「生きる」とは何か。アオイヤマダが語る、谷川作品の魅力とは?

  • 写真:下山智章
  • 編集&文:佐野慎悟
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70年を超えるキャリアの中で、詩集、絵本、翻訳、作詞など、あらゆる分野で数え切れないほどの作品を残してきた谷川俊太郎。13歳から101歳まで、各世代を代表するファンのことばから、いつまでも色褪せることのない、谷川作品の魅力の神髄に迫る。現在発売中のPen最新号『みんなの谷川俊太郎』から抜粋して紹介する。

Pen最新号『みんなの谷川俊太郎』。今年4月から開催されている『谷川俊太郎 絵本★百貨展』の見どころから、谷川俊太郎のインタビュー、自宅で見つけた思いが宿った品々などを掲載。また、10代から101歳までの俳優・作家・ミュージシャンらが、谷川作品について語ってくれた。谷川俊太郎の「ことば」をいま改めて見つめ直し、その魅力を未来へとつなげたい。

『みんなの谷川俊太郎』
Pen 2023年7月号 ¥880(税込)
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Aoi Yamada
2000年、長野県生まれ。高校進学を機に上京し、活動を開始。ファッション誌やミュージックビデオに
も多数出演。2020東京オリンピック閉会式にてソロパフォーマンスを披露。楽曲制作も行い、Spotifyにてアルバムを配信中。

時を経ていま心に届く、ストレートなことば

ダンサーのアオイヤマダは、谷川俊太郎の「生きる」をポエトリーラップというスタイルで歌う不可思議/wonderboy(ワンダーボーイ)の楽曲に合わせて、ダンスパフォーマンスを行った経験をもつ。当時高校を卒業したばかりの19歳だった彼女は、哲学的なテーマ性をはらむ谷川の詩と、どのように向き合ったのだろうか。

「あの時は、いきなり“生きているということ”って言われても、あまりに直球すぎてなんだか恥ずかしいし、まず自分自身が生きることに精一杯な状態だし、じゃあどうすればいいの?っていうのが、素直な反応でした。だからそこまで深読みせずに、それぞれのことばをあくまで直感的に捉えるようにしていました」

自分自身が迷路の中にいる時は、壁のすぐ向こう側に出口の扉があったとしても、その存在に気づけないことがほとんどだろう。

「その後、10代から20代になり、毎日毎日必死に走り続けていたら、自分のメンタルがとても不安定になって、漠然と死にたいとか、いなくなりたいとか、そういうネガティブな感情ばかりがあふれてきた時期がありました。そんな日々をなんとか乗り越えて、最近になってまた、4年ぶりに同じ曲でパフォーマンスをする機会をいただいたんですが、いま改めて『生きる』という詩に向き合ってみたら、前とは印象がまったく違っていることに驚かされました」

以前は直球すぎて受け止められなかったことばたちが、数年間自分の“生きる”をまっとうしてきた彼女の心に、今度はなんの抵抗もなく届くようになっていた。

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アオイヤマダさんがいま気に入っている作品は、アーティスト下田昌克の絵と作品に、谷川が全編ひらがなの詩を添えた『恐竜がいた』(スイッチ・パブリッシング)。

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『生きる』
谷川俊太郎 詩 岡本よしろう 絵
福音館書店 ¥1,430

1971年刊行の詩集『うつむく青年』に収録された、“生きているということ”というフレーズで有名な「生きる」を、2017年に岡本よしろうの挿絵によって絵本化した作品。

生きているということ
いま生きているということ
それはミニスカート

(「生きる」より)

「10代の頃はまだ、『詩』というものを自分とは遠いものだと思い込んでいましたが、“くしゃみ”とか“ミニスカート”とか、自分にも近しいことばが距離を縮めてくれて、ようやく自分自身と詩が重なったような感覚があります。いまなら“のどがかわく”という些細なことも、“アルプス”みたいな壮大なものも、この詩の中で挙げられているすべてのものが“生きる”に直結しているということを、素直に実感することができます。そうやって、いま目の前にあるすべてのことにちゃんと反応して生きていくことが大事なんだなって、いまはそう思っています」

これから30代になり、40代になり、人生のステージをそれぞれ乗り越えていくたびに、表現者アオイヤマダさんの“生きる”は、また少しずつ形を変えていくことだろう。

詩、絵本、歌、翻訳、心に響く”ことば”のすべて
『みんなの谷川俊太郎』
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Pen 2023年7月号 ¥880(税込)

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