「大人の名品図鑑」インディ・ジョーンズ編 #0
考古学に関する豊富な知識をもち、悪党相手にヒーローごとく躍動するインディ・ジョーンズ。間違いなく名優ハリソン・フォードの代表作の一つだ。今年、待望の最新作が公開される。初代から新作まで、インディ・ジョーンズが身につけてきた数々の名品を探してみた。
6月30日から全世界同時公開されているのが、「インディ・ジョーンズ」シリーズの最新作『インディ・ジョーンズと運命のダイヤル』だ。シリーズ5作目で、主役のインディ・ジョーンズを演じるのは80歳を迎える名優ハリソン・フォード。
本作の主な舞台となるのは1969年。前作『インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国』(2008年)から12年後だ。アメリカとソ連の宇宙開発競争を背景に、インディが若き日に発見した秘宝「運命のダイヤル」を求めて、最後にして最大の冒険の旅に出るという物語。
今回もインディ・ジョーンズはいつもの装いで登場するが、彼が身につけた名品を紹介する前に、作品の成り立ちやインディ・ジョーンズを演じたハリソン・フォードについて紹介したいと思う。
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ルーカスとスピルバーグによって制作
まずはシリーズ作品を順に紹介する。1作目の『レイダース/失われたアーク《聖櫃》』が公開されたのが1981年。大ヒットを受けて2作目『インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説』が公開されたのが84年。ハリソンが名優ショーン・コネリーと共演した3作目『インディ・ジョーンズ/最後の聖戦』の公開は89年。そして2008年に公開されたのが、前述の『インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国』。同じ役者がこれほど長い間、主役を演じているシリーズ作品は極めて稀だろう。
本シリーズはジョージ・ルーカスとスティーヴン・スピルバーグという、現代の映画界を代表する2人の巨人のアイデアから始まったことは有名な話だ。『スピルバーグ』(筈見有宏著 講談社現代新書)によれば、そのきっかけとなったのは1977年のハワイでのこと。『未知との遭遇』の撮影を終えたばかりのスピルバーグと、『スター・ウォーズ』の公開を待つルーカスが一緒にディナーをとっていたらしい。「時は1930年代、主人公の名前はインディアナ・スミスというんだ」とルーカスは新作の構想をスピルバーグに明かした。
のちに「スミス」では語呂がよくないと「ジョーンズ」に変えられたが、ルーカスが思い描いたのは、1910年代にアメリカやフランスで盛んにつくられ、少年たちから人気を集めた「連続活劇」だ。短編映画を毎週連続で公開していくという形式で、現在の連続テレビドラマの起源とも言える。
一つのエピソードの中に手に汗握るシーンがあり、次を見たくなるような筋立て。このような活劇が、30〜40年代のアメリカでテレビ映画として復活したとも同書には書かれている。ルーカスの名前を不動にした「スター・ウォーズ」シリーズは、その宇宙版とも言える作品だった。
その後、ハワイ滞在中に『スター・ウォーズ』の歴史的ヒットを電話で知らされたルーカスは、その地球版、人間がヒーローを務める連続活劇をつくろうとスピルバーグを誘ったのだ。当初、インディ役にはトム・セレックの名前が挙がっていたが、彼がテレビシリーズの契約がまだ残っていたので起用できず、ハリソン・フォードにその役が回ってきた。
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一時は大工に。主演ハリソン・フォードの歩み
では、主役を勝ち取ったハリソン・フォードについて紹介しよう。
ハリソンは1942年7月13日、イリノイ州シカゴ郊外で生まれた。高校卒業後、ウィスコンシン州にあるリボン・カレッジに進学。専攻は英文学と哲学。しかし入学後、演劇に興味をもつようになったハリソンは退学し、本格的な俳優を目指してロサンゼルスに移住する。
ハリソンは66年にジェームズ・コバーン主演の映画『現金作戦』でデビューするが、端役で出演時間は1分程度だったという。その後も映画やテレビでは脇役としての出演が続いたので、独学で木工の技術を習得し、家のリフォームや家具つくりなどで生計を立てるようになる。
ところがこの仕事で幸運が舞い込んでくる。大工仕事を通じて知り合った映画プロデューサーの紹介で、ルーカスが監督した『アメリカン・グラフィティ』(73年)に出演する。またこの映画のプロデューサーを務めたフランシス・フォード・コッポラが74年に監督した『カンバセーション…盗聴…』でも役を得て、続いて『スター・ウォーズ』(77年)で主役のひとり、ハン・ソロ役に抜擢される。さらには『レイダース/失われた聖櫃』の主役を勝ち取るなど、アメリカン・ドリームそのものといったサクセス・ストーリーをその後もハリソンは歩んでいく。
そんなハリソンが挑んだスリル溢れる人気シリーズの主人公、インディ・ジョーンズが着こなした数々の名品について、次回の記事から全5回にわたって深く語っていこう。
#1 ブーツ(7月13日公開)
【詳細はこちら】インディ・ジョーンズの冒険の旅を支えた、メイド・イン・アメリカの逸品ーツ
#2 サファリシャツ
【詳細はこちら】インディ・ジョーンズの世界観を想起させる、バナナ・リパブリックのサファリシャツ
#3 フェドーラ帽
【詳細はこちら】インディ・ジョーンズがトレードマークのフェドーラ帽を被ったきっかけとは?
#4 ショルダーバッグ
【詳細はこちら】インディ・ジョーンズが秘宝を収めていたショルダーバッグについて読み解く
#5 ミリタリー風レザージャケット
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