古着屋さんに行くと、決まってスウェットの山に直行する。お目当ては「チャンピオン」。うず高く積まれたスウェットの頂から、順番にめくっていく。気になる色やプリントを見つけた際は抜き出し、タグを見てサイズと年代を把握する。最後に値札を確認して、ため息をひとつ。
気を取り直し、隣の山々に目を向ける。今度は“リバース”ではないスウェットを掘る。探しているのはアニマル・プリント。ウマ、ワニ、オオカミ、シカ……。
こんなふうに普段、東京の古着屋を徘徊している。探す対象は季節やその時の気分で変わる。いま、人知れず気になっているのが「L.L. Bean」。ロゴを見てから反応することもあれば、いいなと思って手にとった古着が「L.L. Bean」のこともある。とかく高騰しがちなUSAブランドにあって、まだ買いやすい価格帯にいる。いろいろ選べて、買えて、幸せだ。
映画『大阪古着日和』を通じて、大阪の古着屋さんを巡る楽しさも知った。きっと福岡や名古屋、仙台といった都市にも、比肩する面白さがあるに違いない。聞けば、徳島や熊本もディープな古着の世界が広がっているらしい。全部、行ってみたい。
『東京古着日和』から飛び立ち、『大阪古着日和』に着地して、改めて思ったことがある。
日本の古着文化は世界一。
僕は世界の古着事情に精通しているわけではないけれど、質量ともに優れた、これだけの古着屋さんが集結する街、国があるだろうか。今回の映画は、世界に冠たる日本の古着カルチャーの、ごく一部にすぎない。願わくば日本中の古着屋を訪ね、映像に残したい。
『大阪古着日和』という映画には“古着”以外にもうひとつ、太い柱がある。それは『東京古着日和』から続いているもので、ひと言で表すなら「お出かけ」だ。
よく晴れた日。風通しのいい街をぶらつき、気になった店があればのぞいてみる。帰り道は買い物袋を提げている。作品ではそこにあるムードを大切にし、「古着日和」と「お出かけ気分」が、繋がってくれたらいいなあと思ってきた。
映画をつくったのは初めてだ。映画づくりは面白すぎて楽しすぎて、勢いがつき、果ては本までつくった。その名も『AFTER OSAKA VINTAGE DIARY 大阪古着日和の、そのあとで』。映画では監督をしているが出自は雑誌の編集者。映画づくりの2年間を、言葉と写真で巡ってみようと試みた。98分の映画と400ページの本を、楽しんでいただけたらと思う。
夏までは『大阪古着日和』のことで、てんやわんやだろう。秋が訪れる頃には次の映画の準備をはじめるつもりだ。ふたつほど企画がある。ご興味のある方は気軽にお声がけください。一緒に、映画をつくりましょう。
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スタッフ全員が癒やされた、森田さんの言葉
公式サイト:https://osakavintagediary.com/
公式Twitter:https://twitter.com/TYOvintagediary
公式Instagram:https://www.instagram.com/furugibiyori/
谷山武士
山口県生まれ。ドキュメンタリーからドラマ、ファッションから食と、ジャンルを横断して活躍。映像作品に『東京古着日和』、著書に『パイナップルぷるぷる本』『くるま』などがある。二玄社にて雑誌『NAVI』編集記者、雑誌『助六』編集長を経て、2008年に株式会社ブエノ(TT BOOKS & FILMS)を設立。現在は映像制作を中心に活動。雑誌や書籍の編集者出身という映像作家としては異色の経歴の持ち主。