ウイスキー樽で熟成する、余韻が美しいヴィンテージビール【プロの自腹酒 vol.9】

  • 文:山内聖子
  • 写真:榊 水麗
  • イラスト:阿部伸二
Share:

ローグ/ローリングサンダー・インペリアルスタウト

1_MRE0244.jpg
おもな原料を自社農場で生産する、アメリカ・オレゴン州の醸造所、ローグがつくる熟成ビール。コーヒーやカカオ、ナッツのような香ばしさに品のいい苦味など、奥行きのある深い味わいと長い余韻があるのは、同社が手がけるウイスキーを熟成する樽でビールを寝かせるところに秘密がある。大ぶりのワイングラスで香りとともにじっくりと味わってみたい。温めてホットビールにしてもおいしく飲める。500㎖ ¥1,320/えぞ麦酒 TEL:011-614-0191

公私ともにビール漬けの毎日を送っているという、日本初のクラフトビール専門店「麦酒倶楽部ポパイ」の2代目代表の城戸弘隆さん。

聞けば、22歳で同店に入社して以来、奥が深いクラフトビールの魅力に開眼。業界の先駆者としても有名な、初代の青木辰男さんから後継者を任されるほど造詣を深め、いまや自社銘柄の「両国ブルワリー」で自らビール醸造も手がけている。仕事でもプライベートでもビールを愛飲する、根っからのビール党だと教えてくれた。

「テイスティングのつもりで他の酒を飲むことはありますが、普段はほとんどビールのみ。他にもおいしい酒がたくさんあるのはわかっているのですが、自分が心の底から美味いと感じて飲める唯一の酒がビールで……。寝ても覚めてもビールのことばかりです(笑)」

そう笑う城戸さんが、プライベートで買う自腹酒(じばらざけ)はもちろんビール。自社の「両国ブルワリー」を推薦しつつも、「自分のブルワリーも含め日本のヴィンテージビールではこのクオリティを超えるものはまだない」と太鼓判を押すのが、アメリカの「ローリングサンダー・インペリアルスタウト」である。

「とっておきの機会に飲みたい、自腹で買う価値があるビールです。カカオのような香りの長い余韻や、きれいな後味はため息ものです」

そして、城戸さんお気に入りのおともは、なんと意外にもビールの香ばしさと相性がいいというバニラアイスクリーム。別々に合わせてもいいが、エスプレッソをかけて食べるアフォガードのように味わうのもお薦めだ。

「口の中が最高に幸せになる相性で、酒の素材のよさも際立ちます。ちょっと嫉妬するくらい、とにかくこのビールは質が高いんです」

城戸さんは悔しさをにじませつつも、ビールを見る眼差しは、どこまでも優しかった。

---fadeinPager---

自腹酒 酔いおとも.jpg
幸せな口溶けを生む、香ばしさと甘みの融合

アイスクリームはなんでもいいらしいが、城戸さんのお薦めは上質な甘さが特徴のハーゲンダッツのバニラアイス。ビールにアイスをのせ、ビールフロートにしても美味しい。

城戸弘隆

1985年創業の「麦酒倶楽部ポパイ」に2003年に入社。店長を経て16年に代表に就任。自社ビールの醸造所「両国ブルワリー」の代表も務める。

麦酒倶楽部ポパイ

住所:東京都墨田区両国2-18-7ハイツ両国駅前102
TEL:03-3633-2120

関連記事

※この記事はPen 2023年8月号より再編集した記事です。