ダイヤル外周には立春、啓蟄、処暑など日本でも時候の挨拶に使われる二十四節気(にじゅうしせっき)が目盛りとして取り巻き、12時位置のサブダイヤルには十二支の動物名なども記されている。いずれも簡体字ではなく、伝統的な繁体字で書かれているので日本人にもわかりやすい。
パルミジャーニ・フルリエは、ムーンフェイズも搭載した世界初の中国暦コンプリートカレンダー「トンダ PF シィアリーカレンダー」を発表した。モデル名の「シィアリー」とは中国の伝統的な暦法である夏暦(かれき)を意味する。古代から継承されてきた複数の暦の1つであり、辛亥革命後の1912年に太陽暦(グレゴリオ暦)が採用されてからは、それまでの太陰太陽暦を総称する言葉となった。
---fadeinPager---
12年間ひと区切りでリセットされるカレンダープログラム
太陰暦では1カ月の長さを月の満ち欠けが一巡する29. 5日として、0.5日がないことから大の月(30日)と小の月(29日)を設定している。これでは1年間は354日となり、太陽暦より11日ほど短くなってしまう。この差は3年で約1カ月に達するため、閏月を加えて補正するのが太陰太陽暦だ。それでも太陽の位置によって移り変わる季節がズレてしまうので、1太陽年を24等分した二十四節気を設定。農業で役立つように季節の細かな変化を象徴した名称が付与されている。
それだけでなく、中国暦ではグレゴリオ暦とは逆に、月に数字を充て、年のほうに名前を付ける。この年号は60年周期で繰り返されるが、日、曜日、月などは天体観測に基づくという。前述の閏月も含めて、このように計算が入り組んでいるため、中国暦の永久カレンダーは不可能とされてきた。「トンダ PF シィアリーカレンダー」では時間単位を水、木、金、火、土の「五行説」に陰と陽を加えた「十干(じっかん)」の10進法と「十二支」の12進法の組み合わせで構成。だが、中国暦は複雑な要素が多く、周期的ではないため、12年間をひと区切りとして、この期間を過ぎるとリセットされ、新たな12年間が始まる仕組みになっている。この期間中はカレンダーが自動送りされるので、調整は一切不要。もし時計が止まっても、曜日と月の数字を合わせるだけで元に戻せる特別な補正装置も導入されている。
---fadeinPager---
インペリアルレッドが個性的な存在感
パルジャーニ・フルリエでは、グレゴリオ暦のアニュアルカレンダーに始まり、2019年にはイスラムの太陰暦であるヒジュラ暦を永久カレンダーとして開発。20年のジュネーブ時計グランプリでイノベーション部門賞が授与された。今回の中国暦モデルは、これらに次ぐ第3の複雑カレンダー機構になる。
内部の高度な機構もさることながら、複雑な中国暦の要素を見やすくダイヤルに集約していることに感心させられる。中国をイメージさせるインペリアルレッドも印象的だ。ホワイトの繁体字が映えるだけでなく、18Kホワイトゴールドのアプライドインデックスとスケルトンの時分針が美しく輝く。ダイヤルベースには光が乱反射しないようにバーリーコーン(麦の穂)模様のギョーシェが施されている。
ケース、ブレスレットともにSSだが、ローレット加工による繊細な刻みが施されたベゼルはプラチナ950製。ブレスレットからケースに至る一体感は優れた装着性をもたらすだけでなく、このベゼルによってラグジュアリーでエレガントな印象を与える。
旧正月にあたる春節の民族大移動=帰省などが大きな話題になったように、中国ではいまも旧暦の一部を採用している。日本や東アジア諸国にとっても旧暦は文化や習俗の原点であり、生活の中で脈々と生き続けているといっていい。現代の中国はアメリカに次ぐ経済力を備えていることから、隣国である日本と緊密な関係を深めており、人的な交流もますます活発化している。インペリアルレッドの中国暦コンプリートカレンダーは、高度な複雑時計としての希少価値や面白さはもちろんとして、中国の人たちに与える驚きや感動、そして有用性はかなり高いだろう。私たちにとっても、中国暦の正しい理解には根気と時間が必要になるかもしれないが、少なくとも二十四節気だけは、冒頭で紹介したように時候の挨拶などにすぐにでも活用できるはずだ。
問い合わせ先/パルミジャーニ・フルリエ
mail:pfd.japan@parmigiani.com
---fadeinPager---