奈良の国宝を眼前に望む、唯一無二のオーベルジュで感動に出逢う

  • 文:植田沙羅
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世界遺産・興福寺を窓から望める、登大路ホテルのスイートルーム。かつてこのホテルの敷地が興福寺の境内にあったことに恩恵を受ける、他では味わえない借景だ。

1300年の悠久の時を超え、かつて都として栄えた奈良がいま、旅のディスティネーションとして注目を集めている。その一方で京都に比べると観光客を迎え入れるホテルの数そのものが少なく、とりわけ旅慣れたゲストを満足させるラグジュアリーホテルに至っては数えるほどしかない。そんな古都において、世界遺産・興福寺に隣接し抜群のロケーションを誇る「登大路ホテル奈良」が昨秋リニューアル。唯一無二の魅力を有するオーベルジュとして生まれ変わった。

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登大路ホテルのエントランス。奈良公園の玄関口とも言える登大路に面しており、近鉄奈良駅からも徒歩3分ほどの好アクセス。東大寺大仏殿や春日大社など、市内のおもな見どころはすべて徒歩圏内にある。

登大路ホテル奈良が位置するのは、日本有数の名勝地「奈良公園」に隣接し、世界遺産の興福寺を眼前に望む緑豊かなエリアだ。近鉄奈良駅からも徒歩約3分という好立地にありながらも、驚くほど静けさに満ちている。奈良県庁舎や奈良県立美術館も目と鼻の先の距離で、旧国立競技場の設計に携わった片山光生によるモダン建築も周辺の見どころのひとつだ。

全13室からなるホテルは、かつて興福寺の境内であったという歴史ある土地に佇む。もともとは企業の迎賓館であったところ、15年前からホテルとして運営されてきた。そして昨年11月に、五感を魅了する「食と音楽に出逢うひと時」をコンセプトにしたオーベルジュとして、リニューアルオープンを果たした。

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エントランスを抜けると、ロビー右手の宿泊ゲスト用のラウンジスペースにてチェックイン。ゆったりとソファに腰掛け、ウェルカムドリンクで喉を潤したい。

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客室に通されると、そこには窓一面に広がる奈良公園の緑を借景に、ゆったりと落ち着いた空間が広がる。ベージュやグレーを基調としたモダンシックなインテリアに、アクセントとなる吉野杉や天然の蚊帳生地などの奈良の素材が、やわらかな温かみを添えている。 

スイートルームからは、世界遺産に指定されている興福寺の境内を望め、五重塔や北円堂も間近に感じられることだろう。奈良時代の721年に建立されたこの堂は、日本に現存する八角円堂のうち最も美しいとも称され、国宝にも指定されている。五重塔は来年から2030年まで大規模修理に入るため、その凛とした厳かな姿はしばらく拝観できないので、早めの来訪をお薦めしたい。

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スイートルームは全3室。奈良公園に面した客室からは、興福寺の国宝・北円堂を望める。バルコニーに出てひと息つくのもお薦めだ。
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デラックスルームは40〜43m²のゆったりとしたつくり。こちらもモダンシックな落ち着いた内装に、大きな窓からグリーンが映える。

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そしてここが「オーベルジュ」であることを忘れてはならない。ダイニングとなる「レストラン ル・ボワ」は、ミシュラン三ツ星に輝く札幌の「レストランモリエール」が監修。奈良と北海道の食材を用いた、美しくも洗練されたフレンチが提供される。

卓越した技法で素材の魅力を引き出すとともに、五感を刺激するプレゼンテーションは実に見事だ。そして奈良という地のテロワールを感じさせるコースは、時間を忘れさせるほどに心を酔わせてくれる。

さらに、ワイン好きならぜひ食事前に地下のワインセラーを案内してもらうことをお薦めしたい。著名なアーティストが描き続けてきたそのラベルを見るだけでも価値のある「シャトー・ムートン・ロートシルト」をはじめ、ボルドーの5大シャトーはもちろん、「ロマネ・コンティ(DRC)」や「モンラッシュ」「オーパスワン」といった、ワイン愛好家も唸らせる至極の逸品が、空気に触れる瞬間を待ち侘びて眠っている。

