続けている。しかし最新鋭の科学や技術を駆使しても、いまだその存在の決定的証拠を掴めていないのが現実だ。
BBCによると、66年に渡って宇宙探査や月、太陽風、小惑星、低軌道からのサンプル収集ミッションが行われ、地球の表面で発見された7万個以上の隕石が世界中の博物館に収容されているものの、すべては地球近隣に由来するものだ。太陽系外の物質を発見できておらず、当然のことながら太陽系外に生命体が存在しているのかも定かではない。
そんな中、Independent紙をはじめとする多数メディアによると「ハーバード大学のエイリアン・ハンター」と呼ばれるアヴィ・ローブ教授が、「地球外生命体の証拠を発見したかもしれない」「(発見物は)エイリアンの宇宙船の破片である可能性がある」と語り、大きな話題を呼んでいる。
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ローブ教授は、2011年から2020年までハーバード大学の天文学科の学科長を務め、現在は地球外技術文明 (ETC) による技術的痕跡の探求する同大学のプロジェクト「ガリレオ・プロジェクト」を率いている人物だ。事の発端は、2014年にさかのぼる。2014年1月9日午前3時5分(現地時間)、太平洋上(パプアニューギニア沖)で爆発した物体「IM1」が海の底に落下した。
Harvard professor Avi Loeb retrieves potential 'alien artifact' from Pacific Ocean#ufotwitter #uaptwitter #ufo #uaphttps://t.co/L92Hrw8PaW
— UAP Media Hub (@UAPMediaHub) July 5, 2023
隕石は年間、数千個単位で落下している。この落下はNASAのカタログに記載されたものの、当時はまったく話題にならならず、埋もれてしまうはずだった。しかし5年後の2019年、地球に「不可解」な形で衝突した隕石を探していたローブ教授のチームが「IM1」に注目し始めた。
IM1が近傍の恒星の95%よりも速い速度で移動したこと、他の隕石よりも大気圏のかなり低い位置で爆発したこと、地球の大気圏上層で分解することなく下層に到達するまで持ちこたえた等、通常の隕石とは異なる点が多かったからだ。ローブ教授とハーバード大学の学部生アミール・シラジは、この物体の極端な速度から「地球に落下した史上初の恒星間天体である可能性」を示唆する論文を共同執筆した。
A falling space rock analyzed by Amir Siraj has now been officially shown to be first interstellar object ever detected in our solar system, predating 'Oumuamua. https://t.co/25id4Qrmq3
— Astronomy Magazine (@AstronomyMag) November 9, 2022
その論文は当初、科学雑誌への掲載を拒否され、IM1に関するアメリカ政府の重要な機密データへのアクセスも阻まれた。しかし2022年4月、アメリカ国防総省はNASAに書簡を送った。その書簡には、アメリカ宇宙軍は宇宙作戦司令部の主任サイエンティストが、「IM1の速度は恒星間空間(=太陽系外)から飛来したことを十分正確に示すものである」ことを確認した旨が書かれていた。
6/ “I had the pleasure of signing a memo with @ussfspoc’s Chief Scientist, Dr. Mozer, to confirm that a previously-detected interstellar object was indeed an interstellar object, a confirmation that assisted the broader astronomical community.” pic.twitter.com/PGlIOnCSrW
— U.S. Space Command (@US_SpaceCom) April 7, 2022
つまりローブ教授とシラジによる論文を、国防総省が後押しした形となった。ローブ教授はこの物体の謎をさらに解明するため、150万ドルをかけた大掛かりな探索を行った。
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2週間の大探索を敢行。見つけたものとは……
ローブ教授はアメリカ軍のデータと現地の地震学の測定値を組み合わせ、IM1の破片が落下したであろう場所を計算。パプアニューギニアのマヌス島の沿岸から84km(52マイル)付近に狙いを定め、今年6月14日~28日に海底探索を実施した。
USA Todayによると、強力な磁石をつけた「ソリ」を海底に沈め、探索船シルバースター号が隕石の経路に沿ってソリを引く形で物質を収集する、という方法で行われた。
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さまざまな物が採取されたが、その中に直径0.3~0.5ミリ程度、重さ1グラム以下の球体50個が発見された。球体の組成を予備的に分析したところ、一般に地球上で製造されている合金や太陽系の天然隕石とは一致しないことが示唆された。ローブ教授も自身のブログに「ほとんどが鉄で、マグネシウムとチタンは含有されているが、ニッケルは含まれていない」「この組成は、人間が作った合金や既知の小惑星、身近な天体物理学的なソースと比較すると異常である」と書いている。
CBS Newsの取材に対し、ローブ教授は、「(この球体は)NASAがカタログに載せている、過去に目撃されたすべての宇宙岩石よりも強靭な物質強度を有しています」
「鉄隕石よりも丈夫な素材でできており、太陽近傍のすべての星の95%よりも速く移動していることから、(地球外に存在する)他の文明の宇宙船か、技術的な仕掛けである可能性が示唆されました」
と語り、この球体が「世紀の大発見」であり、宇宙人が存在することの証明となることを期待している。
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さらなる分析に期待
ローブ教授の見解にはロマンがあるが、この物体が実は地球起源のものなのか、ローブ教授の期待どおり「太陽系外の物体」や、エイリアンの宇宙船の残骸等の「地球外文明が作った人工物」であるのかはまだ定かではない。球体はハーバード大学に運ばれ、今後研究チームにより他の隕石の破片と比較分析が行われる。
結果によっては、人類が初めて実物を手にした「太陽系外物質」となる可能性があることから、今後の分析に期待が高まる。ローブ教授の「エイリアン探し」の旅はこれからも続く。
【動画で確認】謎の球体の発見に喜ぶ、ローブ教授のインタビュー映像
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