“違和感”をつくり出す山口一郎の表現、「Ploom X」とのコラボに宿したクリエイションのカギ

  • 文:高野智宏
  • 写真:後藤武浩
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今回のコラボレーションについて「僕からJTさんに打診して、快諾いただいたことで実現しました」と振り返るミュージシャン、山口一郎。彼は「Ploom X」の“どこ”に魅力を感じたのだろうか。

個性を尊重する理念のもと、「TRULY UNIQUE」をコンセプトに掲げるJTの加熱式たばこ用デバイス「Ploom X」。この先進のデバイスが2022年に続いて、クリエイターとコラボレーションした限定フロントパネルを今年も発表した。今回コラボレーションしたのは、人気バンド「サカナクション」のフロントマンであり、主宰するプロジェクトでインテリアやファッション、そしてコーヒーまでも手がける、音楽界屈指の多才なミュージシャン、山口一郎だ。

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コラボのきっかけは、山口一郎からのアプローチ

こうしたコラボレーションの大半は企業からの呼びかけによるものだが、今回、実施に至るまでの経緯は意外にもその逆。なんと、山口サイドからJTにアプローチし、実現したのだという。

「昨年の試みを知り、『Ploom X』の愛用者である僕もやりたいなと。そんな時に、JTさん関連の取材があり、これ幸いと『僕にもやらせてもらえませんか?』とおうかがいしたのが、ことの始まりです」

「Ploom X」の使用歴はここ1年ほどという山口。「多彩なフレーバーも魅力だった」と言うが、そもそも「Ploom X」を使用するきっかけは、アートやインテリア、そしてプロダクトにも造詣が深い山口らしいものだった。

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インタビューは山口の自宅で行われた。配置されたインテリアや小物は、彼のこだわりがつまった逸品揃いだ。
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「Ploom X」の左右非対称なフォルムに「日本らしさを感じた」という。そこに“和の伝統工芸”の技術をあらたに表現した。

「インテリア好きで、なかでも “ジャパニーズ・モダン”のスタイルに影響を受け、自宅にも多く所有しています。昨年の休養期間、それらの家具の収集をきっかけに“日本らしさ”ということを掘り下げて考えるようになりました。そんな時に『Ploom X』と出合ったのですが、そのフォルムにも日本らしいニュアンスを感じて愛用するようになったのです」

山口が見出した「Ploom X」に宿る“日本らしさ”。それは左右非対称の造形にあるという。どういうことか。山口が続ける。

「たとえば多くの漢字が『へん』と『つくり』で左右非対称ですし、桂離宮を筆頭に日本庭園も左右対称の造りはありません。対して欧米では、左右対称の造形に美しさを見出す傾向にあると思う。ということは、日本らしさって“左右非対称の美学”なんじゃないかと。多分、それは自然の造形に近くて、『Ploom X』のなめらかなフォルムは、あたかも川の流れに揉まれて丸みを帯びた河原の石のようでもある。手にもしっくりきますし、そんなところも含めて気に入りました」

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相容れないものが融合し、“よい違和感”が生まれる

山口がプロデュースしたフロントパネルはふたつ。鼈甲を転写した「BEKKO」と、桂剥きされた樹皮を転写した「KATSURA」だ。いずれも日本が誇る伝統工芸をモチーフにしており、まさに“日本らしさ”にあふれ、粋を感じさせる個性的なアクセサリーとなっている。

「『Ploom X』は人間が作為的につくったプロダクトですが、そこには自然石のような左右非対称の日本らしさがある。ならば、フロントパネルにもそうした素材が合うのではないかとデザインのコンセプトを考案しました」

鼈甲も桂剥きも「もとの素材は自然が無作為に創造したもの。それを人間が美しさという観点のもと作為的に形成している」と言い、自然と人工物の融合にも「面白さを感じる」と語る。

