野村佐紀子が「彫り物」を愛する「江戸彫勇會」の姿を切り取った写真集『MAJESTIC』。写真展も3月21日から開催

  • 文:中島良平
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「江戸彫勇會」が目指す先は、古来山岳信仰の対象となってきた神奈川丹沢山塊東端に位置する大山。年に一度の「大山詣り」では、肌を露わにして参詣を実施する。 写真集『MAJESTIC』(株式会社Bcc) 102ページA4変形に68点のモノクローム作品を収録。 日本の伝統的なちりめん紙に木版の版画を施した限定版と普及版が販売される。 限定版¥25,000 普及版¥5,000

本誌連載記事「創造の挑戦者たち」にて、各ジャンルの表現者たちの眼差しをモノクロームの画面に収める写真家の野村佐紀子。新作写真集『MAJESTIC』の発売を記念して、写真展が3月21日から26日までRAYYARD MIYASHITA PARK 3F EN STUDIOにて開催される。

写真集で被写体となったのは、明治時代後期に発足した日本最古の彫り物の會「江戸彫勇會(えどちょうゆうかい)」の面々だ。明治35(1902)年、東京・神田で名人彫師と呼ばれた彫宇之に彫り物を入れてもらった仲間たちが、まとまった會をつくろうということから発足された。「文身(彫り物)をして居る者は男の中の男と立てられる勇みの者」という思いで、発足人のひとりである神田紺屋町三丁目の鳶頭が「江戸彫勇會」の名を考案した。

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写真集『MAJESTIC』より
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写真集『MAJESTIC』より

そもそも、彫り物と入れ墨は似て非なるものだ。入れ墨とは額や腕に刻まれる記号であり、古代から江戸時代まで続いた刑罰である。一方の彫り物は、浮世絵や舞踊、古典落語にも登場するような、江戸時代に隆盛を極めた文化だ。浮世絵文化の発展とともに技術が向上し、芸術性も高まり、江戸の花形職業である鳶職や飛脚、駕籠かきなどに好まれ、「粋」を重んじる人々によって受け継がれてきた。

野村佐紀子は、「江戸彫勇會」が年に一度向かう正式参拝「大山詣り」に同行。古くから山岳信仰の対象となってきたこの山で、「江戸彫勇會」の数十人は締め込み姿で背中の彫り物を露わにし、滝で身を清めてから奉納と山頂を目指す。その様子を切り取った68点のモノクローム写真が収録されたのが写真集『MAJESTIC』であり、刊行を記念した写真展では20点のプリントが展示される。モノクロームの画面に張り詰めた緊張感を作品に対峙して体感してほしい。

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写真集『MAJESTIC』より
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写真集『MAJESTIC』より
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写真集『MAJESTIC』より

野村佐紀子 写真展『MAJESTIC』

開催期間:2023年3月21日(月)〜26日(日)
※3月20日(月)18:00よりレセプション
開催場所:RAYYARD MIYASHITA PARK 3F EN STUDIO 東京都渋谷区神宮前6-20-10
開館時間:11時〜21時 無休
入館無料

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