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レストラン ル・ボワの内観。白を基調とした洗練された空間で、奥に鎮座するのはスタインウェイ&サンズのグランドピアノ。
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ともにコース料理の一例。上:ふきのとうのフリット。 下:エゾマツの葉で燻し、キャラメリゼしたハーブをまぶした奈良県産・ヤマトポークのロースト。 
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驚くような稀少なワインが眠るセラー。ぜひ食事前に訪れてほしい。

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「レストラン ル・ボワ」での食事をいっそう華やかに仕立ててくれるのが、音楽とのハーモニーだ。白と木目を基調とした落ち着いた店内で、奥に堂々と鎮座するのはスタインウェイ&サンズのグランドピアノ。クラシック音楽との融合をコンセプトに掲げるこちらのレストランでは、プロのピアニストを定期的に招聘している。

ディナーの前にアペリティフをいただきながら、大崎由貴など数々の受賞歴を誇る人気ピアニストが演奏を奏でてくれるという。普段はコンサートホールでしか聴くことのできないような素晴らしい演奏を目の前で体験できる。まさに五感で味わう食事と言えるだろう。

今後は、奈良県の文化政策顧問でもある世界的ピアニストの反田恭平が中心となって創設したジャパン・ナショナル・オーケストラとも連携し、次世代アーティストのコンサートも予定しているという。

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若手の人気ピアニストのひとりである大崎由貴。この距離で彼女の演奏を聴けるのはなんとも贅沢なひと時だ。

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レストランでの食事を終え、まだちょっと飲み足りないという方には、ふたつの選択肢がある。地下にある秘密の隠れ家的サロンか、クラシックな雰囲気漂う1階のオーセンティックバーだ。

サロンでは、友人の自宅に招かれたようなリラックスした空気が流れる中、オーナーのこだわりが詰まった音響機器が奏でる至福の音に耳を澄ませたい。見たこともないような大型スピーカーは、イギリスが誇るタンノイ社の最高峰モデル「ウエストミンスター」。琴線に触れるような豊かな表現力と臨場感のあるサウンドに、つい時間と我を忘れてくつろいでしまうほどだ。

一方で、コの字型カウンターに革張りのチェアを備えたバーは、リニューアルに際して一切手を加えなかったという。クラシックな雰囲気をそのままに、国内外のレアなウイスキーや、地元・奈良県産のスピリッツを使ったカクテルも提供している。

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ゆったりとくつろげる大きめのソファに、最高峰のオーディオシステムを導入した地下のサロン。
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クラシックな内観をそのまま残した、1階の「ザ・バー」。ディナー前のアペとしての利用もお薦めだ。宿泊ゲスト以外の利用も可。

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朝食は和食と洋食を選べるが、どちらにも焼き立てのクロワッサンが提供される。朝食はテラスでいただくことも可能だ。

夜が更け、朝を迎えたら、もうひとつサプライズが待っている。朝食には、一人ひとりの着席時間に合わせて焼き上げるクロワッサンが提供されるのだ。搾りたてのオレンジジュースと、芳醇なバターの香りが食欲をそそる焼き立てのクロワッサン。これだけでも幸せな気分になれる。

そして最後に、ぜひ試してほしいことがある。朝食前の散策だ。奈良公園がいちばん美しい時間はなんといっても、朝。観光客が少なく、凜とした澄んだ空気の中、斜めに注ぐ陽光を浴びて輝く鹿の姿は、神聖で息を呑むほどに美しい。喧騒した昼間にはない奈良の魅力を発見できるはずだ。

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登大路ホテルの外観。建物は地上3階、地下1階の4層からなる。夜は昼間と打って変わって、辺りに静寂が訪れる。

登大路ホテル奈良

住所:奈良県奈良市登大路町40-1
TEL:0120-995-546
www.noborioji.com