「鼈甲ならキセルの筒やたばこ入れに使用されるなど、喫煙文化とも縁のある伝統工芸です。でも、こうした伝統技術やそこで使われている素材って身近過ぎることで、いまの日本では忘れ去られている。半面、海外ではその美しさが認識され、グローバルに評価されています。そんな日本の伝統工芸の素晴らしさを今回、改めて広く発信したいし、なにより僕が日々愛用したいと思っているのです」

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「僕はデザイナーではないので、自らグラフィックを描いたりはできない。今回のコラボでも音楽制作同様、鼈甲と桂剥きという“コンセプト”を提案したのです」
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鼈甲の幻想的な柄を転写した「BEKKO」(右)と、桂剥きした樹皮を転写した「KATSURA」(左)。自然がつくり出す美しさを宿したデバイスは、“よい違和感”を放つ。

このコラボレーションには、日々の楽曲制作をはじめ、山口のクリエイションにおいてカギとなる“感覚”もしっかりと宿されている。

「本来混じり合わない要素同士を融合させることで生まれる“よい違和感”こそが、人の琴線に引っかかると思う。僕は常に違和感を意識して楽曲を制作しているし、そのニュアンスを洋服やインテリアにも求めています。今回のコラボレーションも同じ。最先端のデバイスである『Ploom X』と、もとは自然素材であり伝統工芸品である鼈甲や桂剥きは本来相容れないものです。そんな両者を融合することでよい違和感が生まれると思ったし、実際、見事にユニークな違和感を創出してもらいました。原型をつくっていただいた職人さんには感謝しています」

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満足することのない、プロダクトへのこだわり

フロントパネルには、協力会社の職人が長年培ってきた技術が隠されている。「BEKKO」は鼈甲専門店の「大澤鼈甲」(東京都文京区)、「KATSURA」は明治40(1907)年に創業した越前箪笥製造の老舗、越前箪笥匠工房「小柳箪笥」(福井県越前市)が制作に携わり、両社が製造したオリジナルを特殊なプリント技術によってフロントパネルへと転写し、完成したもの。印刷ではあるものの、本物を彷彿する艷やかな質感には、山口も目を見張る。

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山口にとって喫煙は「創作の合間で作品を客観視するために必要な時間」だという。誰もがもっているそんなひと時を「BEKKO」と「KATSURA」がより豊かに彩ってくれることだろう。

「職人のプライドが質量として込められている感じがします。たばこって常に携帯するもので、それはメガネや時計と一緒です。また、自宅でもテーブルなど目の届くところに置くもの。つまり、喫煙道具であると同時に、インテリア的な性質ももっていると思う。いずれもデザインにこだわる道具であると思うし、『BEKKO』と『KATSURA』は単なる喫煙道具ではなく、愛用品として長く所有してもらえるものに仕上がったと自負しています」

テーブルに「BEKKO」と「KATSURA」を並べ、満足そうに頷く。しかし、最後に山口から驚きの言葉が発せられた。

「今回、自分が愛用したいと思うデザインをフロントパネルに施すことができました。なので今度は、より持ち続けたいと思えるような、たばこスティックのカバーをデザインしたい」。そう言って確信的に笑う彼の頭の中には、さらに“よい違和感”を生む個性的なデザインプランが既に浮かんでいることだろう。

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山口一郎(やまぐち・いちろう)●1980年、北海道小樽市生まれ。2007年、バンド「サカナクション」でメジャーデビュー。文学性を感じる歌詞と多彩なジャンルを融合した楽曲で唯一無二の存在感を示す。ほぼすべての楽曲の作詞作曲を手がける一方、主宰するプロジェクト「NF」では、さまざまなカルチャーが混ざり合う斬新なコンテンツを企画するなど意欲的な活動を行う。

「Ploom X CLUB」キャンペーン 
山口一郎とコラボレーションした限定フロントパネル「KATSURA」と「BEKKO」が抽選で当たるキャンペーンが、ウェブサービス「Ploom X CLUB」にて開催中。応募締切は2023年7月10日23:59まで。

https://www.clubjt.jp/bdj/