エゴン・シーレ展から『部屋のみる夢』展まで Penが選んだ今月の展覧会2選

  • 文:住吉智恵(アートプロデューサー)
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アイデンティティを追求した、夭折の天才画家の生涯と創作 

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『頭を下げてひざまずく女』1915年 レオポルド美術館 Leopold Museum, Vienna

19世紀末、芸術の爛熟期を迎えたウィーン。エゴン・シーレは保守的な美術教育に満足せず、仲間と芸術集団を立ち上げ、当時の常識を挑発する創作により逮捕されるなど、波乱に満ちた28年の生涯を送る。ナイーヴな感受性と深い自己洞察により、ときに暴力的なほど生々しく人間の内面や性を描き出した。本展では絵画の伝統を覆した裸婦像やクリムトに影響を受けた装飾的な静物画などを通して、夭折の天才の葛藤に迫る。クリムト、ココシュカなど同時代作家の作品も紹介。

『レオポルド美術館 エゴン・シーレ展 ウィーンが生んだ若き天才』

開催期間:開催中~4/9
会場:東京都美術館
TEL:050-5541-8600(ハローダイヤル) 
開館時間:9時30分~17時30分 ※金曜は20時まで ※入室は閉室の30分前まで
休館日:月曜日
料金:一般¥2,000 ※日時指定予約制
www.egonschiele2023.jp

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安心感と閉塞感が共存する、「室内」をめぐる表現とは

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ヴォルフガング・ティルマンス『静物、ボーン・エステート』2002年 インクジェットプリント、 クリップ、138.0×206.0cm ポーラ美術館 © Wolfgang Tillmans, Courtesy Wako Works of Art

ここ数年のパンデミックで誰もが多くの時間を過ごし、安心感と閉塞感を味わった「部屋」をめぐる多彩な表現に着目する企画展。スケールや時間の感覚を微細にゆるがす髙田安規子・政子。室内から庭や自然に視界を開いていった佐藤翠と守山友一朗。また、無数の突起物に覆われ変容したベッドに自身のオブセッションを込めた草間彌生、日常生活を送りながら制作に明け暮れた室内を親密な眼差しで捉えたヴォルフガング・ティルマンスの新収蔵作品などに期待したい。

『部屋のみる夢 ― ボナールからティルマンス、現代の作家まで』

開館期間:1/28~7/2
会場:ポーラ美術館
TEL:0460-84-2111 
開館時間:9時~17時 ※入館は閉館の30分前まで
休館日:無休
料金:一般¥ 1,800
www.polamuseum.or.jp/sp/interiorvisions

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※この記事はPen 2023年3月号より再編集した記事です。