世界の映画ファンを虜にした『マッドマックス 怒りのデスロード』(2015年)の巨匠、ジョージ・ミラー監督の最新作『アラビアンナイト 三千年の願い』が明日2月23日、全国で公開される。「アラジンと魔法のランプ」で知られるイスラムの説話集「アラビアンナイト」をモチーフにした本作の見どころをお伝えしたい。
主人公のアリシア(ティルダ・スウィントン)は、物語論(ナラトロジー)の専門家。講演先のイスタンブールでガラスの小瓶を買い、ホテルでそのフタを開けた途端、巨大な魔人「ジン」(イドリス・エルバ)が現れる。魔人はアリシアに、「解放してくれたお礼に3つの願いを叶えよう」と持ちかける。そうすれば呪いが解け、魔人は自由の身になるのだという。魔人は、三千年にもわたって瓶の中に封印されてきた物語をアリシアに語り始める。それは三千年の時空を超えた、驚くべき歴史の物語であった。
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原作は、英国の小説家・詩人であるA・S・バイアットの短編小説『ザ・ジン・イン・ザ・ナイチンゲールズ・アイ』(1994年、未邦訳)。ミラー監督は1990年代末に原作を読み、映画化を思いついたという。
「人生の謎や矛盾の多くを模索し、しかもそれを簡潔に成し遂げた物語なんだ。一回読んだだけで心に残った。そういう物語はあるんだよ。そしてある日、映画化するべきだと思ったんだ」
本作は類まれなビジュアル・イメージによって、魔人の物語が語られている。物語には古代からの神話、伝説、寓話、おとぎ話が散りばめられ、壮大なファンタジー映画となっている。前作『マッドマックス 怒りのデスロード』に引き続き、作りこまれた造形美が見ものだ。
本作は見た人に「物語とは何か?」という問いを突き付ける。ミラー監督は次のように語っている。
「物語が嫌いな人間はいない。それはなぜだと思う? 映画館に行くのは、みんなと一緒に夢を見るようなものなんだ。物語に招き入れられ、その中に入り込むことができる。赤の他人とスクリーン上の夢を共有するんだ。私たちは映像と音声を調和させようと一生懸命頑張った。ずっとイスから身を乗り出した状態で観続けるような物語にしたかったんだ。そしてそれが良い物語ならば、映画館を出た後も頭から離れないよ」
たしかに、本作は「夢のような」映画だ。ラストシーンの解釈は人によって判断が分かれるだろう。あれは夢か現実か。多様な解釈に開かれた映画である。たしかに、ミラー監督が語るように、本作は「映画館を出た後も頭から離れない」一作だ。ぜひ、映画館での観賞をお薦めしたい。
『アラビアンナイト 三千年の願い』
監督/ジョージ・ミラー
出演/イドリス・エルバ、ティルダ・スウィントンほか
2022年製作 オーストラリア・アメリカ合作映画
108分 2月23日(木・祝)よりTOHOシネマズ 日比谷ほかにて全国公開。
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