1980年代にトヨタが生み出したユニークなクルマに、近年になって米自動車専門サイトが再び注目している。日本といえば品質の高いクルマと細かな気配りの行き届いた商品に定評があるが、この2つが掛け合わさったユニークなバンがかつて存在していた。
話題となっている車種は、その名も「トヨタ バン(Toyota Van)」だ。欧州版に設定された上位トリム「LE」において、センターコンソール付近にミニサイズの冷蔵庫を搭載していた。1984年型から北米に「トヨタ バン(Toyota Van)」という堂々としたネーミングで登場。ヨーロッパの一部地域では「スペースクルーザー(Space Cruiser)」の名で呼ばれている。
米自動車情報サイトのモーター・ビスケットは6月13日にこのモデルを取り上げ、「トヨタは史上最も風変わりな部類のクルマを生み出した」と述べている。今では考えられない小さな工夫が「あなたを笑顔にすることだろう」として海外の読者に紹介している。
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真夏のドライブで氷入りドリンクをどうぞ
内部は冷蔵庫となっているほか、備え付けの製氷皿で氷を製造することも可能だった。車内が多少揺れても対応できるように、製氷皿は漏れにくい設計になっていたという。全体の冷却機能はエアコンの冷媒を二次利用することで賄われるという、非常に合理的な設計だったようだ。
米自動車情報サイトのオート・エボリューションは、この機能を写真付きで紹介。シフトレバー前方のスペースに、小型のクーラーボックスが埋め込まれたようなデザインとなっている。缶ジュースを5〜6本も詰めば一杯になってしまうほどの小さなものだ。
それでも夏場の厳しいドライブ中、キンキンに冷えたドリンクで喉を潤せる冷蔵庫の存在は、ドライバーや同乗者にとって嬉しい機能だったことだろう。米技術解説誌のポピュラー・メカニクスは、皆に愛されるバンと氷入りドリンクの組み合わせは「魅力的なコンビネーション」だと称えている。
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エンジンルームが前方にない!?
オート・エボリューションは、「今日では誰もが知るプレビア(日本名『エステマ』)やシエナの前身となった」と紹介しつつ、「現代のミニバンと比べるとかなり奇妙なレイアウトだった」とも述べている。
「奇妙なレイアウト」の理由は、独特の冷蔵庫が装備されていたことに留まらない。このトヨタ バンのエンジンは車体前方ではなく、キャビン下部に配置されていた。「何か修理が必要な場合、運転席を持ち上げてエンジンルームにアクセスする必要があった」と記事はユニークな設計を振り返る。運転席内部に身体をねじ込んでの作業となるため、メカニックにとっては手強い相手だったかもしれない。
残念ながら製氷機付きのトヨタ バンは、現在では販売されていない。しかしモーター・ビスケットは、この機能を先駆けとして、オリジナルの付加価値を追求する流れが自動車業界に生まれたと評価している。
各社が趣向を凝らした歴代のクルマには、レコードプレーヤー内蔵のクライスラーや、トランクに箱形バイクを搭載した1981年のホンダ シティ&モトコンポなどがある。2013年に登場したホンダ オデッセイの北米モデルでは、車体に掃除機が内蔵された。
こうした機能の中には、予想ほど実用的でないものもあったかもしれない。けれど、なにか一つ光るものを備えたこうした特別な愛車たちは、きっと格別の愛着を感じさせてくれたことだろう。
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#TriviaTuesday: Can you tell us which Toyota model featured an ice maker? pic.twitter.com/0WEvn8aSNO
— Del Toyota (@DelToyotaPA) September 3, 2013
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This #ThrowbackThursday 1984 Toyota van was so cool it had an optional ice maker/refrigerator between the front seats! pic.twitter.com/W5aHRmoV26
— Stephen Toyota (@StephenToyotaCT) February 2, 2017