スマートフォンの画面越しに描かれるのは、受験生の男の子の姿。書店で赤本を買い、オンライン授業を受けたり、友達とビデオ通話を繋ぎっぱなしで勉強し合ったり。そして合格発表の日、スマホに受験番号を入力した男の子は——。Mrs. GREEN APPLEの『僕のこと』をBGMに描かれる、大塚製薬カロリーメイトのCM「狭い広い世界で」篇だ。
カロリーメイトは1983年に発売。80〜90年代は、王貞治や椎名桜子らを起用して「バランス栄養食」を訴求した。2000年代に入ると、TUGBOATの企画による「がんばれワカゾー」(伊藤淳史)などコミカルなシリーズが人気に。10年代から存在感を増したのが、受験生応援シリーズだ。満島ひかりが中島みゆきの『ファイト!』などを独唱した「とどけ、熱量。」のシリーズは、ACC賞、ギャラクシー賞などを席巻した。
以降、「見せてやれ、底力。」をコピーに、村上虹郎×藤巻亮太『3月9日』、蒔田彩珠×THE BLUE HEARTS『人にやさしく』などをシリーズ展開。20年に放送した加藤清史郎×森山直太朗『さくら』による「見えないもの」篇、21年から放送した奥平大兼×YOASOBI『あの夢をなぞって』による「Midnight Train」篇では、2年連続ACCグランプリに輝いた。今回は、この2作に続く、コロナ禍の受験生を描いた作品となる。
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日本のCM界を牽引する名チームが制作
企画したのは、CM界のヒットメイカー・福部明浩氏(catch)。星野源と吉岡里帆の「日清のどん兵衛」、マクドナルド「ピクルスのリレー」、永野芽郁「いち髪」などを手掛けるクリエイティブディレクターだ。カロリーメイトは、「とどけ、熱量。」から10年以上にわたり担当している。
福部氏とともに企画から手掛けるアートディレクターは、榎本卓朗氏(ENOAD)。「どん兵衛」や「ディアボーテHIMAWARI」なども福部氏と担当してきた鬼才だ。演出は、「カロリーメイト」「いち髪」などで福部氏と組んできた田中嗣久監督。撮影は、写真家の市橋織江氏が担当している。
受験生役に起用されたのは、山時聡真。映画『ラーゲリより愛を込めて』やドラマ『大奥』(第1話)などに出演した、トップコート所属の現役高校生だ。
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コロナ禍の受験生に寄り添って企画
高校生や大学生へのグループインタビューやアンケート取材をもとに制作されている本作。近年は「スタディサプリ」や「Studyplus」といったアプリを利用する受験生が多いことから、それらを想起させる画面が登場する。何より目を引くのは、縦型映像だ。テレビで見ると左右に黒味が入るため違和感から目立ち、スマホで視聴するとフィットする。スマホでCMに触れる機会が多い若年層は、縦型の方が見やすいかもしれない。Mrs. GREEN APPLEがオーケストラアレンジで新録した楽曲と、激しく揺れるラストの映像も心を揺さぶる。
SNSの声を見ると、「受験を思い出して泣いた」「息子と重ねてしまってボロ泣きした」といった声が多く上がっていた。特にロングバージョンには「ヘタに映画観るよりも余程充実した120秒」などの熱いコメントが散見される。また楽曲には「鳥肌が立った」「ワンフレーズだけで胸が震える」といった声が多数。ちなみに本作には、Mrs. GREEN APPLEのメンバーが美容師役などでカメオ出演している。
「JR SKISKI」や「メルティーキッス」などと並ぶ、「冬の風物詩」となっているこのシリーズ。次は、どんな受験生の姿で、心を震わせてくれるのか。
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カロリーメイトCM「狭い広い世界で」篇(120秒)
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