ついに販売が始まった第3世代の新型レンジローバー スポーツ。旗艦車種のレンジローバーよりコンパクトに、カジュアルに乗りたい層に待望されていた人気車種ですよ。結論からいうと、先行して発表された新型レンジローバーのよさが、ミドルサイズSUVのレンジローバースポーツにも反映されているのね。
第3世代の特徴であるホイップのような濃密さをもった足回りは、レンジローバーとまったく同じ方向。その上でよりコンパクトな車体を反映して機敏に動き、サスペンションは硬めに味つけされている。なるほど。都市生活者のためのプレミアムSUVであり、狙いどころはわかりやすい。
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レンジローバーが高速道路で湖面をすべるボートのような足回りで、ドライバーにため息をつかせる女王の貫禄を見せるとするならば、レンジローバー スポーツは都市生活者の移動にリズムを与え、フロントウィンドー越しの光彩にひときわコントラストの強いフィルターをかける。
首都高やビルの谷間を颯爽と走りつつも「貴方が自分自身へ帰る場所をつくりました」と納得させるクラッシーな居心地のよさがあるのね。この辺のユーザー設定のつくり込みのすごさは後述するとして、まずはその走りですよ。
3リッターのハイブリッド付直列6気筒ディーゼルターボは低速からの中間加速が際立っていて、1500回転付近からぐいぐいトルクを発揮する。よく回るし、都市のストップ&ゴーの多い走りでとくにそのよさを際立たせる。驚くべきはモーター駆動とノイズキャンセレーションがあいまった静音処理の細やかさで、ディーゼルと聞いてほとんどの人が驚くレベル。本国にはV8モデルもあるし、来年には完全なEVモデルが発表される予定だけど、むしろこのディーゼルハイブリッドを選択しておいて後悔はないはず。静かさを備えながら踏んで楽しい、快楽値の高いパワートレインなんだ。
その足回りも都市生活におけるストップ&ゴーの多い運転に照準をあわせつつ、峠で走るとその勘所が見えてくる。坂の上りでは速度を上げるにつれ、上屋を揺らしてドライバーに快適な速度域を教えてくる。下りは揺れを抑えてカーブの遠心力を斜め後方に逃がすように姿勢を保つ。
その上で4つのサスペンションはよく動き、狙ったラインを確実にトレースする。これが最初は気づかなかったものの、正確無比なハンドリングが快適な運転の裏打ちをしていることに気づかされるわけ。
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この控えめなポテンシャルこそが新型モデルの肝におもえた。アンダーステイトメントはもともとブランドに備わっているものだけれど、どこもかしこも進化していて唸らされっぱなし。手抜かりもなし。
例えば先代まではオフロード性能の高さゆえに、舗装道で走ると独特の居心地の悪さがあったんだけど完全に解消されているし、内外装もふくめて都市生活者それも徹頭徹尾、クラッシーな品のよさを求めるユーザーに向けてつくられている。
そんなレンジローバーは他のブランドにはない、なにかを追求しているように思えた。
この到達点にして原点回帰でもありうるキーワードとは、つまり「英国王室御用達」ってことに他ならないんじゃないか。ロンドンなら「フォートナム&メイソンに買い物に行ってください」という話だし、日本でいえば「日本橋高島屋で買い物をし、帝国ホテルでローストビーフを食べてください」という話かも(笑)。具体例は半分冗談だけど、とにかく客層である保守的アッパークラスが「クルマになにを求めるか」を忠実に反映したのが、今回のモデルチェンジの理由だと思う。
ただしワイルドなランドローバー味(み)は影をひそめた。SUVが市場の主力車種になったことで、高級車メーカーがこぞってプレミアムSUVを販売しているマーケットだし、ランドローバーにはディスカバリーの他に大型SUVであるディフェンダーもラインアップされている。
だからこそレンジローバーのラインアップは、明快に「こっちでいく」と宣言しているんだ。「砂漠のロールス・ロイス」と呼ばれた時代は、はるか昔のこと。今どきのレンジローバーは、都市でこそ多くのプレミアムSUVと渡り合っていかなきゃいけない。その意味で、都市のライフスタイルに照準をしぼったレンジローバー スポーツは大きな強みがあるはずだ。
レンジローバー スポーツ
サイズ(全長×全幅×全高):4960×2005×1820㎜
排気量:2993cc
エンジン:直列6気筒ターボチャージド・ディーゼル
最高出力:300ps / 4000rpm
最大トルク:650Nm / 1500-2500rpm
駆動方式:4WD(フロントエンジン4輪駆動)
車両価格:¥14,570,000(税込)
問い合わせ先/ランドローバーコール
TEL:0120-18-5568
www.landrover.co.jp