イッタラからアルヴァ・アアルト生誕125周年を記念し、フラワーベースとボウルが特別に復刻。その魅力を紹介しよう。
フィンランドを代表する建築家・デザイナー、アルヴァ・アアルト(1898〜1976年)。生涯を通じて、建築、家具、照明、プロダクトと幅広い領域で活動した彼だが、1930年代は妻のアイノとともに特にガラス器のデザインに注力した時代でもある。
アアルトのこうした動きの背景には、当時のフィンランドの社会情勢の変化も色濃く影響している。当時のフィンランドは、急速な都市化や個人住宅の増加に従い、家庭でのガラス製品の需要が拡大。各メーカーは新たなデザインを渇望していたのだった。
そうしたなか、36年に開催されたカルフラ・イッタラ・ガラスデザインコンペティションで、アアルトは自身の建築にも通ずる波状のラインを纏った、高さや大きさの異なる花瓶やボウルのシリーズを発表。その翌年、これらがパリ万博で自身が設計したフィンランド・パヴィリオンに展示され、世界に名を知らしめた。さらに彼は形を進化させ、ヘルシンキのレストランに花瓶「サヴォイ・ベース」を提供。この花瓶は「アルヴァ・アアルトコレクションベース」として現在も販売され、イッタラとともに歴史を刻み続けている。---fadeinPager---
長年アアルトとの協働を行ってきたイッタラは今年、生誕125周年を記念し、36年に発表したモデルからアルヴァ・アアルトコレクションのフラワーベースとボウルを特別に復刻した。
「No.9754」と呼ばれたフラワーベースは、オリジナルがもつ独自の風合いや色みをていねいに再現しながら、現代のライフスタイルに合うようにリサイズ。ベース250ミリとしてフィンランドの工場で、昔ながらの木型を使用した手吹きによりつくられたもの。器の表面についた繊細な凹凸が見る角度によって多様な表情を与え、心地よいゆらぎを感じさせる。
また、陽の光が入る窓際に置いて、刻々と変化する太陽の傾きとともに、ガラスを透過して映る影の移りゆく様子を眺めているのも楽しい。木型でつくられたタイプは、作品を吹き上げるたびに表面が薄く焼け焦げ、形を変えていくため、一つとして同じ形が存在しないのも魅力だろう。
一方、「No.9752」と呼ばれたボウルは、幅262×高さ50ミリと小ぶりなサイズ。玄関先やキャビネットの上に置いて鍵や時計といった小物収納に用いるほか、食卓でフルーツやデザートを盛り付けたり、多肉植物の植え付けなど、多様なアレンジが考えられる使い勝手のいいアイテムだ。
時を経て蘇るアアルトのやさしく自由なライン。湖畔の水面、立ち並ぶ木々といった豊かな自然の風景をも彷彿とさせるアアルトの世界が、再び私たちの暮らしを彩り始める。
イッタラ