1. BREITLING(ブライトリング)
ナビタイマー B01 クロノグラフ 43
サンバースト仕上げを施したシルバーの文字盤が、生粋のパイロットウォッチらしいソリッドな凛々しさを見せるクロノグラフ。12時位置にシンボリックなAOPA(国際オーナーパイロット協会)のウイングマークを立体的に掲げる一方で、デイト表示は6時位置にある12時間積算計の黒バックの中に埋め込むなど、均整の取れた反転色のシンメトリーを描いている。
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2. PARMIGIANI FLEURIER(パルミジャーニ・フルリエ)
トンダ GT クロノグラフ
三角錐を敷き詰めるクル・トリアンギュレール意匠のギョーシェを施したシルバー文字盤。アウトサイズデイトに加えて、月表示をスモールセコンドに仕込んだアニュアルカレンダーでもある。コインエッジ模様のベゼルやティアドロップ状のプッシュピースなど、クラシカルな意匠と機械式の超絶技巧を凝らし、それでいてスポーティに魅せる手腕はさすが。
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3. GIRARD-PERREGAUX(ジラール・ペルゴ)
ロレアート クロノグラフ
シルバー文字盤の全面に四角錐のクル・ド・パリ模様のギョーシェを施す一方で、サブダイヤルの同心円模様は広めに間隔を取り、モダンな印象を添える。時分針・秒針・アワーインデックスには伝統的な青焼きのブルースチールを採用しつつも、白の蓄光塗料がスポーティさを強調する。ブレスレット一体型のフォルムと八角形ベゼルが特徴の「ロレアート」の中でも、静と動のバランスが際立つ逸品だ。
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スポーツウォッチ全盛の時代に他人とかぶらない自分だけの一本を探すなら、シルバー文字盤に黒のサブダイヤルを備えた、3レジスターのクロノグラフが良策だ。条件の一つひとつは人気の意匠だが、すべて揃えようとするとハードルが不思議なほど高くなる。
理由のひとつが、シルバーダイヤルのクロノグラフが世にどれだけあるのか、ということだ。シルバーの文字盤はポケットウォッチの時代から伝統的に使われてきたせいもあって、スポーツウォッチに起用するのは、なかなかに勇気がいるのだろう。ましてやギョーシェ装飾を施したヒストリカルなダイヤルに黒のインダイヤルを合わせるのは、大胆不敵なデザインといってもいいのかもしれない。
これがホワイトのダイヤルであれば、話はまったく違ってくる。いわゆる「パンダ」と呼ばれるカラーリングは1960年代に流行し、近年多くのブランドからリバイバルされている。通常は白文字盤のカテゴリーに含まれることも少なくないシルバーだが、この分野でだけは厳密に峻別されていて、シルバーは“非パンダ”だ。
さらに最近では、スモールセコンドと30分計だけをインダイヤルに備えた、クラシカルな2レジスターの勢力が強い。3レジスターを堅守するのは、レーシング・クロノグラフに代表される「本気の計測機器」志向のブランドだ。
スポーティな実用性と、クールで洗練されたシルバー文字盤を現代的に昇華したクロノグラフは、その希少性とともに、唯一無二の魅力を放つのである。
並木浩一
1961年、神奈川県生まれ。時計ジャーナリスト。雑誌編集長など歴任し、2012年より桐蔭横浜大学の教授に。
※この記事はPen 2023年5月号より再編集した記事です。