創業の地・ヘルシュタインで息づく、質実剛健なオリスの時計製作

  • 文:篠田哲生
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スイスの山間の町、ヘルシュタインにあるオリスの社屋。ピンク色の外壁は街のシンボルであり、鉄道の車窓からも見える。

ヘルシュタインというスイス北部の小さな町で、良質な時計をつくり続ける実力派ブランドのオリス。その本社を訪問し、真摯な哲学に触れた。

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オリスの創業者ポール・カッティンとジョルジュ・クリスチャンは、超高級品が多かったスイス時計業界に風穴を開ける時計を目指していた。そのため、鉄道が通り、物資の運搬が容易に行えるヘルシュタインに拠点を構えた。写真中央に連なる建物がオリスの本社。

超高級品ではなく、あらゆる人々が手にできる時計を目指し、オリスは1904年に創業した。「ORIS」の名は、このエリアを流れる川から命名。表記しやすく、どの言語圏であっても発音しやすいのも重要だった。

高い品質と親しみやすい名前、そして価格にこだわったオリスは、 60年代の最盛期には年間約120万本の時計を製作し、スイス三大ブランドの一角となる。しかし70年代に入ると一転、クオーツショックで打撃を受け、存続の危機に陥る。そこで活躍したのが、現会長であるウーリック・W・エルゾックだ。

彼は、機械式時計への興味が再燃している波を察知し、機械式時計だけをつくることを決断する。それが結果として、現代の〝オリスの強み〞となった。コストを抑えつつ良質な機械式時計をつくるためには、針やケース、ダイヤルなどを製作する良質なサプライヤーと関係を深めることが大切だが、それは大胆なアイデアを素早くカタチにすることにもつながる。

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たとえば「プロパイロット アルティメーター」のカーボンケースは、チューリッヒのハイテク企業9T研究所と共同開発した。また「プロパイロットX カーミットエディション」は鮮やかなグリーンが特徴だが、この絶妙な色はダイヤルメーカーに依頼。

そして自社開発のキャリバー400は、理想と考えるスペックとして、耐磁性、5日間パワーリザーブ、10年保証を備えるが、これもパートナー企業に製作を依頼する。適材適所で仕事を振り分け、良質で手の届きやすい時計をつくるのだ。

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「プロパイロット アルティメータ」/機械式高度計を搭載した世界初のパイロットウォッチで、4時位置のリューズをゆるめて外気を入れて気圧を計測し、リューズを回して目盛りを調整し数値を読み取る。リューズから時計内部に湿気が入らないように、防湿構造となっている。ケース素材は9T研究所と共同開発したカーボン製。ケースの形状に合わせて一層ずつ重ねていくという特殊な技術を用いている。強靭でありながら素材のロスも少ないので環境にも優しい。自動巻き、カーボンケース、ケース径47㎜、パワーリザーブ約56時間、ファブリックストラップ、10気圧防水。¥880,000 
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「プロパイロットX カーミットエディション」/高品質を誇る人気シリーズ「プロパイロットX」をベースにしつつ、ザ・マペッツで人気のカエルのキャラクター、カーミットとコラボ。彼の身体の色に合わせた明るいグリーンが目を惹くが、6時位置のカレンダーは毎月1日のみカーミットが現れる。この“カーミット・デイ”は、月の始まりを笑顔でスタートするための、ちょっとした遊び心だ。搭載ムーブメントは自社設計のCal.400。耐磁性とロングパワーリザーブ、10年保証を備えており、ケースも軽くて着用感に優れる。自動巻き、チタンケース&ブレスレット、ケース径39㎜、パワーリザーブ約120時間、10気圧防水。¥660,000

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本社1階に新設されたショップでは時計やグッズを購入でき、カフェスペースの奥にあるメンテナンス工房も見学できる。ここをブランドとユーザーをつなぐためのオープンな場としているのも面白い。

オリスは良質な時計を通じて、豊かな時間を提供してきた。同時に、ユーザーフレンドリーであり続けたいとも考えている。そんな真摯な姿勢が、いまも創業の地に受け継がれている。

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社屋内にはミュージアムスペースもある。取材時は、オリスの歴史やCal.400についての展示があった。
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ショップでは時計の他に、クマのキャラクターを用いたトレーナーや地元産の菓子なども販売。
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訪問客もスタッフも使うカフェスペース。奥がメンテナンス工房に。

問い合わせ先/オリスジャパン TEL:03-6260-6876
www.oris.ch