駅前の見苦しい駐輪場が一変! アムステルダムの水面下に生まれた“近未来空間”の秘密

  • 文:青葉やまと
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Gemeente Amsterdam-Twitter

水路が張り巡らされた水の都・アムステルダム。観光客を引き寄せるこの都市はまた、自転車文化の先進都市としても知られている。

起伏が少ない国土がもともと自転車に適していたことに加え、自転車専用レーンの整備などを積極的に進めたことで、世界的にもサイクリストに優しい街となった。歩道と分離していることから、歩行者の安心感も高いと評判だ。

国際カルチャー誌のタイムアウトは、ヘルシンキやコペンハーゲンなどと並び、自転車に優しい世界の11都市のひとつに挙げている。

そんな自転車都市・アムステルダムの中心部に、水面下に設けられた近未来的な地下駐輪場が誕生した。

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水の都に生まれた近未来空間

新設されたこの駐輪場は、アムステルダム中央駅の正面に位置する。同駅は大規模ターミナルとしてはめずらしい構造となっており、運河に挟まれた人工島の上に存在する。駐輪場はこの運河の下に設けられた。

内部に足を踏み入れると、スペース全体が白を基調としたシンプルかつ開放感のある意匠でまとまっており、薄暗い地下道のイメージとは無縁だ。

水面下という特性上、多数の柱で支持せざるを得ないが、曲面を採用したユニークで近未来的なデザインとすることで圧迫感をできる限り排除した。

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運河をせき止めた一大プロジェクト

駐輪場の新設にあたり、駅正面の運河の一部をせき止める大工事が敢行された。アムステルダム市は全工期を通じたタイムラプスを公開しており、そこでは4年にわたる工事の様子が1分に凝縮されている。

映像によると、当該の水域を護岸し排水するまでに、実に工期のおよそ半分を費やしたようだ。続いて水底を浚渫しコンクリートを打ち、駐輪用の機材が導入された。

こうして地下のインフラが完成すると屋根をかけ、その上に運河の水を呼び戻している。完成したいまではフェリーが航行しており、水面下に駐輪スペースが眠るとはおよそ想像もつかないほどだ。

アムステルダム市がツイートで完成を報告すると、市民からは「今日の午後に現場で見ました。美しい。称賛します」「すばらしい」「信じられない」などの声が寄せられた。

一方、工事に伴って伐採された街路樹を惜しむ声もあったが、市は新たにより多くの街路樹を植えたと回答している。

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手頃な料金で自転車利用を促進

駐輪場のユーザーは、地上部から段差のないエスカレーターに乗って地下へと降り、無数にあるラックから好きなスペースを選んで駐輪する。

料金は最初の24時間まで無料で、以降は1日ごとに1.35ユーロ(約190円)と手頃だ。支払いはデビッドカードまたは交通ICカードをゲートにタッチする。年間契約の場合は自転車に付けた専用タグ「Fietstag」が認識され、自転車を押して近づけば無操作でゲートが開くしくみだ。

実際に使用してみたという米テックメディアのヴァージは、清掃が行き届いており、係員の案内も親切だったと述べている。

柱には空車状況を示すランプが設置されている。巨大なスペースではあるが、空いているラックは比較的スムーズに見つけられるようだ。

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サイクリストの街が抱えていた課題

サイクリストたちを歓迎するアムステルダムだが、市民にはひとつの悩みがあった。長距離移動の際は電車へと乗り換えることになり、必然的に駅前には山のような数の駐輪自転車が集まってしまう。

とくに中心部のアムステルダム中央駅は、国際列車からLRT(次世代型路面電車)、バスまでが接続する交通の要衝だ。駅前には数千台規模の巨大駐輪場が設けられ、2段構えの駐輪用ラックに大小の自転車がひしめいていた。

アムステルダムへの訪問者たちが街への第一歩を踏み出すこの駅前のスペースは、地元の人々から「De Entree(The Entrance)」と呼ばれ親しまれている。ところが、歩行スペースの少なくない面積を野ざらしの駐輪ラックが占有し、ラック外にも駐輪自転車があふれる見苦しい状態だった。

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歩道のスペースを歩行者たちに返す

プロジェクトは、歩道のスペースを本来の所有者である歩行者たちに返す役割を果たした。これまで駐輪スペースに歩道を占有され、ときに自転車レーンにはみ出しての迂回を迫られていた歩行者や車椅子ユーザーの人々は、今後より安全に通行できる。

サイクリストたちもまた、大切な自転車を風雨にさらすことなく、より安全に預けることができるようになりそうだ。

訪れる観光客たちも恩恵を受け、観光都市としての価値はさらに向上しそうだ。自転車の山に気を取られることなく、水の都・アムステルダムの美しい風景を楽しむことができるようになると期待されている。

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工費は巨額だが、総合的に割安との分析も

 

ブルームバーグは、4年の歳月と6000万ユーロ(約85億円)が投じられたと報じている。

専門家はブルームバーグに対し、自動車道の整備や自動車依存による社会コストと比べれば、駐輪場の整備コストはごくわずかだと指摘している。

日本でも駅を出ると、まず駐輪場が目に飛び込んでくるケースは意外に多い。実用面ではそれで必要十分とも言えるが、地下化によって美しい水辺の風景を取り戻したこの事例はひとつの参考になりそうだ。

 

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【画像・動画】駅前の見苦しい駐輪場が一変! アムステルダムの水面下に生まれた“近未来空間”の秘密

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