やりたいことリスト100を作っても、お金が貯まらない理由

  • 文:川畑明美
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 「贅沢をしているつもりはないのですがお金が貯まらないです」そういう相談は多い。収入を伺うと、それなりに収入もあるのにもかかわらず、お金が貯まらないという。収入は高いけれど仕事も忙しく「お金のことを考える時間がない」ことが原因と推測できる。稼ぐために仕事を忙しくすることは、悪いことではないが、仕事とお金の関係をよく考えて欲しい。

仕事は、いつかやめる時がくるものだ。高齢になって体が辛くなったら働くことができなくなる。ところが「お金」は、寿命がある限りずっと使い続けるものだ。仕事が忙しいからと、お金のことを後回しにしていたら仕事をやめた途端に「お金がすぐに底をついてしまった」なんてことに、なりかねない。仕事も大事だが「お金のこと」を考える時間を取ることは重要なのだ。

労働で得たお金で「何に使いたいのか?」を考えて上手にお金を使う必要がある。そして大切なのは年金の範囲内で生活ができるようになること。年金受給額以内で生活でければ、老後資金もそれほど多く貯める必要はない。それを調べることが必要になる。そして、年金だけでは足りないのならば、仕事を辞めた時のためにお金を貯蓄しておくことになる。忙しさにかまけてお金のことを後回しにしては、いけない。

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必要な金額を理解できていない

自分の老後や介護について最も不安に思うことは「お金が足りなくなること」のようだ。朝日生命保険が実施した「自身の老後・介護に関する意識調査」を見てみよう。25歳から64歳の男女2,647名にインターネットで調査した結果を見ると、84.4%の人が「お金が足りなくなること」をもっとも不安に感じている。同じく介護が必要な状態になった場合の不安の内容は「介護費用のための資金が不足すること」が最多で62.2%だった。ちなみに次点は、家族・親族に肉体的・精神的な負担をかけること。


ところが老後資金はどのくらい準備する必要があるのか? という問いの回答を見て、少なからず筆者は驚いてしまったのだ。老後資金の必要額は2000~2999万円と回答した方が25.3%と最も多かった。そして「わからない」と回答した方が25.2%だったのだ。必要額を2000万円とした方もいつぞやの2000万円問題を思い出しただけだろう。もらえる年金額と不足額の差額を把握している方は、ほとんどいないということだ。お金のことを後回しにしている方が1/4はいるということに他ならない。

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なぜお金がたまらないのか?

この事実を筆者のメールマガジンで紹介したところ「それなりの収入があって、仕事も順調で、贅沢していないのに、なぜお金がたまらなかったのでしょうか?」と質問をいただいた。それは「お金のことを考えていない」からなのだが、抽象的だったので解決策がわからないということのようだ。

具体的に解決するには、今後必要になる資金を時系列に書き出す「ライフイベント表」を作成することだ。ライフイベント表というと聞き慣れない言葉かもしれないが、一言で言えば、「人生のスケジュール帳」だ。お金のことを考えるということは、「本当に使いたい事の金額を知る」ただこれだけだ。「え? そんなの知っているよ」と、思ったあなたは、何年後に何にいくら自分が使うか予測しているのだろうか。お子さんの教育費くらいは想定できていても、それ以外のお金の使い道を決めている人はほとんどいない。

お金の使い道を考えていない方でも、自己啓発系のセミナーに行くと数十万円、中には100万円以上支払ってやりたいことリストを書いている方もいる。そのワークをやったことがあるにもかかわらず「ライフイベント表」を書いてもらうと何を書いたらいいのか、わからずに真っ白のままだったりする。せっかく大金を支払ってリストを作っても片手落ちなのだ。

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やりたいことリスト100項目をFP的に活用する?

SNSなどで「やりたいことリスト100項目」を公開している人などもチラホラ見かける。自己啓発系のセミナーに参加すると作成することを勧められたりするが、ルーツとなっているのはロバート・ハリス氏の著書『人生の100のリスト』のようだ。やりたいことリスト100項目とは、簡単にいえば自分のやりたいことを100項目書き出すというシンプルなワーク。たったそれだけなのに実践した多くの人が「夢が叶った」「人生が楽しくなった」という効果を感じているワークだ。自分のやりたいことが明確になり「本当の自分は、こんなことを考えていたんだ」と感動したり、その項目をやることで達成感も得られる。

筆者はこのやりたいことリスト100項目を作ったらお金がかかりそうな事柄は、お金の計画も作ることをお勧めしている。やりたいことリスト100項目の中には旅行や食事をすることが含まれるので、その予算を調べてライフイベント表に落とし込むといい。1年で100項目を制覇したいのならば、その総額を考えてみよう。お金の計算までできると、後は実行するだけなので、ほとんどの夢が叶う。

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老後の必要額を知らないから不安になる

「本当に使いたい事の金額」を知っていればライフイベント表は、真っ黒になるはずだ。大金をかけて自己啓発しても自分の生活に落とし込めていないのだ。「本当に使いたい事の金額」が割り出されていないから将来が不安に感じるし、お金が足りないと感じてしまうのだ。

前述のアンケート調査でも84.4%の人が「お金が足りなくなること」をもっとも不安に感じているにも関わらず、老後資金はどのくらい準備したらいいのかは「わからない」と25.2%回答していたり、2000万円問題を思い出してそれに近い金額を回答しているに過ぎない。もらえる年金額と不足額の差額を把握している方は、ほとんどいないということだ。

ライフイベント表が作成できたら、次に年間にどのくらいお金を使っているのかを把握しよう。年間の収支表を作成するといい。そして、年間の収支表と年金の受給額との差額を引き算して平均余命を掛ければ、必要な老後の資金はわかる。

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年間の収支を簡単につくる3つのステップ

老後資金の不足額を把握するのはそんなに難しいことではない。1年間で銀行から引き出したお金を足し算したらいいだけだ。たった3つのステップで年間の収支は作成できる。

1) 銀行の通帳をすべて記帳して1年間に振り込まれた収入の合計を出す。

2) 自動引き落としになっている水道光熱費や家賃、生活費に使った現金を引き出した金額の一年間の   合計を書き出す。

3) 収入の合計から支出の合計を引く。

たったこれだけで、1年間の収支がわかる。費目を考えたり難しいことをする必要はないのだ。余裕があれば、毎月引き落としになっている固定費と現金で引き出している変動費を分けるだけでもいい。年間の収支の計算ができないという方もいるが、すべての銀行口座の記帳をしてもらえれば30分もかからずに、収支は把握できるのだ。

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目的が明確になると管理も上手に

年間の収支額がわかれば、ライフイベント表に書き込んだ金額分を何年で貯めたらいいのかが理解できる。3年後に海外旅行を予定しているのならば、毎月旅行のために貯蓄するのは、楽しいことだ。旅行のためならば、節約するモチベーションにもなる。お金を貯める目的を明確にすることで、お金の管理が上手になり、お金が貯まるようになる。


そして、年間の収支表から年金の不足額も予測できる。年金生活になっても大きな支出は変わらない。子どもの費用以外は、年金生活になっても必要になる。だから年間の支出の金額が分かれば、年金受給額から引き算するだけだ。不足部分の金額が明確になれば、対策も見えてくる。人生で必要なお金が明確になれば「これは自分にとって贅沢だったのでは?」という支出も見えてくる。

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【執筆者】
川畑明美●ファイナンシャルプランナー 「私立中学に行きたいと」子どもに言われてから、お金に向き合い赤字家計からたった6年で2000万円を貯蓄した経験をもとに家計管理と資産運用を教えている。HP:https://www.akemikawabata.com/