「大人の名品図鑑」インディ・ジョーンズ編 #3
考古学に関する豊富な知識を持ち、悪党相手にヒーローのようにところ狭しと活躍するインディ・ジョーンズ。間違いなく名優ハリソン・フォードの当たり役のひとつだ。今年、待望の最新作が公開されるが、その新作にも登場するインディ・ジョーンズが身につけてきた数々の名品を探してみた。
インディ・ジョーンズの装いで、誰もが思い浮かべるのが帽子だろう。
その帽子をインディが被るきっかけが描かれているのが、3作目の『インディ・ジョーンズ/最後の聖戦』(89年)だ。冒頭の回想シーンに登場するインディはまだ12歳。それでも洞窟で「コロナドの十字架」を盗掘している現場に遭遇したインディは、その遺物を守ろうと奮闘するが、最後には十字架は彼らの手に渡ってしまう。実は盗掘団のリーダーが被っていたのが「フェドーラ」と呼ばれる帽子で、この時の事件をきっかけにしてインディは「フェドーラ・ハット」を被ることになる。
ミンティー・クリンチが書いた『ハリソン・フォード』(近代映画社)には、「インディのあの帽子は、スピルバーグがロンドンの由緒ある帽子店『ハーバード・ジョンソンズ』で見つけたものだ。撮影用に二ダースも購入されたということだ」とある。『帽子の文化史』(出石尚三著 ジョルダンブックス)にもその話が書かれていて、スピルバーグがロンドンでこの帽子を発見した理由は1作目の撮影の大半がロンドンのスタジオで行われていたからではないかと著者の出石は推論する。さらにこの帽子の正式名称は「フェドーラ・ハット」と呼ばれるものだとも書いている。
同書によれば、この帽子の由来になったのは1882年にフランスの劇作家、ヴィクトリアン・サルドゥーが書いた『フェドーラ(Fedora)』という芝居。フェドーラはその劇の女主人公の名前で、舞台が大ヒットになると彼女の衣装まで流行し、帽子や服だけでなく、靴などにも「フェドーラ」と名前が付けられ売られていたという。その人気はイギリスやアメリカまで及んだとも書かれている。
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「THE FAT HATTER」の“インディ・ジョーンズ・ハット”
つまり「フェドーラ・ハット」の発端になったのは女優が舞台で被った帽子で、そもそもは女性用だったのである。しかし現在ではインディがこの帽子を作品で被ったことで、この帽子は「インディ・ジョーンズ・ハット」という俗称でも親しまれる。同書の用語解説にも「インディ・ジョーンズ・ハット」という項目が設けられている。ちなみにスピルバーグがこの帽子を発見したハーバート・ジョンソンズは、現在は、ロンドンを代表する皮革製品ブランド、スウェインの傘下になり、商品はそこで展開している。そのHPをチェックしてみると、この帽子の元になったのは「Poet」というモデルと書かれ、現在でも「Indiana Jones Collection」と名付けた同様の帽子が販売されている。
インディが被った帽子を彷彿させるものとして今回紹介するのは、東京・渋谷にある帽子店THE FAT HATTERの「CHEERS」というモデルだ。THE FAT HATTERは、古き良き時代のニューヨークのハットショップをイメージした帽子専門店で、店内には工房を併設し、ハットメイキングの様子まで見られる。店内には工房でつくられた一点物やヴィンテージの帽子なども並び、フルオーダーで好みの帽子も製作することも可能だ。
「CHEERS」も工房で仕立てたモデルで、特注でつくった重さ200gのラビットフェルトを使い、ハリがありながらもしっかりした触り心地に仕上げている。このモデルはTHE FAT HATTERで可能な最大サイズのクラウン(帽子の頭に被る部分)とブリム(つば)の長さを出し、圧倒的なボリューム感で仕立てたモデルだ。
極上の素材とクラフツマンシップを感じる美しい仕上げ。そしてその堂々とした佇まい。ハリソン=インディが被ったら、さらに男前に見えるに違いない。
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問い合わせ先/THE FAT HATTER TEL:03-6450-6506
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