ヨット・デザイナーのアラス・カザールは、ネイティブ・アメリカンの神話からインスピレーションを得て、スーパーヨット(高級大型クルーザー)のコンセプト「ワキニヤン(Wakinyan)」をデザインした。
カザールはこのヨットを、グラスファイバーと強化ガラスで覆った。船を取り巻くこれらの素材は、世界が金色に輝く日の出直後や日没前に、金色のアクセントという視覚的効果をもたらす。その贅沢な陰影が、降り注ぐ自然光だけを反射するからだ。
このトリマラン(三胴船)には、アルミニウムの外装も使われている。そのデザインは、遠方や上空から見ると、鳥の大きなくちばしに似ている。あるいは、飛行の準備が整い、いまにも飛び立とうとする生き物も思わせる。
まさに、ラコタ語の「Wakinyan」が意味するサンダーバード(北米神話で、雷鳴を招くとされる巨鳥)や「雷神(雷の精霊)」が思い起こされるイメージだ。
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「ワキニヤンは、私が神聖に思っている鳥を、船の形に融合させたものです」とカザールは言う。このスーパーヨットは、長さ130m、ビーム(甲板下に船体横方向に配置される骨材)の幅は26m、全体の幅は36mある。
「最終的な外観には、本当に満足しています。流線形で、ミニマルかつ現代的な外観を完成させました。この『水に浮かぶ鳥』の船体は、水中翼船技術に基づいており、高速で移動できますが、乗客には快適で穏やかな乗り心地をもたらします」
グラスファイバーと強化ガラスによる、繊細で芸術的なデザインにより、ワキニヤンは目立つ船というよりは、周囲に溶け込む姿になっている。海の波や、周囲にあるものを反射するので、このスーパーヨットの白く輝く屋根がなければ、その姿を見た人々は、目に見えない船が航行していると思うかもしれない。
ワキニヤンには、完全電気式の水中翼船技術が搭載されており、32ノット(約59km/h)の最高速度を出すことができる。
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グラスファイバーと強化ガラスに覆われた船
アラス・カザールは、デッキをすべてグラスファイバーと強化ガラスで覆うことを選んだ。内部に自然光をたっぷり誘い込み、360度に近い眺めが得られると期待してのことだ。
外装の柔らかく、優雅で、周囲に溶け込む感覚は、内装のデザインにも引き継がれている。家具や設備は、雲のような白の色調で統一されており、木の色合いや、控えめなベージュのアクセントが、さらに雰囲気を和らげている。こうしたデザインがファジーな雰囲気を醸し出しており、乗客たちは、静かで落ち着いた暖かさに浸ることができる。
「ワキニヤンは、船内で楽しむ場合も、外から見るだけの場合でも、人に穏やかでリラックスした感じを得てもらうことを目的としています」と、カザールは述べる。
船尾にあるプールと、船内のスパなどの設備は、シンプルかつ贅沢だ。ワキニヤンの宿泊設備には、専用の主寝室1つを含めた5つの大きなベッドルームがあり、休暇を過ごす家族連れも、十分に満足して利用できそうだ。
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プロジェクト情報:
名称:ワキニヤン
設計者:Aras Kazar
※この記事はdesignboomからの提供です。
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【画像】「まるで鳥の大きなくちばし…」ネイティブ・アメリカンの神話から着想を得た、スーパーヨット“ワキニヤン”
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プロジェクト情報:
名称:ワキニヤン
設計者:Aras Kazar