3Dプリンターで製造するスーパーヨット「ペガサス」のコンセプト案が発表された。その姿は周囲の環境を反射し、外洋ではほぼ肉眼で見えなくなる。
美術品情報サイトのアートネットは、「ほとんど目に見えない」デザインだと紹介している。大海原に溶け込むペガサスの船体は、コンセプトでもある自然との調和を体現したものだ。
設計に当たったイタリア人デザイナーのジョゼフ・フォラキスは、「(ペガサスが追求する)理想は、水が取り得る形態のひとつである雲となり、もうひとつの形態である海の上に浮かび、そして安全性と快適性、力強さと探検を提供することです」と述べている。
フォラキス氏によると、ロボットによる3Dプリントで製造することで、従来よりも材料と時間を節減できるという。
---fadeinPager---
空と海とを反射し、ほぼ消える船体
ペガサスは3Dプリントによる初のスーパーヨットとして設計され、2030年に完成する予定だ。
全長88メートルの船体の外装は、海の色とうねりを反射するシルバーメタリックで仕上げられる。屋根と側壁はなだらかに結ばれたソーラーウイングとなり、空と雲の模様を写し出す。
3Dプリントは、フィラメントと呼ばれる細いケーブル状の樹脂を溶かし、プリンタ内部で任意の形状を造形する技術だ。
小型のプラスチック製品の製作に用いるのが主流だが、現在では3Dプリントによる家の製造など、より大規模な出力が試みられるようになった。
---fadeinPager---
燃料電池と水耕栽培でエコな航海に挑む
自然との調和を標榜するペガサスは、外観だけでなく、実態として環境負荷を抑えるよう考慮されている。3Dプリントによる製造プロセス自体が材料とエネルギーを節減するほか、船が海上に出てからもエコな航海を実現する。
エネルギー面では、太陽光によって海水を水素に変換し、これを高圧タンクに貯蔵することで燃料電池として活用する。船舶情報サイトのスーパーヨット・タイムズによると、「ゼロエミッションで無限の航続距離を実現する」という。
下層デッキには水で植物を栽培するフードガーデンが設けられ、ある程度の食料を自給自足できるようだ。
これとは別に、船体中央を4層にわたって貫く吹き抜けには「生命の樹」と呼ばれる垂直栽培コーナーが設けられ、船内からの雑排水を再利用してフルーツなどを栽培する。生命の樹は船内の各デッキから目にすることができ、視界のアクセントであるフォーカル・ポイントとしての役割も担う。
---fadeinPager---
スーパーヨットとしての機能も充実
こうした環境への配慮もさることながら、スーパーヨットに求められる数々の娯楽も充実している。
オーナー専用の最上層には、広いプライベートテラス付きのメインベッドルームがしつらえられる。部屋は三方が全面窓となっており、側方に無限の海、前方にプライベートジャグジーを臨む。
フォラキス氏は自身のデザインに、新しい技術や素材を積極的に取り込むことが好きだという。また、こうして完成するデザインを氏は、芸術の一種であるとも捉えている。
氏はアートネットに対し、「私はデザインを芸術の一種として捉えていますし、私自身も芸術の子なのです」と語っている。両親ともに60〜70年代を代表する芸術家だったというフォラキス氏は、その芸術的審美眼に幼い頃から影響を受けて育ったという。
米デザイン誌のアーキテクチュラル・ダイジェストは、スーパーヨットは長年「富裕層の派手なおもちゃ」と認識されてきたと指摘したうえで、ペガサスはそれと一線を画すと述べている。
デザインとして目立たず環境にも配慮したスーパーヨットは、未来のトレンドのひとつになるかもしれない。
---fadeinPager---
【画像】海上では「ほぼ見えない」 世界初の3Dプリントによるスーパーヨット、2030年海原へ
---fadeinPager---
空と海とを反射し、ほぼ消える船体
---fadeinPager---
燃料電池と水耕栽培でエコな航海に挑む
---fadeinPager---
スーパーヨットとしての機能も充実
---fadeinPager---
---fadeinPager---
---fadeinPager---
---fadeinPager---
---fadeinPager---
---fadeinPager---