エリザベス女王にハリー王子、シャーロット王女も…英ロイヤルファミリーが洗礼式で長年着回す“美しいドレス”の伝統とは

  • 文:宮田華子
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@InStyle – Twitterのキャプチャ画像

イギリスの国教であるイングランド国教会(Church of England)の首長は、代々国王(君主)が務めている。そのため、英ロイヤルファミリーに生まれた子供たちのほとんどが、イングランド国教会で幼児洗礼(クリスニング=幼児・子供の洗礼)を受けるのが習わしだ。

洗礼式で「ロイヤルベビー」が身に着けるのが「ロイヤル・クリスニング・ガウン」と呼ばれる洗礼式用のドレス。実はこのドレスはたった一着しかなく、ロイヤルベビーたちは美しいドレスを長年に渡り「着回し」してきた。

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1948年、チャールズ3世(当時王子)も洗礼式でこのドレスを着用。左からエリザベス女王(当時王女)、ジョージ6世、メアリー王太后(チャールズ3世の曾祖母)。

 「このドレスを作ったのは誰?」「この伝統はいつから?」「一体誰が着用したの?」等々、ロイヤル・フォロワーなら知っておきたいドレスにまつわるトリビアを紹介する。

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洗礼式ドレスの伝統を始めたのはヴィクトリア女王

このドレスの伝統は19世紀に遡る。ヴィクトリア女王(1819~1901年)と夫・アルバート公(1819~1861年)は、第一子であるヴィクトリア・アデレード・メアリー・ルイザ王女(1840年11月21日生まれ)の誕生に際し、洗礼式用のドレスを発注した。 

Town & Countryの報道によると、このドレスはヴィクトリア女王自身のウェディングドレスにインスピレーションを受けてデザインされた。白いシルクにハンドメイドのレースをたっぷり重ねて作られた大変豪華なものだ。このドレスを着用し、ヴィクトリア王女は1841年2月10日(この日はヴィクトリア女王夫妻の結婚1周年記念日)に洗礼を受けた。

 


ヴィクトリア王女の洗礼式を描いた絵画。

以来同じドレスを162年に渡り、5人の君主を含む62人ものロイヤルベビーが着用した。


1894年、ジョージ5世の洗礼式にて。左からアルバート7世(ジョージ5世の父、当時は王太子)、孫であるジョージ5世を抱くヴィクトリア女王、アルバート公。

故エリザベス女王もこのドレスを着用して洗礼を受けた。

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1926年、後のジョージ6世(当時はヨーク公爵)と、エリザベス王妃(ヨーク公爵夫人)に抱かれるエリザベス女王。

ドレスは洗礼式が終わるたびに湧き水で丁寧に手洗いされ、その後暗室に保管するという方法で大切に扱われてきた。

 


ハリー王子の洗礼式。全員が笑顔で写っている。

 

 


1990年、ユージェニー王女を抱くサラ・ファーゲソン(当時ヨーク公爵夫人)とアンドルー王子(右)。

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最後に着用したのはレディ・ルイーズ

Hello Magazineによると、ヴィクトリア女王ゆかりのこのオリジナルのドレスが最後に使われたのは、2004年。エドワード王子とウェセックス伯爵夫人ソフィーの娘であるレディ・ルイーズ・ウィンザー(2003年生まれ)が洗礼式で着用した。

 

オリジナルの洗礼用ドレスを最後に着用したロイヤルベビーとなったレディ・ルイーズ。

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現在19歳、セントアンドリュース大学で学んでいるレディ・ルイーズ。

「最後」の理由は、ドレスがあまりに古くなり、扱いがデリケートになったためだ。エリザベス女王がこのドレスの「引退」を決めた。そして女王は自分の個人衣装アドバイザーのアンジェラ・ケリーに、オリジナルドレスの「レプリカ版」の製作について相談した。

ケリーはイギリスとイタリアの職人と連携し、オリジナルに限りなく近いレプリカ版ドレスを作り上げたという。

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ロイヤル・クリスニング・ガウンⅡとして製作されたレプリカ。@sarahdiaryz – Twitterのキャプチャ画像。

