自分でなにか始めたい人を鼓舞する、 バンドマン5人が語った言葉

  • 文:瀧 晴巳(フリーライター)
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【Penが選んだ、今月の読むべき1冊】
『バンド論』

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山口一郎/蔡 忠浩/岸田 繁/曽我部恵一/甲本ヒロト 著 奥野武範 構成・文 青幻舎 ¥2,200

バンドってなんだと思ってますかと訊かれて、甲本ヒロトは答える。

「まずは、『憧れ』ですね」

それはいまもそうですかと訊かれて、言う。

「そうです。そうです。憧れです。いまも。ロックンロールに憧れています。バンドの人になりたかったです。うん、ぼくは」

どこを切っても「甲本ヒロト」な言葉ばかりで、上っ面じゃないその人を丸ごと生きている人の言葉に触れると、曇っていた景色がクリアになる。覚醒する。音楽で生きていくっていうのは、つまり掛け値なしの自分になることなのかもしれない。

サカナクションの山口一郎、bonobosの蔡忠浩(サイチュンホ) 、くるりの岸田繁、サニーデイ・サービスの曽我部恵一、そしてザ・クロマニヨンズの甲本ヒロト。5つのバンドのフロントマンが「バンドとはなにか?」について語ったのがこの本、『バンド論』だ。単なる音楽論とも違う。自分の音を鳴らすこと、誰と鳴らすのか、どんなふうに鳴らすのか、どうしていまもそれをやり続けているのか。それぞれの答えの中に、読む人のいまに刺さる言葉を見つけることができるだろう。

「ようするに、その人にできることしか、できない。その集合体が『バンド』なんです」と曽我部恵一は言う。スリーピースバンドはバンドとしては最小限の人数だから、バンドとしての最初の地点に立っている。3人しか人がいないってことは、ライブではレコーディング通りにできなかったりするが「その足りなさがおもしろい」と。

自分を起点にして、始まるものがある。それは、多分いまだってあって、もう一度最初の音を鳴らすことから始めてみたっていい。ひとりではたどり着けない場所で、まだ見たことのない景色を見てみたい。そんな気持ちを鼓舞してくれる一冊だ。

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※この記事はPen 2023年6号より再編集した記事です。

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『バンド論』

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