彼女はなぜ#MeTooに口をつぐむのか?…ブルック・シールズがインタビューで見せた涙の理由

  • 文:中川真知子
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子ども時代に性的被害にあった人たちは、大人になって告発できるのだろうか。元子役のセレブは涙を浮かべて「『#MeToo』に関わりたくなかった」と語った。

これは、先日放送された人気トークショー『ドリュー・バリモア・ショー』での一面。ホストのドリューが、ブルック・シールズに「#MeToo」運動が始まった頃の心境を尋ねた際の様子だ。

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12歳で娼婦の役を演じたブルック・シールズ

「#MeToo」運動は2017年、映画プロデューサーのハーヴェイ・ワインスタインが長年にわたって女優たちにセクシャルハラスメントを行っていたことを告発したニューヨーク・タイムズの記事がきっかけとなって始まった。被害者の声は次第に増え、セレブの中でもグウィネス・パルトロウやユマ・サーマン、ジェニファー・ローレンス、レディ・ガガなどが賛同し、自身のハラスメント経験を話している。

ドリュー:「『#MeToo』運動についてどう受け止めていた? 私は参加する準備ができていないと感じていた。幼い時に不適切なことをたくさん経験したから。自分は一連の出来事の一部なのか、自分はどこに属するのか。あの頃の私たちはまだ子どもだった。あなたは経験したことを話せる段階にあったと思う?」

現在48歳のドリュー・バリモアは、生後11ヶ月から芸能界で働いてきた。1982年公開の『E.T.』で高い演技力を評価されたドリューは、一躍有名子役として名を馳せるものの、私生活で壮絶ないじめを経験し不登校になった。10代になる前からタバコと酒に手を出し、12歳でコカインにも手を染めている。リハビリセンターに入退院を繰り返し、社会性を身につける機会を失ったドリューは、派手な生活でタブロイド紙を沸かせてきた。ハリウッドの悪い面を嫌というほど見てきたであろう彼女は、「#MeToo」運動で声を上げることを期待されていたひとりであることは間違いない。だが、彼女は「準備ができていなかった」と語る。

水を向けられたブルック・シールズは「いいえ」と否定した。続けて「自分の経験をどう受け止めればいいのかわからずに混乱した。罪の意識を感じさせられたし、同時に被害者としての自分を非難した」と目に涙を浮かべた。

ブルックは幼い頃から性的なシンボルのレッテルを貼られてきた。彼女の芸能界デビューは生後約11ヶ月の頃。12歳で娼婦の役を演じ、15歳で主演した映画『青い珊瑚礁』(1980)では無人島で従兄弟と恋仲になり出産する役を務めた。『青い珊瑚礁』は、露出や性的なシーンが多く、当時14歳だったブルックが演じたことを問題視する声もあった。

彼女は学業に専念するために一時的に芸能界から離れた。そしてプリンストン大学を卒業後に復帰するために知人男性と会った際に、その男性からレイプされている。この話はサンダンス映画祭で上映された『Pretty Baby: Brooke Shields(原題)』というドキュメンタリーで初めて語られたもの。彼女は、知人男性と酒を飲んで部屋に行ってしまった自分を責め、それがレイプではなかったのだと思い込もうとしたそうだ。被害者である事実を受け入れられなかったらしい。

ドリューとのインタビューでは「私たちはとても若かったし、そういった環境が当然だとされていた。残念だとも思えなかったし、そもそも自分がどの立場にいるのかわからなかった。理解が追いつかず『#MeToo』運動の件で声をかけられても、自分は関わりたくないと言ってしまった」と話している。

「私たちはとても若かったし、そういった環境が当然だとされていた。残念だとも思えなかったし、そもそも自分がどの立場にいるのかわからなかった。理解が追いつかず『#MeToo』運動の件で声をかけられても、自分は関わりたくないと言ってしまった」と話した。

ドリューはブルックの言葉に強く同意した。彼女も「#MeToo」運動に積極的に参加しなかったひとりだからだ。だが「運動が起こったことは嬉しかった」と言う。

「あまりにも多くのグレーでおかしな経験をしてきたから、何が間違っているのかすらわからなかった。大人の視点になれば、いや、娘をもつ母親の視点からだったら間違いだと言える」とドリューは続けた。ブルックは、「娘をもつ母親」というキーワードに強く反応して同意した。

だが、ふたりとも「当事者としてはわからない」を強調した。

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子役への性被害問題の難しさ

ドリュー・バリモアもブルック・シールズも、これまでのキャリアと現在のポジションを考えれば、真っ先に「#MeToo」運動に参加してもおかしくない人物だと考えられていた。だが、当事者としての彼女たちは混乱し、己を責め、口をつぐんだ。

グレーで混沌とした芸能界だが、彼女たちにとっては育った環境だ。それに運動に賛同することは、自分たちが被害者だったと認識を改めることになる。それは想像以上に苦しみを伴うプロセスなのだろう。たった2分程度の切り抜き動画だが、これだけ見ても芸能界における子役への性被害が単純な問題でないことがわかる。

同時に、これだけの発言をインタビューで引き出せたのはドリューが当事者のひとりであるだけでなく、高い共感力を持っているからだろう。「#MeToo」運動に積極的に参加していない立場だったとしても、被害を訴えるのが想像以上に複雑な側面を持っていると世間に知らしめた功績は大きいと言える。

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【動画・画像】彼女はなぜ#MeTooに口をつぐむのか?…元子役セレブがインタビューで見せた涙の理由

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