中学時代の英語の授業は、グラマーとリーダーの2つに分かれていた。それが今は4(または5つ)に増えているという。ヒップホップの4大要素がいつのまにか9大要素(詳細はググって)になっていたのと似たような話である。時間が経過するとはそういうことだ。
中学時代の国語や社会の教科書がどんな表紙だったか記憶にないが、英語の「ニューホライズン」のことは、はっきりと記憶している。表紙のイラストのおかげ。当時、13歳(厳密には中一4月だと12歳か)だった僕は、まだそのイラストレーターの名までは知らなかったが、間もなく『FMステーション』(FM情報誌)を定期購読するようになって鈴木英人の名を覚えた。その数年あとに山下達郎の音楽を遡って聴くようになって『For You』(後追いの世代ではあるが)にも出会う。
ちなみに、僕の6年ぶりの新刊『1973年に生まれて 団塊ジュニア世代の半世紀』は、東京書籍から発売される。あの「ニューホライズン」の出版社である。
はたとそれに気づき、ある日、東京書籍の担当編集者に昔のニューホライズンが保管されていないか尋ねた。
なんと当時の「ニューホライズン」はきちんと保管されていた。
表紙ははっきりと覚えている。まさにこれを毎日鞄に入れて通学していたわけだ。僕は途中で転校したので、教科書がニューホラインズンだったのは1年だけだった。だがのちに昔の教科書話をして盛り上がるのは圧倒的に「ニューホライズン」だ。
ニューホライズンの表紙を鈴木英人が担当していたのは、1984〜1986年。この期間に重なって中学時代を過ごせたことの尊さ。もし、これ以外の表紙の教科書だったら英語が嫌いになっていたかもしれない。
ニューホライズンで最初に登場する英文はなんだっけ。せっかく手元にあるのだからチェックしてみる。ちなみに僕の記憶では
This is a Pen.
だったはず、という記憶がある。
このコラムが載る媒体は「Pen Online」だ。正解だったら、ちょっとした奇跡だ。
ちなみに、僕は自分の記憶力に自信を持っている。
さて、答え合わせである。
Good morning, everyone.
が「ニューホライズン」に登場する最初の構文だった。礼に始まるのだ。ペンじゃなかった。このあとに、先生のMiss Kato とのやりとりがあり、Fine, thank you.で締められる。
なるほどね。自分は記憶力がいいということ自体が、間違った記憶かも。もはや最近の自分は、元々の自分の性格すら忘れつつあるのだ。
次の次の次の見開きに、ようやく「Pen」が登場する。
Is this a pen?
Yes, it is!
そうか。ペンはまさかの疑問形での登場だったとは。
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『1973年に生まれて 団塊ジュニア世代の半世紀』
(速水健朗著 東京書籍 ¥1,540 7/4より順次発売)
※新刊発売日の2023年7月4日発売には刊行イベントもあります。
「速水健朗 × 宇野維正 ダブル刊行記念緊急イベント」