「レインボーウォッシュ」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?「グリーンウォッシュ」や「SDGsウォッシュ」という言葉は、環境保護を装っているように見せかけながら、実際にはそうではない、表面的な企業や商品などを批判するために用いられます。同様に、「レインボーウォッシュ」も、企業がロゴや商品などに虹色を使ったりして、LGBTQ+のコミュニティに対する支援を装うことを批判する言葉です。この言葉は、欧米を中心に使用されるようになっています。
そこで今回は、「見せかけ」ではないLGBTQ+コミュニティを反映したビジュアルコミュニケーションの重要性について考えてみたいと思います。
日本社会全体で理解を深め、行動する
今年も開催される『東京レインボープライド』(主催:特定非営利活動法人 東京レインボープライド) は、性的指向や性自認に関わらず、すべての人が自分らしく生きられる社会を目指すイベントです。
このような、LGBTQ+コミュニティを支援する様々な取り組みが行われている中、最近日本では、ポップカルチャーや、身近にいるLGBTQ+アイデンティティを持つ人々を通して、LGBTQ+コミュニティに触れる機会が増えているように感じます。しかし、政府関係者の差別的な言動や、G7先進国の中で唯一、差別禁止法や同性婚を認める法律が整備されていないなどの課題もあります。
個々の意識が変化している今だからこそ、ビジュアルコミュニケーションを通して社会全体で理解を深めて行動していく事が必要です。
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LGBTQ+コミュニティの人を描いたビジュアルは1%にも満たない
LGBTQ+コミュニティを描いたビジュアルといえば、どのようなイメージが浮かびますか?
過去10年間、ゲッティイメージズで人気があったビジュアルを分析すると、企業やブランドの広告ビジュアルの中で、LGBTQ+の人々を描いたビジュアルは、全世界で1%未満しかないことが分かりました。とくに、トランスジェンダー、ジェンダーフルイド、ノンバイナリーの人々は十分に表象されていません。また、日本と世界共通で、プライドパレードやロマンチックなシーン、さらにレインボーフラッグなどの「虹」シンボルがよく使われていました。さらに、若年層の白人、黒人、多民族を中心としたキャストが主流で、その他の世代やアジア系の人々が表現されていない傾向もあります。
世界人口の5%がLGBTQIA+であるとされていますが、実際の広告ビジュアルでは正確に表現されていないと感じます。さらに日本においては9%近くの人がLGBQ+を自認していることも考えると、さらに多様なビジュアル表現が必要だと思われます。
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日本では依然、「虹」シンボルの描写が6割以上
直近1年間のゲッティイメージズにおけるビジュアルトレンドを分析すると、世界的にはLGBTQ+の人々が日常生活の中で描かれているビジュアルが人気を集めています。それに対し、日本特有の傾向があることも興味深いです。
具体的には、LGBTQ+コミュニティを実際に捉えた写真やビデオではなく、イラストが人気であり、また「虹」のシンボルを多用していることが特徴です。世界的には「虹」が用いられているビジュアルは全体の30%であるのに対し、日本では60%以上と高い割合になっています。
日本の企業やブランドは、LGBTQ+コミュニティをビジュアルに反映させたいと思いながらも、どのように表現していいのか分からなかったり、「炎上」することを恐れたりといった、日本特有の理由も背景にあるのかもしれません。
<後編に続く>
Getty Images/iStock クリエイティブ・インサイト マネージャー
ビジュアルメディアの学歴を持ち、映画業界に従事。2016年からはGetty Images/iStockのクリエイティブチームに所属。世界中のデータや事例をもとに、広告におけるビジュアルの動向をまとめた「Creative Insights」を発信。多くのクリエイターをサポートしながら、インスピレーションに満ちたイメージ作りを目指している。
ビジュアルメディアの学歴を持ち、映画業界に従事。2016年からはGetty Images/iStockのクリエイティブチームに所属。世界中のデータや事例をもとに、広告におけるビジュアルの動向をまとめた「Creative Insights」を発信。多くのクリエイターをサポートしながら、インスピレーションに満ちたイメージ作りを目指している。