見渡す限りの魚…テキサスで大量死、ビーチ一面を魚が埋め尽くす

  • 文:青葉やまと
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istock ※画像はイメージです

のどかなビーチが一変した。海外で大量死した魚が打ち上げられ、おびただしい数の死骸がビーチを埋め尽くす例が相次いでいる。アジアではタイで報告されているほか、アメリでも発生しているようだ。

米CNNは6月23日、「数千匹の魚の死骸がタイの海岸に打ち上げられた」と報じた。現場は南部チュムポーンにある、長さ約4kmのビーチだ。このビーチの様子を収めた写真では、青空の下に砂浜が広がるが、無数の白や銀色のかけらが砂をほぼ覆い尽くしている。その一つひとつが、打ち上げられ乾燥しはじめた魚の死骸だ。

専門家はロイターに対し、プランクトンの異常繁殖が魚の大量死を招いた可能性があると説明している。地元当局によるとプランクトンは年に1〜2回大量に繁殖することがあり、通常は2~3日で収まるという。

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ビーチを覆う多数の死骸、水際がわからないほど

事態は太平洋を超え、メキシコ湾に臨むアメリカのテキサス州でも起きている。米公共放送のNPRは6月12日、「テキサス州南東部の複数のビーチの海岸で先週末(6月10〜11日頃)、水中に十分な酸素がないために死んだ魚の山が出現した」と報じている。

現場のひとつとなったキンタナビーチ郡立公園の職員は、水中に溶解している酸素を示す「溶存酸素」の濃度が低下したため大量死に至ったと説明している。簡単に述べるならば、魚たちは窒息死した状態だという。温暖化により海の水温が上昇し、プランクトンなどが発生しやすい状況になったことで、生物間で酸素の奪い合いが起きるようだ。

米CBSニュースは、テキサスの件を報じた動画を公開している。スタジオに映された映像では、タイの件にも増して大量の魚がびっしりとビーチに打ち上げられている。魚の死骸のせいで海と浜の境界がわからなくなっているほどだ。波の動きにあわせて一面銀色のビーチの一部がうねっており、異様な光景となっている。

打ち上げられた魚のほとんどは、北米の海洋魚であり食用もされるメンハーデンと呼ばれるニシン科の魚だという。

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深刻な海温上昇…イルカやアシカも病気に

CNNは南カリフォルニアでも、有毒な藻が大量に発生していると報じている。この影響を受け数百というイルカやアシカが病気になったり死んだりしており、死骸が海岸に打ち上げられている模様だ。

世界で相次ぐこうした事例に、海洋の専門家らは危機感を募らせている。藻やプランクトンの異常発生は以前から発生していたが、地球温暖化の影響でより頻繁に起きるようになったという。

タイ・カセサート大学水産学部のThon Thamrongnawasawat副学部長はロイターに対し、「さまざまな自然現象、たとえばサンゴの白化現象やプランクトンの大量発生などは、何千年・何万年も前から自然に起こってきました。しかし、地球温暖化が起きると既存の現象が激化し、頻度も増加します」と警鐘を鳴らす。

オーストラリア・ニューサウスウェールズ大学の気候研究者であるサラ・パーキンス=カークパトリック氏は同記事の中で、オーストラリアやイギリスなど世界各地において、温暖化による海温上昇が起きていると指摘する。オーストラリアのグレート・バリア・リーフでは近年、珊瑚の大規模な白化現象が繰り返し発生している。

ビーチにひしめく魚の死骸は単にものめずらしいだけでなく、海中で起きている異常事態を告げるサインでもあるようだ。

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