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レプリカ版ドレスを初めて着たのはセヴァーン子爵ジェームズ

以来、ロイヤルベビーたちはこのレプリカ版を「着回し」している。

レプリカ版ドレスを最初に着たのはレディ・ルイーズの弟であるセヴァーン子爵ジェームズ(2007年生まれ)。2008年4月19日に行われた洗礼式で着用された。

 


ウィンザー城内のプライベートチャペルで洗礼を受けたジェームズ。

ウィリアム王子とキャサリン妃の3人の子供たち、ハリー王子&メーガン妃の息子・アーチー、アン王女の孫であるサバンナ&アイラ・フィリップスなども、レプリカ版を着用して洗礼式に臨んだ。

 


2013年、ジョージ王子の洗礼式。

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2015年、シャーロット王女の洗礼式。

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2018年、ルイ王子の洗礼式。

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2019年、アーチーの洗礼式。

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直近でこのドレスを着用したのはベアトリス王女の娘・シエナ(2022年4月28日に洗礼)と言われている(写真非公開のため定かではない)。

レプリカ版製作の際、「予備のドレスが必要となったときのために」と、もう一着作れる分の素材は確保したとのこと。将来、2着目のレプリカ版が作られたり、2人のロイヤルベビーが同じドレスを着て洗礼を受けること等もあるかもしれない。

ヴィクトリア女王からエリザベス女王へ― 2人の女王がドレスの伝統を次世代へつなげた。これからもロイヤルベビーたちによって、この伝統が受け継がれていくのだろう。

次ページ:貴重な映像! 英ロイヤルベビーの洗礼式

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1948年に行われたチャールズ3世の洗礼式。白黒の映像が時代を物語る。

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1984年、ハリー王子の洗礼式の日。カメラがドレスの近くに寄って撮影し映像なので、レースの素材感がよく分かる。

 

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セント・ジェームズ宮殿のチャペルで行われたルイ王子の洗礼式の日の映像。

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英ロイヤルファミリー、洗礼式にまつわる「ある伝統」とは? 

 

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1948年、チャールズ3世(当時王子)も洗礼式でこのドレスを着用。左からエリザベス女王(当時王女)、ジョージ6世、メアリー王太后(チャールズ3世の曾祖母)。

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洗礼式ドレスの伝統を始めたのはヴィクトリア女王

 


ヴィクトリア王女の洗礼式を描いた絵画。

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1894年、ジョージ5世の洗礼式にて。左からアルバート7世(ジョージ5世の父、当時は王太子)、孫であるジョージ5世を抱くヴィクトリア女王、アルバート公。

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1926年、後のジョージ6世(当時はヨーク公爵)と、エリザベス王妃(ヨーク公爵夫人)に抱かれるエリザベス女王。

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ハリー王子の洗礼式。全員が笑顔で写っている。

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1990年、ユージェニー王女を抱くサラ・ファーゲソン(当時ヨーク公爵夫人)とアンドルー王子(右)。

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最後に着用したのはレディ・ルイーズ

 

オリジナルの洗礼用ドレスを最後に着用したロイヤルベビーとなったレディ・ルイーズ。

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現在19歳、セントアンドリュース大学で学んでいるレディ・ルイーズ。

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ロイヤル・クリスニング・ガウンⅡとして製作されたレプリカ。@sarahdiaryz – Twitterのキャプチャ画像。

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レプリカ版ドレスを初めて着たのはセヴァーン子爵ジェームズ

 


ウィンザー城内のプライベートチャペルで洗礼を受けたジェームズ。

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2013年、ジョージ王子の洗礼式。

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2015年、シャーロット王女の洗礼式。

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2018年、ルイ王子の洗礼式。

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2019年、アーチーの洗礼式。

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1948年に行われたチャールズ3世の洗礼式。白黒の映像が時代を物語る。

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1984年、ハリー王子の洗礼式の日。カメラがドレスの近くに寄って撮影し映像なので、レースの素材感がよく分かる。

 

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セント・ジェームズ宮殿のチャペルで行われたルイ王子の洗礼式の日の映像。