「レインボーウォッシュ」とは?「見せかけ」ではないLGBTQ+コミュニティを反映したビジュアルコミュニケーションの重要性【後編】

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    「レインボーウォッシュ」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?「グリーンウォッシュ」や「SDGsウォッシュ」という言葉は、環境保護を装っているように見せかけながら、実際にはそうではない、表面的な企業や商品などを批判するために用いられます。同様に、「レインボーウォッシュ」も、企業がロゴや商品などに虹色を使ったりして、LGBTQ+のコミュニティに対する支援を装うことを批判する言葉です。この言葉は、欧米を中心に使用されるようになっています。

    そこで今回は、「見せかけ」ではないLGBTQ+コミュニティを反映したビジュアルコミュニケーションの重要性について考えてみたいと思います。

    前編はこちら

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    消費者から支持される企業やブランドとは

    ここで、消費者行動に影響をあたえる要素について考えてみましょう。

    あなたが商品やサービスを購入する際、何が最も重要な要素でしょうか? ゲッティイメージズが定期的に実施している「VisualGPS」というビジュアル市場調査によると、消費者はLGBTQ+を含む様々なコミュニティに配慮した企業やブランド、そして顧客や従業員に対して誠実で透明性のある対応をする企業やブランドに対して、より信頼を寄せる傾向があることが分かりました。

    とくに若い世代にとっては、こうした価値観が最終的な購買意思決定において重要なファクターとなることが考えられます。

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    1454148695, Koh Sze Kiat, Getty Images

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    Kantarの調査によると、アメリカではLGBTQ+コミュニティは約1.4兆ドルの購買力を持っているとされています。

    さらに、LGBTQ+およびそのアライの人々は、LGBTQ+の人々を反映させた広告を展開するブランドから商品を購入する可能性が高く、一方でLGBTQ+コミュニティを支援しないブランドの製品を避けるとともに、反LGBTQ+のブランドに対してはボイコットする可能性も高い事も、この調査結果は示しています。

    これは、社会的にもLGBTQ+コミュニティへの理解や支援が進んでいることを反映しており、企業やブランドがLGBTQ+コミュニティに配慮した取り組みを行うことがビジネス上のメリットにもつながる可能性があることを示唆しています。

    前編で述べた通り、ポップカルチャーや身近な人々との接触などにより、LGBTQ+コミュニティとの接点が増え、消費者行動にも変化が生じていると考えられます。そのため、企業やブランドとして、消費者の期待に応えるために、このコミュニティの本質を描くビジュアルコミュニケーションを行うことが大切になってくるわけです。

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    1440056580, bernie_photo, Getty Images 

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    「見せかけ」にならないビジュアルコミュニケーションとは

    LGBTQ+コミュニティを形成するさまざまな属性、アイデンティティ、人種、年齢層などを正確に理解することがますます重要になっている中、消費者は、企業やブランドのLGBTQ+コミュニティに対するマーケティングでのインクルーシブな姿勢だけでなく、それが企業文化にも反映されているかどうかを見極めることも重要です。

    たとえば、企業やブランドがLGBTQ+の消費者や従業員に対してどのような積極的な取り組みをしているか、また現実味があって共感を呼び起こすようなビジュアルを採用しているか、そういったポイントを確認することも重要だといえます。

    さらにビジュアル表現で言うと、広告や企業サイトなどで、多様な家族構成や日常生活が描写されているかどうかなども重要なチェックポイントに挙げられると思います。ちょっとしたシンボルでLGBTQ+フレンドリーであることを支持する「レインボーウォッシュ」的なビジュアル表現よりも、こうした表現の方が大きな可能性を秘めているのではないでしょうか。また、今まで表象されてこなかった現実味のあるビジュアルを目にすることで、消費者の行動を刺激するだけではなく、LGBTQ+コミュニティやアライを超えた、さらに多くの人々の受容や理解を促すことができるといえます。

    また、今まで表象されてこなかった現実味のあるビジュアルを目にすることで、消費者の行動を刺激するだけではなく、LGBTQ+コミュニティやアライを超えた、さらに多くの人々の受容や理解を促すことができるといえます。

    たとえば、さまざまな家族の形や日常生活を描写することが挙げられます。「虹」シンボルで、単にLGBTQ+フレンドリーであることを支持するだけのビジュアル表現よりも、こうした表現の方が、大きな可能性を秘めているのではないでしょうか。

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    LGBTQ+の人々をリアルに描くビジュアル表現とは

    そこで、これから先LGBTQ+コミュニティを描くビジュアル表現について考える際に、以下の3点に着目することをおすすめします。

    ①仕事や日常生活の中で、多様なシナリオや役割で活躍するLGBTQ+の人々を映し出していますか?

    ②LGBTQ+の人々が、コミュニティ内外で共有する経験を映し出していますか?

    ③トランスジェンダーやノンバイナリーなど、さまざまなアイデンティティを持つ人々を表象していますか?

    職場や家庭、遊びといった様々なシーンの中で、同僚や家族、友人と過ごす日常生活における、リアルなLGBTQ+コミュニティをビジュアルで目にすることで、本当の意味で人々が理解し合い、価値観を共有できる社会へと前進できるのではないでしょうか。

    ゲッティイメージズがCitiと連携し作成したビジュアルガイド「DE&I Imagery Toolkit」においても、真のLGBTQ+コミュニティを反映したビジュアルコミュニケーションの重要性について触れているので、ぜひ参考にしてみてください。

    連載記事

    遠藤由理

    Getty Images/iStock クリエイティブ・インサイト マネージャー

    ビジュアルメディアの学歴を持ち、映画業界に従事。2016年からはGetty Images/iStockのクリエイティブチームに所属。世界中のデータや事例をもとに、広告におけるビジュアルの動向をまとめた「Creative Insights」を発信。多くのクリエイターをサポートしながら、インスピレーションに満ちたイメージ作りを目指している。

    遠藤由理

    Getty Images/iStock クリエイティブ・インサイト マネージャー

    ビジュアルメディアの学歴を持ち、映画業界に従事。2016年からはGetty Images/iStockのクリエイティブチームに所属。世界中のデータや事例をもとに、広告におけるビジュアルの動向をまとめた「Creative Insights」を発信。多くのクリエイターをサポートしながら、インスピレーションに満ちたイメージ作りを目指している。