独創性と影響力をもつ“オリジナル”、 『The Original』展で時を超えた根源的なデザインを探る

  • 文:高橋美礼(デザインジャーナリスト)
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会場の一部はインテリアデザイナーの吉田裕美佳によってスタイリングされている。別室には写真家ゴッティンガムが撮り下ろした展示品の写真が大きく展示され、実物をクローズアップするような視点を与えてくれる。写真はフェイ・トゥーグッド『ローリーポーリー』 PHOTO: “UNTITLED(THE FORMS THAT DESIGNERS FIND OUT #173)”, 2022 © GOTTINGHAM IMAGE COURTESY OF 21_21 DESIGN SIGHT AND STUDIO XXINGHAM

「デザインは生活を楽しくし、豊かにし、思考や行動の可能性を広げてくれるものである」という考え方に基づき活動してきた21_21 DESIGN SIGHTで、世界のプロダクトデザインに広く注目する展覧会は、実はレアだ。企画展『The Original』では、同館のディレクターであるプロダクトデザイナー深澤直人の企画原案にデザインジャーナリストの土田貴宏が展覧会ディレクターとして招かれ、世の中に深く影響を与えてきた多様な“もの”を取り上げる。

ここで示すオリジナルとは、「確かな独創性と根源的な魅力、そして純粋さ、大胆さ、力強さをそなえたデザイナーによるプロダクト」のこと。現在の視点から既存のプロダクトを俯瞰し、オリジナルという言葉にふさわしい製品を選び抜いている。

その対象となるのは19世紀後半から現代まで。つまり、産業革命によってものづくりの基本が大きくシフトチェンジした時代から始まり、デザインの歴史を形成してきたものや、ロングセラーや復刻によっていまなお量産される現行品、2000年代以降に生まれたもの、さらに日本ではほとんど流通してこなかったが世界的に評価の高い家具や日用品まで含まれる。

会場には150点以上の展示品が並び、一部分は実際の暮らしのワンシーンのようにスタイリングされ、また別のエリアでは手触りや使用感を試すこともできる。また、社会背景を踏まえた時代の流れとデザインの変遷についてまとめた解説の文章や、それぞれの名作に付せられた解説が、展示作品への新たな視点になるはずだ。

体感しながらオリジナリティの概念について思索できる本展は、正しい答えを導くというよりも、観る人へ問いかけながらともにデザインの本質に迫る試みであるとも言える。

『The Original』

開催期間:3/3~6/25
会場:21_21 DESIGN SIGHT
開館時間:10時~19時 ※入場は閉館の30分前まで
休館日:火曜日(3/21は開館)
料金:一般¥1,400
www.2121designsight.jp

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※この記事はPen 2023年4月号より再編集した記事です。

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【画像】独創性と影響力をもつ“オリジナル”、 時を超えた根源的なデザインを探る

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