柚木沙弥郎の染色と民藝のコラボレーションが実現!日本民藝館にて展覧会が開催中

  • 文:はろるど
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本館大展示室の展示風景。柚木沙弥郎の型染布「ツバメのうた」(2017年)の下にはイギリスのサイドボードテーブルが置かれ、インドの車形玩具やマリ共和国の研磨土器などが展示されている。photo: Harold

2022年に生誕100年を迎えた染色家の柚木沙弥郎。20代半ばより染色家として活動をはじめると、染色を中心にガラス絵、版画、肉筆、絵本などを制作し続け、現在も新たな表現へと取り組んでいる。その柚木が自らの「原点」とするのが、東京・駒場の日本民藝館だ。1947年、25歳だった柚木は染色の道に進むために日本民藝館の創設者である柳宗悦を訪ねると、芹沢銈介を紹介され、職人のもとで勉強するように勧められる。そして静岡県由比町(現在の清水市)にあり、江戸時代の由比正雪にルーツを持つとされる正雪紺屋に住み込んで、染色の基礎を学んでいった。

日本民藝館で開催中の『生誕100年 柚木沙弥郎展』では、柳宗悦が収めた型染や注染をはじめ、作家寄贈の代表作約60点、及び型染ポスターを含めた国内屈指の130点を超える柚木コレクションより、初作品から近作に至る染色を公開している。本館正面の大階段には注染幾何文布を中心に型染布「2010」と「2016」が左右に掲げられ、藍と紫、赤や黒などの鮮やかで澄んだ色彩が空間を美しく彩っている。その光景はまるで元々この場所にあったかのように馴染んでいて、来場者を温かくも華やかに迎え入れてくれる。

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型染二曲屏風「犬猫」(部分)  柚木沙弥郎 1990年頃 日本民藝館蔵

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型染山羊文暖簾(部分)  柚木沙弥郎 1970年代 麻 日本民藝館蔵

2階の大展示室にて行われている「古作との併陳」の展示が充実している。ここでは柚木の染色とともに、同館の所蔵する工芸品やプリミティブな造形品などを公開。注染水玉文布の隣にマリのドゴン族の儀礼用の仮面が並んでいたり、注染三色ジグザグ文布とともにイギリスのスリップウェアが展示されるなど、時代、産地、手法の異なる造形が響き合う様子を見ることができる。同展示室は2021年4月のリニューアルに際し、柳が設計した旧大広間(現在の豊田市民芸館第1展示室)を踏襲したスペースに生まれ変わったが、明るい色合いの大谷石の床と葛布が貼られた壁と柚木の染色が見事に調和している。

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型染布「隅」(部分)  柚木沙弥郎 2017年 木綿 日本民藝館蔵

現在、同館では「特別展『生誕100年 柚木沙弥郎展』記念 特別映像配信」と題し、2018年に開催された『柚木沙弥郎の染色 もようと色彩』展にて柚木が行った記念講演会「自作と日本民藝館」の様子をオンラインにて配信している(80分、視聴料500円)。ダイジェスト版(8分)も館内にて上映されているが、そこでは日本民藝館や柳宗悦、また芹沢銈介に関するエピソードから「ワクワクしなくちゃ作れない。」や「面白くなかったらできない。」とする制作に対するスタンスなどを聞くことができる。いまもカップや食器のテーブルウエアなどの仕事を手がけるという柚木。その過去から現在までの染色と古作、さらに建物とのコラボレーションを日本民藝館にて味わいたい。

『生誕100年 柚木沙弥郎展』
開催期間:2023年1月13日(金)〜4月2日(日)
開催場所:日本民藝館
東京都目黒区駒場4-3-33
TEL:03-3467-4527 
開館時間:10時~17時 ※最終入館は16時半まで
休館日:月曜日(祝日の場合は開館し、翌日休館)
観覧料:一般¥1,200(税込)
https://mingeikan.or.jp