上越新幹線の燕三条駅から市街地を抜け、木々が伸びやかに枝を広げる山あいへ。周囲にコンビニもない小高い丘に差し掛かると、やがてスノーピークの本社が現れる。自社製品のショップとミュージアム、広大なキャンプフィールドを併設する敷地は、およそ15万坪。スノーピークのアウトドアギアを愛用するキャンパーを中心に年間2万人もの人々がこの地を訪れる、ファンにとっては聖地のような存在だ。
開業1年を迎えた複合リゾート「Snow Peak FIELD SUITE SPA HEADQUARTERS」
2022年4月、その一角で「Snow Peak FIELD SUITE SPA HEADQUARTERS」が開業した。設計を担当したのは、世界的建築家の隈研吾。温泉とレストラン、離れの客室からなる施設は、目の前に広がるキャンプフィールドとは一線を画するもの。キャンパーやスノーピークファンだけにはとらわれない、すべての旅人を対象にした複合リゾートだ。
とはいえ、“スノーピークらしさ”は随所にちりばめられている。むしろ、その思想を体現した施設と言っていい。アウトドアメーカーであるスノーピークは、キャンプや登山を愛する人のために妥協なき製品開発を行い、堅牢で使いやすいプロダクトを生み出してきた。そして自然と触れ合う時間を通して、現代人が失いつつあるなにかを取り戻すことを願っている。「Snow Peak FIELD SUITE SPA HEADQUARTERS」の狙いについて、総支配人の高山優伸さんはこう話す。「くつろいだ時間を過ごして頂きつつ、ゲストが自然と人との深いつがなりを体験できるリゾートでありたいと思っています」
建物のエントランスで目を奪われるのが、独創的な屋根の意匠だ。軒裏にびっしりと並ぶのは、ナラの木を斧で割った薪の数々。長さも形もまちまちな薪が、ナチュラルで豊かな表情を見せる。
自家源泉を引く大浴場は露天風呂だけでなく、内湯も開放的だ。大きな窓が切り取るのは、四季折々の美しい風景。大地の恵みである温泉のぬくもりを感じながら、雄大な景色に溶け込むような感覚が実に心地よい。
ヴィラ棟の客室でも、季節感や時の移ろいを生々しく実感できる。100㎡を誇る「Villa suite|Earth」は四方をガラス窓で囲まれ、なぐり加工を施された木の床は広大なウッドテラスとつながるかのよう。建物としての境界線を敢えて曖昧にしたつくりになっている。
この施設の最大の特徴は、高山さんの言葉通り、どこにいても自然との距離が近く感じられることだ。そこは都市での生活とは違い、五感が刺激されずにはいられない非日常の世界。自然と向き合いながら時を過ごすうちに、いつしか心と身体が開放されていく──。そんなアウトドアメーカーならではの視点が、「Snow Peak FIELD SUITE SPA」という新たなリゾートのカタチをつくり上げている。
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職人たちの“仕事”を目撃する、宿泊者向けの体験プラン
オープンして1年、より充実した時間を過ごしてもらうべく、この施設では宿泊者向けの体験プランをスタートさせた。そのひとつが「燕三条ものづくり探訪」ツアーだ。スノーピーク創業の地である燕三条は、その数二千とも三千ともいわれる町工場がひしめくものづくりのまち。金属加工を中心に、多種多様な製品が日々生み出されている。
スノーピークも例外ではない。金物問屋として創業後、アウトドアギアの開発をスタート。世界初の鍛造ペグやロングセラーとなっている焚火台など、数々の名品を世に送り出してきた。
このツアーではスノーピークの製品をつくる工場や、地元の伝統工芸である鎚起銅器の製作所をガイドとともに訪問。燕三条で産声を上げて以来、スノーピークに脈々と流れているものづくりの精神に触れるひとときになる。自然を肌で感じるリゾートに、新たに加わったツアーという楽しみ。訪れたくなる理由が、またひとつ増えた。
問い合わせ先/Snow Peak FIELD SUITE SPA HEADQUARTERS TEL 0256-46-5650